霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: B-15
会議情報

口頭発表
尺骨近位部の内部形態とヒト上科の肘関節の進化
高野 智
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
ヒト上科霊長類の進化に関する研究において、肘関節は、化石標本が比較的豊富なことと、その形態とによって、注目を集めてきた。現生ヒト上科は、ぶら下がり適応と呼ばれる肩部、腕部の一連の形態と、「滑車状」の上腕骨滑車-尺骨滑車切痕、短縮した肘頭など、特殊化した肘関節をもっている。ところが、前期-中期中新世の化石ヒト上科では、こうした特徴は発達していない。シバピテクス(Sivapithecus)では、上腕骨の遠位部に現生ヒト上科に近い形態が見られるが、ぶら下がり適応と見なされる特徴は見られない。一方、クモザルなどは、一連のぶら下がり適応と見なされる形態を備えているが、肘関節部は一般的な形態を維持しており、現生ヒト上科に見られるような特殊化を遂げていない。ヒト上科の肘関節の特殊化は、ぶら下がりとの関連で説明されることが多い。しかし、上のような矛盾を考えると、ヒト上科の肘関節の特殊化については、ぶら下がり以外の移動様式の影響を考慮する必要があると思われる。だが、化石種において、外部形態のみから、移動様式を推定するには限界がある。骨の形態を決める要因には、系統や、移動様式、加齢変化など、様々なものが考えられるが、一般に、骨の内部において、緻密骨、海綿骨といった材料の配置は、その骨にかかる負荷を反映したものになっていると見なされる。そのため、骨内部での材料の配置と移動様式との関連パターンがわかれば、外部形態と合わせて、化石種の移動様式を知るための有力な情報となる。本発表では、尺骨の近位部の内部形態の予備的な比較について報告し、ヒト上科の肘関節の特殊化の要因について考察する。
著者関連情報
© 2004 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top