抄録
筋の硬さは運動器である筋機能評価指標として古くから注目され,特に押し込み式の筋硬度評価は臨床やスポーツ現場 で行われる触診に近い手法である.筋硬度の変動要因には筋線維に生じる張力と組織容積増大による内圧が複合的に関わって おり,それぞれ筋組織を「弦」と「風船」にたとえることができる.筋張力は伸長と収縮によって生じ,損傷筋の強制伸展や 随意的収縮時に筋硬度も増加する.さらに動物実験によって押し込み反力は静止張力と活動張力に依存的であることが確かめ られている.筋内圧は運動性充血や腫脹等によって増加し筋硬度を変動させる.生体表面からの押し込みによる筋硬度評価は 皮膚と皮下組織の影響を伴うが,触診における評価の深さなどを考慮し現場に活用することが重要である.