2016 年 40 巻 1 号 p. 35-42
阪神・淡路大震災の時,クラッシュ症候群(以下CS)の発症が大きな問題となったが,現在においても現実的な対抗策は存在しない.我々はこれまで人命救助ロボットの発案・研究を行ってきたが,本研究ではそのロボットに搭載するクラッシュ症候群発症阻止機構(以下CSP 機構)についての実験を行った.被災者を医師の許まで運ぶ間,CS の発症を抑える事を目的として,鼠蹊部を圧迫材にて圧迫し,大腿静脈を阻血することで血液の再灌流阻止を想定した実験を試みた.また大腿動/静脈が隣接していることから,後脛骨動脈の流速を血流計で計測することにより静脈の阻血の指標とした.実験の結果,本CSP 機構は太腿の駆血や,掌による鼠蹊部圧迫法よりも高い阻血率を示した.また,年齢・体脂肪率などにより阻血に必要な圧迫圧力に個人差が生じることも判明した.