厚生労働省『労働組合基礎調査』の組織率は低下の一途をたどり,いまや16%である。ところが,個人を対象とした2つの社会調査,大阪商業大学『日本版総合社会調査』と連合総研『勤労者短観調査』では,2000年代半ばから,就労者に占める組合加入の割合は上昇し,直近では『労働組合基礎調査』の2倍近い値になっている。労働組合に対する悉皆調査1)であるはずの『労働組合基礎調査』では組織率が低下しているにもかかわらず,個人調査では組合加入率(組織率)が上昇し,両者の水準とトレンドが乖離しているのはなぜか。その要因を,3つのアクター,①行政(厚生労働省,労政主管事務所),②労働組合,③労働者,の観点から質的に探索した。その結果,『労働組合基礎調査』は調査単位が地域ごとに過度に細分化し,また,労働組合が回答義務を負っていないため,組合員数が過少になっており,『労働組合基礎調査』の組合員数と組織率は信頼性に欠けることが明らかになった。加えて,労働組合の境界が曖昧化し,フリーライダーが増加したことにより,労働者の組合加入に対する誤認識が生じ,社会調査では組合加入者が過大になっていることも浮き彫りになった。労働組合の影響範囲を新たな枠組みを用いてとらえ直し,組合統計の在り方をアップデートする必要がある。