理科教育学研究
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原著論文
過去30年間の小学校理科実験事故の傾向に関する研究
春日 光森本 弘一
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2016 年 57 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

理科の授業において, 「観察・実験」は必要不可欠である。しかし, 小学校では必ずしも理科が得意な教員が授業をしているとは限らず, 多くの危険が潜んでいるといえる。本論文は, 過去の小学校理科実験の事故から明らかになった傾向を報告するものである。得られた知見は下記の通りである。(1)「金属, 水, 空気と温度」(第4学年), 「燃焼の仕組み」, 「水溶液の性質」(以上, 第6学年)の単元で事故が多く発生しており, 重大な事故につながりやすい。(2)現職の小学校教員に行った質問紙調査においても上記の単元の学習中に, 「危ない」と感じた経験があると回答する人が多い。(3)基本統計の傷害種別の事故件数の調査によると, 火傷よりも擦り傷, 切り傷等の傷害が多いことから, 日常的には実験中だけでなく観察活動中に負傷する事例も多いと考えられる。(4)児童1人あたりの年間事故件数の割合は, 偶然として無視できる確率(10–6)よりも高く, 事故件数をさらに減少させる必要がある。(5)過去30年を通して, 男子の方が女子に比べ負傷しやすい。以上のように, 本研究で明らかになった傾向は, 今後の理科実験における安全対策を考える上で貴重な情報を提供していると考えられる。

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© 2016 日本理科教育学会
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