霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: B-24
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口頭発表
シルクロードの猿たちを書林に求める -その出自と説話について
都守 淳夫
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抄録
演者はかって、正倉院蔵の3頭のニホンザルが描かれた「羊木/象木臈纈屏風」(751~756年作製の樹下聖獣文)2点の図柄と、「古渡白地更紗大敷物」(売立目録?2448所収)の図柄は共通のペルシャ・サザン朝文様に由来するものと想定した。これを確かめるため、その祖形出自を西アジアから″シルクロードに残された石窟壁画の動物絵柄に求めていた。今回その方法として、中国研究者の労作『中国石窟』シリーズ全17巻(収録石窟は敦煌莫高窟/鞏県石窟寺/キジル石窟/クムトラ石窟/炳霊寺石窟/麦積山石窟/竜門石窟/雲岡石窟/安西楡林窟であり、日本語版は平凡社より1980~1990年に刊行され、収録カラー図版は約2600枚である)に収められた壁画図版に、サル図像の検索を目的として全写真を精査した(掲載図版の選択は悉意的なものであることは承知のうえであるが)。その結果、(1) 新彊ウィグル自治区拝城県ギジル石窟群の14窟に34件51頭、(2) 同自治区庫車県のクムトラ石窟群の3窟に4件9頭、(3) 甘粛省敦煌県の莫高窟群の4窟に4件9頭、(4) 甘粛省永靖県炳霊寺石窟群の1窟に1件3頭の、以上4地域にわたり合計22窟43件73頭の猿図像を抽出した(抄録執筆時点で)。73頭のサルの絵柄は多様であるが、その主題は本生話が中心柱窟や方形窟の主室、後室の側壁菱形区画に多く点描されている。掘鑿年代が4∼5世紀から11世紀にわたる窟に描かれたものが多数であった。これら検索されたサル絵柄を要約すると、(1) まず樹下聖獣文を示唆するペルシャ・サザン風の絵柄はみられなかった。正倉院文様はこのルートで直伝された文物文様であろうか。(2) サル絵柄(とくに本生話)の出現数は新彊地区のキジル・クムトラ石窟に頻出するが、東に行くにつれ減少する。これは石窟装飾形式の漢化によるものと思われる。(3) 絵柄となるサルは仏典本生話に記述される役柄が主なものである。(4) 本発表では、代表的な本生話に登上するサルの絵柄を紹介する。
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© 2004 日本霊長類学会
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