本研究は一般男子やり投げ選手2 名を対象として,高重量やりトレーニングが正規重量やりの投てき距離に及ぼす影響を,動作パターンや練習内容の要因から検討し,トレーニングへの示唆を得ることを目的とした.そのため, 900g の高重量やり(NT4582B,NISHI 社製)を用いたトレーニング期間を12 週設け,トレーニング期間の前後には正規重量やりによる投てき距離の測定を行った.その結果,高重量やりを助走投げに用いた対象者A は,ブロック動作に習熟し,下肢から体幹への運動連鎖が改善された他,リリースまで体幹長軸回転が継続するように投てき動作が変化したことで,投てき距離が1.62 m 増加した.一方,高重量やりを助走練習と立投げのみに用いた対象者B では,助走速度が顕著に増加したが,左足接地時のためが消失したために,投てき距離が1.47 m 低下した.これらのことから,高重量やりを助走投げに用いることは,下肢から体幹への運動連鎖に課題を抱える選手や,リリース時の体幹長軸回転に課題がある選手にとって有効であることが示唆された