2016 年 18 巻 1 号 p. 15-22
目的:地域高齢者において客観的に測定した身体活動の変化が健康関連quality of life(QOL)に与える影響を明らかにし,その影響における運動セルフ・エフィカシーの媒介的役割を縦断的に検討することを目的とした。
方法:対象者は2006年および2013年の測定会に参加した地域在住高齢者58名のうち,認知症,脳血管系障害を発症していない49名(女性24名,平均66.2±4.4 歳)とした。身体活動はLifecorder EX 4秒版で測定し,1日当たりの平均歩数を算出した。健康関連QOL はThe MOS Short Form 36(SF-36)を用いてphysical component summary score(PCS),mental component summary score(MCS)を算出し,運動セルフ・エフィカシーは岡らが開発した運動セルフ・エフィカシー尺度を用いた。健康関連QOLについては7年後の値を,身体活動と運動セルフ・エフィカシーについてはベースラインと7年後の変化量を変数として扱い,身体活動と健康関連QOLの関係性における運動セルフ・エフィカシーの媒介効果を検討するためにBaron & Kennyの媒介モデルを作成した。
結果:PCSに関する媒介分析の結果から,PCSと身体活動の変化量は正の関連にあり,この関連に運動SEが媒介していることが明らかとなった。MCSに関する媒介分析の結果から,MCSと身体活動の変化量は正の関係にあるが,運動SEの変化量は関与しないことが明らかとなった。
結論:身体活動の変化量は健康関連QOLに影響を与えることが示された。特に身体活動の変化と身体機能面の健康関連QOLの間には運動セルフ・エフィカシーの変化が媒介していることが示された。