抄録
症例は70歳女性. 徐脈頻脈症候群伴う発作性心房細動 (PAF) に対し, 平成23年1月に拡大肺静脈隔離術 (PVI) と上大静脈隔離術 (SVCI) を施行した. この時, 左上肺静脈 (LSPV) のトリガーを認めていた. PVI後, PAFは生じなくなり退院したが, 術後1カ月でPAFと10秒の洞停止が再発したため2nd sessionを施行した. 洞調律時LSPVの再伝導を認め, このLSPVからはexit block伴う異常興奮が頻回に出現し, LSPVの再伝導がPAF再発の原因と考えられた. CSペーシングでは220msの連続刺激でも左房 (LA) -LSPV伝導は1対1伝導を呈するものの, LSPV内より600msでペーシングしても心房はまったく捕捉されず, LSPV内より110msでペーシング行ったところLSPV頻拍が生じたが, この時も心電図は洞調律を維持しており, LSPV-LA間には一方向性伝導ブロックが考えられた. ATP 20mgを静注したところ房室ブロック出現後, LSPV頻拍が誘発されたが, この時も心内は洞調律でありLSPV-LA方向のdormant conductionも認めなかった. 以上の所見から再発したPAFはLSPVの再伝導が原因ではなく, non PV, non SVC起源トリガーの存在が示唆された. その後, ISP負荷にて複数のnon PV起源PAFが生じたためトリガーアブレーションを施行した. ペースメーカ植え込みを行いホームモニタリングしているが心房細動の再発なく経過している. 慢性期にLSPV-LA間の一方向性伝導ブロックを呈した稀な症例を経験し, その評価がnon PV起源の予測に有益であったため報告する.