Otology Japan
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原著論文
内リンパ圧上昇時の基底板振動変化:ヒト蝸牛有限要素モデルを用いた数値解析
李 信英小池 卓二
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2022 年 32 巻 2 号 p. 201-208

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抄録

内リンパ水腫による難聴の発症機序の仮説の一つである内リンパ圧の上昇説をコンピュータシミュレーションに基づいて検証することを試みた.内リンパ圧の上昇は正常蝸牛モデルの基底板表面に準静的に圧力を加えることにより表現した.正常蝸牛モデルでは純音入力時に基底板上に生じる進行波の包絡線は紡錘形を示し,基底板の特定部位で明確なピークを示す.一方,基底板に静圧を加えると基底板の頂部側にたわみが生じ,進行波の包絡線形状のピークは不明瞭なものとなった.基底板振幅は減少し,最大振幅を示す基底板位置も正常耳とは異なった.これらの変化は基底板に生じたたわみにより構造剛性が増加したことによるものであり,聴力閾値の増加および周波数弁別能の低下につながるものと考えられる.加えた静圧の大きさによって,特に頂部側の基底板が異なった挙動を示したことから,内リンパ圧の変動と低音域の変動性難聴が関係している可能性が示唆された.

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© 2022 日本耳科学会
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