2019 年 60 巻 1 号 p. 71-84
本研究の目的は,理科を初めて学習する小学校第3学年に主張−証拠−理由付けを含むアーギュメントを導入した授業を開発し,その効果を検証することである。「風やゴムのはたらき」の単元において,俣野・神山(2017)や俣野・神山・山本(2018)を援用し,準備段階に4つ,実施段階に6つの教授方略を設定して授業をデザインした。単元中,児童は3回アーギュメントを記述した。1回目はワークシートにリード文を挿入し,全員で主張,証拠,理由付けの各構成要素を確認しながら記入し,2回目はリード文を挿入しつつも,理由付けの部分に関してのみ,何を指すのかを全員で確認しながら記入した。3回目については,リード文を外し,構成要素ごとに自由に記述させた。3回のアーギュメントについて,主張,証拠,理由付けといった構成要素に着目し,それぞれを「記述の有無」と「内容の正しさ」の二つの観点で得点化した。その結果,「記述の有無」については,2回目における6人,3回目における1人を除き,28人すべての児童が満点であった。「内容の正しさ」についても,回数を重ねるにつれて徐々にリード文や教師による確認を減らしていったにも関わらず,3回目には概ね70%の児童がアーギュメントを正しく記述することができるようになった。よって,主張−証拠−理由付けを含むアーギュメントを構成することは達成され,本実践における授業の有効性が明らかになった。