運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
原著
移動および余暇の歩行行動に関連する環境要因―藤沢市在住の60~69歳を対象とした横断研究―
齋藤 義信 小熊 祐子井上 茂田中 あゆみ頼 建豪小川 芳弘高橋 健鈴木 清美小堀 悦孝
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2011 年 13 巻 2 号 p. 125-136

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抄録

目的:近年の研究によって自宅近隣の環境要因が身体活動の決定要因となっている可能性が示唆されている。しかし,ほとんどの研究は若年あるいは中高年の成人を対象に実施されたものである。また,日本人を対象にした研究は限られている。そこで,本研究は6069歳の藤沢市民を対象に,移動における歩行および余暇活動のウォーキングと環境要因との関連を検討することを目的とした。

方法:対象は2009年の特定健康診査と2010年の質問紙調査の結果が得られた6069歳の藤沢市国保被保険者1,917名である。本研究では基本属性(年齢,BMI,学歴,職業の有無,経済的暮らし向き,主観的健康感),国際標準化身体活動質問紙(International Physical Activity Questionnaire Long version; IPAQ)日本語版およびIPAQ環境尺度日本語版のデータを用いた。基本属性を調整して,環境が歩行行動にとって好ましいと想定される場合に移動および余暇の歩行量が多いオッズ比(odds ratio; OR)が算出されるロジスティック回帰分析を行った。

結果:移動における歩行と有意に関連する環境要因は,男女共通して,近所にスーパーや商店があること(男性:OR=1.64, 女性:OR=1.43),歩道があること (OR=1.35, OR=1.77),自動車・オートバイを所有していないこと(OR=2.56, OR=1.81)であった。近所にバス停・駅があることは男性で関連を認めた(OR=2.31)。近所の安全性(交通量)については女性において関連を認めた(OR=0.73)。近所の運動場所については,女性でのみ関連を認めた(OR=1.34)が男性でも同様の傾向であった。余暇活動のウォーキングと有意に関連する環境要因は,男女共通して,近所で運動実施者を見かけること(OR=1.67, OR=1.57),近所の景観が良いこと(OR=1.32, OR=1.40)であった。自動車・オートバイを所有していないことは,男性で関連を認めた(OR=1.74)。

結論6069歳の者における歩行と環境要因との関連は歩行の目的(移動と余暇活動)によって異なっていた。しかし,一般成人の研究で繰り返し報告されている歩行-環境関連の性差は,高齢者を対象とした本研究では小さかった。本研究の結果から,6069歳における歩行と環境要因との関連の特徴が示されたことは,この年代の身体活動を推進するための重要な知見になるものと考えられる。

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© 2011 日本運動疫学会
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