三十代でがんの診断を受けた筆者も、同世代の患者との出会いや交流を通じて、崩れかけた自分のアイデンティティを再構築した経験がある。罹患者数が少なく疫学分類が多様、多様な診療科にまたがるAYA世代のがん患者は、医療機関の中、あるいは地域でも、同世代のがん体験者と出会える機会が少ない。私自身もブログなどオンラインでのコミュニティを通じて「同じ体験を持つ仲間(ピア)」と交流した経験を持つ。
心理社会的成長過程にあるAYA世代のがん患者にとって、「同じ体験を持つ仲間との出会い」は、疎外感や自己肯定感の回復、キャリアを含めた将来像の自らの姿を考える上で有効である一方で、その社会背景は多様であることから、ニーズマッチングが上手くいかないケースでは、逆に孤独感を増す結果にもつながる。
本研究では、こうしたAYA世代の心理社会的な発達課題とそこでのピアサポートの意義について検証しつつ、我が国における医療政策におけるピアサポートの位置づけ、他の疾患領域での取り組みなどを紹介しつつ、AYA世代がん患者の支援の在り方について考察したい。
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