日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S16-1
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シンポジウム16: 核酸医薬品開発における安全性評価の課題と取り組み
核酸医薬品開発における自然免疫活性化評価の課題と取り組み
*有賀 千浪太田 哲也永山 裕子Beibei BI福島 民雄藤澤 可恵泉沢 航平角谷 友美波多野 美咲栃谷 智秋木村 真弥小森 久和篠澤 忠紘
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抄録

核酸医薬品は,クラスエフェクトとしてインフルエンザ様症状をはじめとした炎症性の有害事象を引き起こすことが知られている.そのメカニズムとして,微生物の核酸に対する防御機構であるToll様受容体(TLR)等を介した自然免疫系の活性化が考えられている.自然免疫活性化のポテンシャルを評価する際の課題として,そのメカニズムがヒトと実験動物で大きく異なり,実験動物では臨床における作用を予測することが難しいこと,さらにヒト材料を用いた評価を実施しようとした際,試験プロトコルが十分に確立されていないことが挙げられる.これらの課題を解決するため,核酸医薬品安全性コンソーシアムでは,製薬5社のサブグループにおいて,臨床での自然免疫活性化を開発早期に検出可能なin vitro評価系構築を目指し,2021年度から共同試験を開始し取り組んできた.

1年目は4種のTLRアゴニスト(Poly(I:C) HMW,R848,ODN 2006およびODN 2216)を用いて,ヒト末梢血単核細胞(PBMC)への曝露後,培養上清中の各種サイトカイン濃度の顕著な増加を確認し,陽性対照物質等の試験条件を確定した(第50回年会発表).2年目は,実際に臨床試験実績のある複数のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を用いた検討を行った.その結果,陽性対照物質と比較すると明確に低いものの,いずれのASOにおいても類似のサイトカイン変動傾向を示した(本年会発表予定).最終年度となる3年目は,試験間差および施設間差を確認する試験を実施中である.

これらの共同試験を通じて,PBMCのドナー間差やサイトカイン測定のばらつき等の背景データも蓄積されてきており,ヒトPBMCを用いたサイトカイン測定によって,核酸医薬品による自然免疫活性化作用の評価が可能なことが示唆されている.

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