理科教育学研究
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原著論文
理科を教えることに関する教師の学習能力 : 小学校教師を目指す大学生による教授資料からの学習を事例として
山口 悦司稲垣 成哲野上 智行
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2009 年 50 巻 1 号 p. 75-84

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抄録

教師教育に関する先行研究の多くは,理科教師の学習について,その「現在の学習成果」という側面に焦点を当てたものである. しかしながら,「将来の学習可能性」という側面に焦点を当てた研究はほとんど行われていない.理科教育に関するカリキュラム改革は世界各国で行われている.そのため,「将来の学習可能性」は理科の教師教育研究において重要なテーマになると考えられる.そこで,本研究では,こうした試みの第一歩として,教授資料から学習する能力に着目し,小学校教師を目指す大学生が,理科教育関連の科目を履修する前において,理科を教えることについて教授資料から学習するためのどのような能力を持っているかを実証的に明らかにした.結果は,次の4点であった.(1) 日本の授業に特徴的な基本構追「教師が教えたい内容を子どもたちが学習したい内容へと変換するとともに,その中で子どもたちに科学的な探究プロセスを体験させる」について大学生は,教授資料を読むことを通して,理科教育プログラム受講前から学習することができる.(2) しかしながら,大学生は,子どもたち指向であることと科学指向であることを両立させるという世界的に高く評価されてきた日本の理科の教授についてはいくら教授資料を与えられたとしても.そこから学習することができない.(3) さらに大学生は,小学校の理科授業に特徴的な教授技術や教材や指導上の留意点などを教授資料から学習することができる.(4) その一方で.大学生は,単元固有な教授技術などを学習できない傾向にある.これらの結果に基づいて,今後の教師教育プログラムに求められる課題について議論した.

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© 2009 日本理科教育学会
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