抄録
ビルベリーは, 主にヨーロッパにおいて生息する多年草であり, その果実は暗青色や紫黒色を示す。ビルベリーエキスは眼精疲労や視野機能の改善のためサプリメントとして一般的に使用されてきた。しかしながら, その薬理作用並びに作用メカニズムについては十分に検討されていない。一方, 日本の失明原因の代表的な疾患として緑内障や糖尿病網膜症がある。これらの疾患は網膜の障害および網膜血管の異常な新生が深く関与している。そこでわれわれは, これらのin vitroおよびin vitroモデルとして1) 網膜神経節細胞の障害および2) 網膜血管新生に対するビルベリーエキスの作用を検討した。
1) ビルベリーエキスとその主要成分アントシアニジン (デルフィニジン, シアニジン, マルビジン) は, ラット由来網膜神経節細胞株 (RGC-5) においてペルオキシナイトライト (活性酸素種) 誘発によるラジカル発生および細胞死に対して抑制作用を示した。さらに, ビルベリーエキスの硝子体内投与は, N-methyl-D-aspartic acid (NMDA) 誘発マウス網膜障害を抑制した。
2) ビルベリーエキスは血管内皮増殖因子 (vascular endotheHal growth factor : VEGF) によって誘発されるヒト隣帯静脈内皮細胞の管腔形成, 増殖および遊走を抑制した。また, ビルベリーエキスのマウス硝子体内投与は, 高酸素誘発網膜血管新生を抑制した。
以上, ビルベリーエキスは網膜障害および網膜血管新生と関連のある疾患の予防や治療に有用である可能性が示唆された。