東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-44
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上腕骨近位部骨折に対し早期運動療法を行った1症例
*里崎 賢人布上 隆之北川 秀機
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抄録
【はじめに】当院では上腕骨近位部骨折に対して、立位や前屈位の保持が可能で、認知症がない症例に限定して早期運動療法による保存療法を行っている。今回、上腕骨近位部骨折に対して本法を行い、良好な結果を得たので報告する。
【症例紹介】症例は86歳の女性、前のめりに転倒し受傷。診断はNeerの分類で外科頚の2partsの右上腕骨近位部骨折である。
【経過】受傷日は徒手にて整復し、バストバンドと三角巾にて固定。受傷1週間後から運動療法を開始した。下垂位での振り子運動を行い、その他の時間はバストバンドと三角巾にて固定を行った。受傷後3週間で安静時痛は消失。受傷後7週間から他動での右肩関節可動域練習を開始した。開始時の右肩関節屈曲可動域は他動115°、自動80°で運動時痛はVAS5cmであった。受傷後3ヶ月で右肩関節屈曲可動域が他動155°、自動125°、運動時痛VAS4cmになり日常生活での挙上動作、結帯動作が問題はなくなった。
【運動療法】当院では上腕骨近位部骨折受傷1週間後から患側上肢に対し下垂位での運動療法を行う。まず、固定の着脱は必ず立位で腕を下垂した状態で行う。腕を下垂したまま、背中が床と平行になるまで前屈し、できるだけZero-positionに近い体勢をとり、身体を前後に揺らしながらその反動を利用して腕の振り子運動を行う。この際、肩から腕の力を抜きリラックスした状態で行う。回数は、1日1000~3000回を目安に3分1セット(約100回)とし10~30セット行う。挙上運動は、受傷6週間後から行うがX線写真ではっきりした骨癒合が確認できない場合は1~2週間遅らせることもある。関節可動域練習は、他動運動や健側で補助しながら行う自動介助運動から開始し、1~2週間ほどでの自動挙上獲得を目標とする。関節可動域練習を行う際は、骨折の転位に十分な注意を払い愛護的に行う。
【考察】上腕骨近位部骨折の保存療法では従来3~4週間固定し、仮骨が形成され始めてから運動療法を開始していた。しかし、この方法は肩関節周囲に癒着が生じてしまい可動域制限が生じやすかった。保存療法では骨折の不良な転位や再骨折を起こすことなく、日常生活に必要な関節可動域を確保することが重要である。早期から下垂位での振り子運動を行うことにより、肩関節周囲の癒着は予防され、肩関節可動域は維持されると考えられる。石黒は、上腕骨近位部骨折患者16名に下垂位での早期運動療法(石黒法)を行い、座位での肩関節自動運動の可動域は、前方挙上110~153°(平均125°)であったと報告している。日常生活では、挙上120°可能であれば身の回りの動作は問題なく行える。最近では、早期運動療法を目的として積極的に手術的治療がなされる傾向もあるが、症例の全身状態や生活環境に応じて保存療法でも早期から下垂位にて振り子運動を行うことで、日常生活に必要な可動域は獲得できると考えられる。
【まとめ】上腕骨近位部骨折に対し早期から運動療法を行うことにより、良好な肩関節可動域を獲得できた。
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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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