AYAがんの医療と支援
Online ISSN : 2435-9246
1 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総説
  • 清水 千佳子, 吉田 沙蘭, 樋口 明子
    2021 年 1 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー

     平成30年度厚生労働科学研究費(がん対策推進総合研究事業)「思春期・若年成人(AYA)世代がん患者の包括的ケア提供体制の構築に関する研究」班では、「地域のネットワークの核となるAYA支援チーム」というコンセプトの「AYA支援チーム」を養成する探索的な教育プログラムを行い、その実行可能性を検討した。AYA世代特有のニーズと院外連携や地域連携の視座を与えたうえで各施設のチーム作りの課題を可視化し、さらに他施設の取り組みを参考にしながらその課題に対する具体的な解決策を考えることにより、地域や施設の特性を生かした「AYA支援チーム」づくりが可能であることが示唆された。また教育プログラムを通じて、「AYA支援チーム」実装のためのさまざまな課題が明らかになった。

  • 川井 章
    2021 年 1 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー

     AYAがんの医療と支援のあり方を考える上では『まれ』ながん、すなわち希少がんのかかえる問題を避けて通ることはできない。希少がんは、概ね罹患率(発生率)が人口10万人当たり6例未満で、数が少ないため診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きいもの、と定義される。日本では190種類を超えるがんが希少がんに相当し、全ての希少がんを合計するとがん全体の約15%に達する。小児~AYA世代のがんの多くは希少がんである。希少がんの診療の特徴は、数が少ないことによる経験の不足、情報の不足、治療手段の不足にあると考えられ、その治療成績は、頻度の高いがんに比べて劣っていることが明らかにされている。2014年、国立がん研究センターにわが国初の希少がんセンターが開設された。希少がんセンターは、自ら希少がんに対する診療を行うとともに、「希少がんMeet the Expert」、「希少がんホットライン」などの活動を通して、希少がんに関する情報提供、診療支援に取り組んでいる。集約化と均てん化という希少がん医療の根本的なジレンマに対して、複合的な全国ネットワークを構築し、希少がんに関する情報の提供や、治療開発を推進してゆくことを目指した試みが始まっている。これら様々な対策が実を結び、希少がんの治療成績、患者満足度が頻度の高いがんに並ぶこと、願わくはそれを凌駕することが希少がん対策の目標である。

  • 樋口 明子, 小澤 美和, 坂水 愛, 檜垣 希実, 恩田 聡美, 片山 麻子, 堀部 敬三
    2021 年 1 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー

     小児がんは小児期に発症する悪性腫瘍の総称であり、成長発達の過渡期での発症・闘病となることからも、医療面だけではなく心理社会的な側面においても特有の課題があることは広く知られている。特にAYA世代の小児がん患者・サバイバーは個別性が高く、一言でAYA世代の小児がん患者・サバイバーといっても、置かれている状況だけではなく、その年齢によっても抱える課題は様々である。治療法や治療を受ける施設の選択、移行期医療などの医療面での課題、医療者との関わり方、患者・経験者の経済的負担、親子の関係、がん患者としての時間・空間とは違う社会生活の過ごし方、治療歴や晩期合併症のリスクに応じた健康管理の理解や方法、就学、就労、友人との関係、恋愛・結婚などのライフイベントの対応など、当会に寄せられている相談からの実態を見ても、個別性の高さが分かる。また、平成27-29年度厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」 班(研究代表者 堀部敬三)で実施した患者家族調査からも、年齢によって変化するニーズが明らかになっている。しかしながら、対応する制度は十分とは言えず、情報量も発信方法も発展途上と言わざるを得ない。今後も引き続き、国や自治体、医療機関や関連機関なども含めた社会が一丸となり、年齢を超えた横断的な対策が講じられていくことを期待したい。

  • 桜井 なおみ
    2021 年 1 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー

     三十代でがんの診断を受けた筆者も、同世代の患者との出会いや交流を通じて、崩れかけた自分のアイデンティティを再構築した経験がある。罹患者数が少なく疫学分類が多様、多様な診療科にまたがるAYA世代のがん患者は、医療機関の中、あるいは地域でも、同世代のがん体験者と出会える機会が少ない。私自身もブログなどオンラインでのコミュニティを通じて「同じ体験を持つ仲間(ピア)」と交流した経験を持つ。

     心理社会的成長過程にあるAYA世代のがん患者にとって、「同じ体験を持つ仲間との出会い」は、疎外感や自己肯定感の回復、キャリアを含めた将来像の自らの姿を考える上で有効である一方で、その社会背景は多様であることから、ニーズマッチングが上手くいかないケースでは、逆に孤独感を増す結果にもつながる。

     本研究では、こうしたAYA世代の心理社会的な発達課題とそこでのピアサポートの意義について検証しつつ、我が国における医療政策におけるピアサポートの位置づけ、他の疾患領域での取り組みなどを紹介しつつ、AYA世代がん患者の支援の在り方について考察したい。

第2回AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会基調講演
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