日本生態学会誌
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特集2 無神経な行動生態学
菌類の菌糸体の行動
深澤 遊
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 74 巻 2 号 p. 215-227

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抄録
糸状菌類は、細長い細胞が鎖状に連なった糸状の菌糸と呼ばれる組織が分枝と融合を繰り返して作り上げる菌糸体というネットワーク構造を基本的な体制としている。森林生態系の中で、糸状菌類は枯木や落葉といった植物遺体の分解や、植物の根と共生関係を結ぶ菌根菌として重要な役割を果たしている。菌糸体ネットワークの発達や動態がどのような原理に基づいているのかを理解することは、森林生態系を成り立たせている物質循環や生物間相互作用をよりよく理解する上で重要である。本稿では、1本の菌糸から菌糸体ネットワーク全体で、菌糸あるいは菌糸体の行動特性と、そのメカニズムとしての物質やシグナルの輸送について、わかっていることと今後の課題についてまとめた。伸長成長する菌糸の先端には、極性(成長方向の記憶)があり、それにより迷路を解くといった一見高度な課題も解決することができる。菌糸体全体でも、記憶や決断能力の存在を示唆するデータが得られているが、そのメカニズムに関してはよくわかっていない。菌糸体が形を変化させて行動するためには、不要部分の自己消化と必要部分への物質の転流が必要だが、それらがどのように菌糸体全体で調節されているのか、さらに研究が必要である。菌糸体の行動学は新しい分野であり、課題も多いが、ネットワーク解析手法やマイクロ流体デバイス、バイオイメージングなど新しい技術の発達も著しく、今後の発展が期待される。
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© 2025 一般社団法人 日本生態学会

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