音声コミュニケーション研究会資料
Online ISSN : 2758-2744
1 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
2021年12月音声コミュニケーション研究会資料
  • 髙橋 康徳
    2021 年 1 巻 2 号 論文ID: SC-2021-18
    発行日: 2021/12/11
    公開日: 2024/02/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    中国語の一方言である上海語は広用式変調と窄用式変調という2 種類の変調(tone sandhi)を持つ。 前者は音韻的な声調拡張現象であることが一貫して主張されてきたが, 後者については2010 年代に入ってから複数の実験音韻論的研究が「音声的な弱化現象」と主張した。本研究では窄用式変調に関する上記の解釈が本当に妥当なのかを再検討する。先行研究の解釈に従うと 「持続時間が短くなるほどF0 の変動幅(上昇幅・下降幅)が小さくなること」が予想されるが, 音響音声学的データを分析するとこの2 つの要因の間に相関性がほとんど認められず, F0 がほぼ変動しないトークンの方が長い持続時間を持つ例が認められた。さらに, 特定の語彙で変動幅が小さくなる分布の偏りも観察された。以上の結果から, 上海語の窄用式変調は純粋な音声弱化現象ではなく水平声調(level tone)への音韻化が語彙拡散的に進行している「音声・音韻にまたがる複合的現象」であると本研究は結論づける。

  • 布目 孝子, 宇都木 昭
    2021 年 1 巻 2 号 論文ID: SC-2021-19
    発行日: 2021/12/11
    公開日: 2024/02/15
    研究報告書・技術報告書 認証あり

    本研究は中国語普通話の3つの無声歯擦子音[c], [s], [s] の音韻的特性に注目し、中国語 CV 音節の摩擦子音 部分と後続母音部分の音響的特徴が知覚的手がかりとしてそれぞれどのように機能しているか、また[s] と [s]の弁 別しか持たない日本語母語話者の知覚的手がかりが中国語母語話者とどう異なるかについて、 中国語母語話者と中 国語を学ぶ日本語母語話者を対象に音声モーフィングによる合成音声を使用した知覚実験を行った。母語話者は、 中国語の音韻体系に基づいて子音部分と母音部分の情報を知覚的手がかりとして状況に応じて使い分けているのに 対し、学習者はどの場合においても子音の音響的特徴の影響をより強く受ける傾向があった。

  • Kanako TOMARU, Takayuki ARAI
    2021 年 1 巻 2 号 論文ID: SC-2021-20
    発行日: 2021/12/11
    公開日: 2024/02/15
    研究報告書・技術報告書 認証あり

    A vowel identity can be determined by first two or three formants. Critical formant information includes a center steady state portion that are often called as “target” and preceding onglide and following offglide transitional movements. Dynamic, or transitional, information is closely related to the intrinsic duration of a vowel. For example, tense and lax vowels of English have different characteristics of onset and offset transitions. The question of the present research is: does the transitional information of vowel offset affect perceptual duration of a vowel in general? The study compares perceptual duration of a steady state formant followed by a rapid and less rapid formant transitions using synthetic VCV syllables. Our experiment provides foundations to discuss how the perceptual duration of a vowel varies before a rapid and less-rapid transitions.

  • 出丸 香
    2021 年 1 巻 2 号 論文ID: SC-2021-21
    発行日: 2021/12/11
    公開日: 2024/02/15
    研究報告書・技術報告書 認証あり

    非母語話者の発話では、母語干渉などの原因から外国語なまりが残る事が多い。 本研究は、非母語話 者の日本語発話における外国語なまりの音響的要因とその影響、さらに外国語なまりの知覚に影響を及ぼす聞き手 側の要因を考察する。 先行研究においては、英語と中国語を母国語とする日本語学習者の発話における音響特性と、 この発話データに対する外国語なまり判定データの分析により、日本語においてはピッチパタンの誤りが外国語な まりの知覚に大きく影響するという知見が得られている。 話者や発話の特性が外国語なまりの原因となるのは当然 である一方で、 様々な聞き手側の要因によっても知覚される外国語なまりの程度が異る事が近年多く報告されてい るが、日本語においてはその分野の研究はまだ進んでいない。 本稿では、外国語なまりのある日本語に対し、聞き 手がどのような主観的社会的評価をするのかも考えながら、 外国語なまりの問題を発話者と知覚者双方の問題とし て捉え考察する。

  • 浅野 恵子, センゲル 響, 村田 晃一郎
    2021 年 1 巻 2 号 論文ID: SC-2021-22
    発行日: 2021/12/11
    公開日: 2024/02/15
    研究報告書・技術報告書 認証あり

    複数の言語の隔てなく使いこなす人のことを「バイ/マルチリンガル」 と呼ばれる場合が多いが、 その ような人でも無条件にその状態が継続できているわけではない。 帰国子女や留学滞在からの帰国後及び国内での教 育歴などの様々な環境変化要因で、 習得した言語の喪失に悩む人は少なくない。 本稿ではバイ/マルチリンガルの言 語喪失についてアンケート調査から、喪失していると回答された言語項目の現状を観察し、 喪失の防止策および第 二言語習得者の習得困難要因の手掛かりを分析する。 今回の言語獲得後の喪失とは、長期的な喪失を指し、 何らか の理由で特定の言語を以前よりも自由に使いこなせなくなったケースを対象とする。 回答者の多くが言語間の使い やすさに差があり、 喪失していく言語があると回答している。 調査項目中の言語項目に喪失に関する特徴が見られ たため、言語喪失と言語習得のプロセスに関連する要因があるかも考察する。

  • 加藤 茉由子, 上田 みづか, 秦 政寛, 皆川 泰代
    2021 年 1 巻 2 号 論文ID: SC-2021-23
    発行日: 2021/12/11
    公開日: 2024/02/15
    研究報告書・技術報告書 認証あり

    本研究では、コミュニケーション能力発達についての乳幼児縦断研究のデータを用いて、 6 ヶ月時点 の母子遊び場面における母子の発話特性が、 2, 3歳時の発達検査中の作業記憶に関する課題の成績へどのように影 響するかについて検討した。対象は、乳児(男児=16名、女児=15名)とその母親の計31 組とした。うち15名の乳児 はリスク児 (兄弟が自閉スペクトラム症などを有する乳児) であった。

    6ヶ月時における母子相互作用場面のビデオ録画の行動 発話コーディングの結果と、 2歳 3歳時での新版K式 発達検査における作業記憶に関連する課題の成績との相関を検討した。その結果、 母親の乳児への語りかけの持続 時間と3歳時の数唱課題の成績、乳児と母のリズム発声回数と3歳時の作業記憶課題の成績などで相関が見られた。 発達初期の母子の発話傾向や非言語的な相互作用が言語性短期記憶を含む作業記憶の発達に影響を与えていること が示唆された。

  • 北村 達也, 能田 由紀子, 吐師 道子
    2021 年 1 巻 2 号 論文ID: SC-2021-24
    発行日: 2021/12/11
    公開日: 2024/02/15
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,発話のしにくさを自覚する話者2 名および自覚しない話者1 名を対象にリアルタイムMRI を用いて調音運動を観察した.これらの話者はすべて日本語を母語とする20 代男性である.話者にMRI 装置内にて/aka/や/aga/などのVCV 系列を反復発話させ,正中矢状面の調音器官の動きを14 フレーム/秒のリアルタイムMRI により記録した.得られたMRI 動画の一部のフレームについて舌上面の輪郭を目視にてトレースし,そのデータから機械学習を用いて他のフレームにおける舌輪郭を自動抽出した.これはトレースの作業量を削減するとともに,輪郭抽出の再現性を担保することを目的としている.舌輪郭からその最も高い点を決定し,その変化および周期性を分析したところ,発話のしにくさを自覚しない話者では周期的に変位し,その移動範囲が安定していた.一方,発話のしにくさを自覚する話者では変位の周期性に乱れが生じたり,移動範囲が一定しなかったりする現象が観察された.

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