心臓
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症例 僧帽弁交連切開術中に発生した冠動脈スパズムの経験
葉玉 哲生調 亟治内田 雄三一万田 充俊田中 康一高崎 英己森 義顕岡 敬二伊東 祐信野口 隆之小村 一寿工藤 明生山内 秀人
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1986 年 18 巻 3 号 p. 301-308

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抄録
冠動脈外科手術近接期の冠動脈スパズムの発生は手術直接予後を左右する重大な合併症で注目されている.
一方,リウマチ性弁膜症手術中の冠動脈スパズム発生の報告は見当らない.
著者らは2例の僧帽弁交連切開術において術中に冠動脈スパズムを経験した.第1例は術前に冠動脈造影中,カテーテル刺激による右冠動脈のスパズムを認めた.本例では術中,体外循環前に心室細動へ移行した.体外循環を開始して交連切開術を施行し得たが術後はVPCの頻発,重篤なLOSを発生したが救命できた.
第2例は,術前の冠動脈造影時,エルゴノビン負荷にて広範なスパズムがみられた.手術開始後,ニトログリセリン持続静注にかかわらずST上昇とともに血圧低下を来した.体外循環開始後は何ら問題なく僧帽弁交連切開術を施行されたが,体外循環離脱時にスパズムを来し,以後は,あらゆる薬剤,IABP施行にかかわらず救命できなかった.
スパズムを伴うACバイパスと同様に,術中,diltiazem, nitroglycerineの投与によるスパズム発生の防止,治療に努めるべきである.
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