本研究は,近年注目されている「深い学び」の実現に向けて,知識や技能を相互に関連づけて考え理解していくその思考過程の具体を明らかにすることを目的に,Linn(2000)の提唱する知識統合の理論を援用し,中学校理科における対話を基軸とした問題解決過程における生徒の思考の事例的分析を行った。結果として,生徒は,直近の問題を解決することを意図した「小さな統合(本研究では,これをMicro Integration:MIと称する)」を繰り返し生じさせる姿を見出すことができた。生徒は,問題解決に向けて「小さな統合」を通じて少しずつ知識や考えの抽象度を高め,その結果,科学的な知識や理論に到達していくという,知識統合が実現する実態を明らかにした。