霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: B16
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口頭発表
四国のニホンザルの系統地理
*川本 芳*葦田 恵美子*金城 芳典*谷地森 秀二
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抄録
これまで四国のニホンザルに関する情報は不足している。遺伝子変異からその成立過程と進化を研究することを目的に、調査を開始した。従来の研究から、個体群の成立や消長を探るのに母性遺伝するミトコンドリアDNA(mtDNA)変異が有用なことがわかっている。また、近年の技術改良により、糞の遺伝子分析を四国調査で応用する時宜を迎えた。群れの分裂を介したメスの移動により、核DNAとは対照的にmtDNAの変異分布では地域差が生じやすい。分子系統関係と変異の地理的構造から、四国のサルのもつ系統地理的特徴を明らかにすることを目標とした。4県11市町村19地点由来の26試料(うち25は糞試料)からDNAを調製し、mtDNA非コード領域の配列を解読した。また、移住オスを判断するため、アメロゲニン遺伝子を標識に性判別を行った。配列比較からハプロタイプを分類し、樹形図とネットワークによる解析から分子系統関係を推定した。地点情報と性判別の結果から、変異分布の地理的構造について検討した。また、島外のサルとの分子系統解析から、四国個体群の成立過程を推定した。この結果、相同性をもつ非コード領域1,020塩基対のアラインメントにより、13ハプロタイプが区別できた。これらのタイプを島外のものと比較すると、単系的な集合と判断できた。例外は淡路島のサルで、香川県讃岐山脈のタイプと似ていた。なお、地理的に近い小豆島のサルは、四国と大きく異なるタイプを示した。一方、四国内部では東西に分布が区別できるふたつのハプログループが認められた。現在の生息地は連続的に分布するにもかかわらず、mtDNAの地域分化では不連続性が明瞭に認められた。これまでの調査から、高知県北部の大川村付近の吉野川上流域に東西タイプが接する境界域があることが判明した。島内に認めた生息地分布と遺伝子分布のコントラストの原因究明が、今後の課題と考えている。
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© 2014 日本霊長類学会
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