外国語学習者の読み上げ音声は , どれくらいすらすらと聞き取ってもらえているのだろうか ? 学習者音声 聴取時における聴取の崩れ (listening disfluency) を客観的に計測する方法として , 学習者音声を聴取者 ( 評価者 ) に シャドーさせ , そのシャドー崩れを定量化する方法が提案されている . これは学習者音声の了解度を定量化する一手 法と言える . しかしながら本手法は , シャドー音声の音声的な崩れを定量化しており , 誤認識・誤理解など , 意味的な 崩れを必ずしも意味しない . 本研究では , シャドーイングを行った評価者自身に再度学習者音声 , シャドー音声を聴 取させ , 単語や音節を単位として「意味的」聴取崩れの度合いを主観的にラベリングさせた . そして , 主観的な「意 味的」聴取崩れと客観的な「音声的」聴取崩れの対応を検討した . 更に , 評価者とは異なる第三者によっても「意味 的な」聴取崩れラベリングは可能なのかについても検討した .
英語は文法,語彙,発音が様々に変容しつつ,世界中で話されている.発音の多様性についてはこれまで多くの文献で報告されてきた.一方で聴取の多様性については,聴取時の聴解崩れに対する客観的な分析に基づく議論は行われていない.近年,シャドーイングを用いて聴取の様子(聴取の崩れ)をオンラインで定量的に評価する手法が提案された.これを用いて,本研究では母語の異なる留学生約30名から英語音声を収録し,それを相互にシャドーさせ,互いの発音差異,聴解崩れを計測し,聴取多様性の定量的な分析を行なった.その中で参加者の聴取能力の特定英語発音への依存度や,聴取の非対称性(方向性)を検討した.さらに,様々な世界諸英語話者を対象として「伝える能力・聞く能力」を学習者毎に可視化し,特徴的なパターンについてまとめた.
本稿では、「シ」と「ヒ」の発音の混同について、関東方言と関西方言を比較して差異を検討し、その混同が生じる要因について考察した。その結果、関東地域の話者においてより混同が生じていることが明らかとなった。また、従来、関東地域では「ヒ」から「シ」に、関西地域では「シ」から「ヒ」に転じることが示されてきたが、必ずしもそうした傾向は把握できなかった。「ヒ」と「シ」の混同が生じる要因として、母音の無声化、摩擦の質などについても考えたが、明確とはできなかった。音環境としては後続音の影響があり、無声歯茎(硬口蓋)破擦音が混同の要因となっている可能性が指摘できた。話者別に検討したところ、関東地方では多くの話者で混同が生じる一方で、関西地方では特定の話者に偏る傾向が見られた。発音に対する意識との関連については、傾向性が見出せなかった。
吸気音は韻律の一つとして認識することが可能であるとの見解がある一方で、実際にその特徴を調べた研究はごく限られている。本研究では、アニメーションの音声表現に出現する吸気音を調べ、その特性を検討した。分析の結果、吸気音には感情の増幅や消失などと深く関連しており、場面や設定に即した情報を伝達する役割が付与されていることが判明した。明確な発話内容や、直前もしくは直後発話の演者のパラ言語的メッセージによる影響が大きく、受け取る感情にある程度の共通性が見られた。また、吸気音が伝達する感情や発現する場面にはある程度共通性があり、セリフ中の発現箇所によって伝達される情報は多様に変化することが分かった。特定のキャラクター像を作り出すために、意図的に吸気音を使用している可能性が示唆された。
これまで声帯振動から発生する声と声帯との関係性を明らかにするため,声帯振動を模擬した様々な計算モデルが提案されてきた.その中で,声帯振動の解析に関しては3次元振動モードを考慮した有限要素法が用いられている一方,声門を通過する気流に関しては1次元に簡略化したモデルが多く用いられてきた.そこで本研究では,声帯の3次元有限要素モデルの過渡応答解析に対して1次元および3次元気流モデルを連成して解析することにより,振動様式や声門の流量が気流モデルによりどの程度変化するのかを明らかにする.結果として,振動周波数や大まかな変位波形,流量波形は1次元モデルと3次元モデルで似た傾向となったものの,声門閉鎖期など細かな波形は異なり,1次元モデルを用いる際には剥離点のモデル化など注意が必要であることが示唆された.
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