主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
【背景と目的】環境中に存在する化学物質や微粒子が、アレルギー疾患を悪化させることが、疫学的にも実験的にも報告されている。化学物質や微粒子は、パーソナルケア製品(PCPs)にも含有されうるが、これらがアレルギー疾患に及ぼす影響に関する知見は乏しく、また、膨大な数のPCPsの影響を確認するには、簡易的な評価手法が求められる。本研究では、in vitro簡易評価系によりアトピー性皮膚炎を悪化させうるPCPを推定し、in vivoでその悪化影響を評価することを目的とした。
【方法】スクリーニングとしてアトピー性皮膚炎モデルであるNC/Ngaマウスから単離した抗原提示細胞にPCPsを曝露し、CD86発現をフローサイトメトリーで測定した。続いて、NC/Ngaマウスの耳介腹側にダニ抽出物(Dp)を皮内注射し、皮膚炎病態を形成させた。同時に選択したPCPを耳介背部に塗布し、皮膚炎病態の変化を観察した。また、耳介中マスト細胞数をトルイジンブルー染色標本を用いて、PCPの耳介中局在を顕微レーザーラマン分光測定装置を用いて、それぞれ観察した。
【結果】in vitroスクリーニングで12種中6種類のPCPsがCD86の有意な増加を示し、高値を示したPCPをin vivo評価に用いた。マウスにDpを単独曝露したところ、痂疲・びらん等の皮膚炎病態や耳介組織中のマスト細胞の脱顆粒が認められた。DpおよびPCPの複合曝露は、Dp単独曝露と比較して、皮膚炎病態やマスト細胞脱顆粒の有意な悪化や増加が認められた。PCP成分は、痂疲表面に、一部は真皮層に検出された。
【結論】in vitroスクリーニングがアレルギーを悪化させるPCPsの推定に役立つことが示された。今回対象としたPCPは、マスト細胞の脱顆粒を介してアトピー性皮膚炎を悪化させる可能性、また、痂疲表面、一部は真皮層に蓄積する可能性が示された。