脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌)
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28 巻, 2 号
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原著
  • 中川 一郎, 横山 昇平, 朴 憲秀, 輪島 大介, 西村 文彦, 山田 修一, 横田 浩, 本山 靖, 朴 永銖, 中瀬 裕之
    2017 年 28 巻 2 号 p. 241-247
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    抗血小板薬の効果には個人差があり,遺伝子多型,併存疾患,服薬等によって影響を受けることが知られている.今回我々は未破裂脳動脈瘤コイル塞栓術において,抗血小板薬に対する抵抗性/過反応性についてモニタリングを行い,P2Y12 Reaction Unit(PRU)値を適正値にコントロールするActive Target PRU Managementについて検討した.未破裂脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行した61例を対象とした.術前アスピリンおよびクロピドグレルの2剤を治療7日前から開始し,プロトコールに従って服薬量調整を行った.術前クロピドグレル過反応性は9例(15%)であったが術後は25例(41%)と有意に増加した.また薬剤量調節によりPRU値を適正値へコントロールが可能であった.ステント時代の脳動脈瘤塞栓術において,Active Target PRU Management が虚血および出血合併症予防に対する戦略の一つとなりうる可能性が示唆された.

  • 結城 浩弥, 正本 和人, 畝川 美悠紀, 冨田 裕, 菅野 巖, 鈴木 則宏
    2017 年 28 巻 2 号 p. 249-256
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    ミクログリアは中枢神経系に存在する免疫担当の細胞であり,生体脳において非常に動的に活動する細胞である.本研究では,ミクログリアをin vivoのマウス脳内において長期間反復評価するための顕微鏡イメージングと細胞形状の解析手法について検討することを目的とした.実験にはミクログリアのケモカイン受容体に緑色蛍光タンパク質を発現させた遺伝子改変マウスを用いた.マウス大脳を長期反復観察するためにTomita-Seylaz法による慢性頭窓を左頭頂骨上に作製し,頭窓作製直後から3週間にわたって,二光子励起レーザー顕微鏡を用いて細胞形状の変化をリアルタイムで観察した.細胞形状の評価として,撮像画像内におけるミクログリアの細胞体断面積および細胞体中心から伸びる突起の数について自作の解析ソフトウェアを用いて定量化した.その結果,皮質深さ800 μmまでの細胞形状を認識し,同一のミクログリアに関して頭窓設置後の反復観察が可能であることを確認した.

  • 船津 奈保子, 早川 幹人, 山上 宏, 吉本 武史, 園田 和隆, 佐藤 徹, 髙橋 淳, 長束 一行, 豊田 一則
    2017 年 28 巻 2 号 p. 257-263
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    【背景】血管内治療で再開通を得て,3カ月後転帰良好であった急性期脳主幹動脈閉塞例において,早期症候改善の意義や関連因子は明らかでない.【方法】2012年4月~2016年3月の急性期脳主幹動脈閉塞血管内治療施行連続173例のうち有効再開通が得られ3カ月後転帰良好(modified Rankin Scale [mRS]スコア0–2)に至った症例を対象に,early dramatic recovery(EDR,24時間後のNIHSSスコア10以上改善または0–3)の臨床転帰への影響,および関連因子を後方視的に検討した.【結果】53例(年齢70.3±12.1歳,女性17例,術前NIHSSスコア中央値15 [四分位範囲11–21])を対象とした.EDR群(45例)は非EDR群に比し3カ月後mRSが低く(中央値1[0–2] vs. 2[1–2], p=0.03),白血球数(7826.7±2827.7 vs. 10137.5±3112.2/μl,p=0.03),血清BUN/Cre比(18.1±6.0 vs. 24.7±8.1,p=0.02)が低値であった.多変量解析では血清BUN/Cre比がEDRに関連した(オッズ比 0.81,95%信頼区間 0.65–0.94).【結論】血管内治療で有効再開通が得られ3カ月後転帰良好であった脳主幹動脈閉塞例では,血清BUN/Cre比低値がEDRに関連し,EDR例は非EDR例に比べて3カ月後mRSスコアが低かった.

  • 嶋 英昭, 園田 実香, 大井 幸昌, 森 龍彦, 岡村 幹夫, 石村 栄治, 石坂 信和
    2017 年 28 巻 2 号 p. 265-271
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)は脳心血管病の高リスク病態である.脳の磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging: MRI)で認められる,大脳深部白質病変(deep subcortical white matter hyperintensity: DSWMH)は脳小血管病の一つである.DSWMHは非CKDでは脳卒中に高率に合併し動脈硬化性変化と強い関連があり,将来的な脳卒中や認知症,うつ病などの発症に関連することが知られている.このたび,CKDとDSWMHが関連するか,横断的に検討した.2008から2011年に脳ドックを受診した健常者100名と,腎臓内科を受診し,腎代替療法未実施の明らかな神経学的異常がないCKD症例に,1.5テスラの脳単純MRIを撮像した.CKD例はstage G1~2:140例,G3:125例,G4:107例,G5:133例の計505例が試験に参加した.DSWMHは健常群の27例(27%),CKD群の295例(58%)に認められた.CKDでのDSWMH合併群は非合併群に比し,高齢・高血圧・高喫煙率・糖尿病合併・貧血であった.早期CKDのDSWMH合併率は健常群と変わらなかったが(G1~2:26%),晩期CKDになるにつれ合併率は高くなり(G3:59%,G4:74%,G5:78%),DSWMH病期進行例も増えた.さらに腎機能低下は年齢・性・糖尿病・血圧で調整した多変量解析においても,統計学的に有意であった(eGFR: p<0.01, オッズ比 1.01, 95%信頼区間 1.00‒1.03).腎機能低下はDSWMHの独立した関連因子と考えられた.

  • 板垣 寛, 小久保 安昭, 笹生 香菜子, 佐藤 慎治, 山田 裕樹, 佐藤 慎哉, 園田 順彦
    2017 年 28 巻 2 号 p. 273-279
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    MRI arterial spin labeling(ASL)法による非侵襲的脳循環評価法は汎用性と簡便性から注目されているが,arterial transit time の問題もあり,SPECTやPETといった既存検査と同等の信頼性は未だ確立されていない.本研究では,ASLが脳循環評価において反映している動態を明らかにするため,慢性虚血性脳血管障害症例20例に対しmultiple post-labeling delay(PLD)ASLと15O-PETの比較検討を行った.CBF/CBVおよびCBFとの相関ではPLD 1000および1500いずれのshort PLDでも有意に相関を認め,CBVとの相関でも負の相関を認めた.CBF左右差10%以上の変化に対する各PLDのROC解析の結果は,5 phase PLDの中でPLD 1000のarea under curve(AUC)が0.987(p=0.001)と最も高く,CBF左右差10%以上に対するカットオフ値はPLD 1000 ASL左右差31%以上で,感度100%,特異度93.3%であった.以上より,short PLD,とくにPLD 1000が脳灌流圧を反映している可能性を示唆された.この結果からASLが慢性虚血性脳血管障害症例における脳循環評価のスクリーニングとして有用であることが示された.

総説
  • 佐々木 雄一, 佐々木 祐典, 佐々木 優子, 中崎 公仁, 岡 真一, 浪岡 隆洋, 浪岡 愛, 柿澤 雅史, 本望 修
    2017 年 28 巻 2 号 p. 281-289
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    脳梗塞は本邦における要介護者の原因疾患第1位であり,新しい治療法の開発が望まれてきた.我々は骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)の移植が,脳梗塞を含む神経疾患に対して治療効果を発揮することを報告してきた.現在,基礎・臨床研究の良好な結果を受けて,自己培養MSCの静脈投与による医師主導治験を,脳梗塞および脊髄損傷に対して実施している.MSC移植の治療効果によって,失われた運動・感覚機能が回復する過程には,脳の可塑性の変化が大きく関わっていることが示唆されている.また,我々は実験的脳梗塞モデルに対するMSC移植にリハビリテーションを付加した結果,運動能力のさらなる回復が得られることを報告した.この基礎研究の結果から,MSC治療が臨床で実用化された暁には,再生医療におけるリハビリテーションの役割はますます重要になると考えられる.

シンポジウム 2 高次脳機能・精神機能の可視化
  • 山本 哲也
    2017 年 28 巻 2 号 p. 291-295
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    ニューロイメージングを用いた研究知見に基づくことで,うつ病の脳病態の精緻な理解や,可視化された脳病態に直接的に焦点をあてた新たな介入方法の開発につながる可能性が示唆されている.うつ病患者において,一貫して報告されている脳機能画像所見として,(1)外側部,眼窩部,内側部からなる前頭前野領域と,(2)扁桃体や海馬をはじめとした辺縁系領域における機能不全が挙げられる.これらの脳病態に対して有効性が期待される神経行動的(神経認知的)介入方法には,注意訓練や認知バイアス修正法,マインドフルネス瞑想などが考えられる.うつ病の生物学的メカニズムをターゲットにしたこのような介入方法は,治療効果の増大や適用範囲の拡大につながることに加え,容易・簡便に実施できるといった様々な可能性を有することが期待される.

シンポジウム 4 神経画像最前線
  • 日浦 幹夫, 成相 直, 牟田 光孝, 稲次 基希, 豊原 潤, 石井 賢二, 石橋 賢士, 我妻 慧, 坂田 宗之, 織田 圭一, 石渡 ...
    2017 年 28 巻 2 号 p. 297-302
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    運動介入が脳機能の保持・改善に重要な役割をもつことが疫学および臨床研究により提唱されてきた.運動が脳機能に及ぼす影響と関連する生理学的背景を探索する目的で,PETを活用して有酸素運動による局所脳血流量(regional cerebral blood flow: rCBF)と脳μ-オピオイド受容体系の変化を検討した.oxygen-15-labeled water(15O-H2O)を用いたPET研究では有酸素運動中に一次運動感覚野,小脳,島皮質などで広範な脳領域でrCBFが増加することが示され,このような変化は局所の神経活動の亢進や周辺の神経受容体への影響を介して運動による神経可塑性の発現のメカニズムに関与することが推測される.11C-Carfentanil を用いたPET研究では有酸素運動後に生じるポジティブな気分変化や激しい運動に伴う疲労の発現に辺縁系や下垂体に分布するμ-オピオイド受容体系が関与し,その変化には運動強度の違いや気分変化の個人間差が影響することが提示された.PETを活用した神経画像研究は,運動に伴う脳機能変化のメカニズムに関与する要因であるrCBFおよび神経受容体系の変化を検証するために有用な手法である.

  • 椎野 顯彦, 岩本 祐太郎, 韓 先花, 陳 延偉
    2017 年 28 巻 2 号 p. 303-308
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    Voxel-based morphometry(VBM)はMRI画像から脳の局所的な体積を統計学的に解析するもので,z値として画像表記する手法はSPECTにおけるeZIS(easy z-score imaging system)やiSSP(interface software of 3D-SSP)と共通している.今回我々はVBM統合ソフトであるBAAD(Brain Anatomical Analysis using Diffeomorphic deformation)に人工知能(AI(artificial intelligence))を搭載し,複数の関心領域の情報からアルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)である確率をADS(Alzheimer’s disease score)として提示させた.AIはRBF(radial basis function)カーネルによるSVM(support vector machine)を基本とし,スラック変数と境界マージン緩和の調整のための学習には北米のADNI(Alzheimer’s disease neuroimaging initiative)データベース(AD=314,健常者=386)を用い,交差検証にはleave-one-out法を用いた.これによるADSの正答率と検査後オッズは89.6%,134.1であった.適合性の評価としてオーストラリアのAIBL(Australian imaging, biomarker & life style flagship study of ageing)データベース(AD=72,健常者=447)を用いVSRAD(voxel-based specific regional analysis system for Alzheimer’s disease)と比較した.ADSの正答率と検査後オッズは86.1%と47.9で,VSRADの84.8%と14.9に比べて高い予測能力を示した.人工知能は多くの情報量を単純化することによって,日常診療における診断のサポートに役立つことが期待できる.本稿ではVBMの概要を紹介し,ADSの有用性についての検証結果を報告する.

新評議員
  • 大木 宏一
    2017 年 28 巻 2 号 p. 309-314
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    近年,脳梗塞の新規治療として細胞を用いた治療法が研究されている.細胞治療は,内在性の神経幹細胞を活性化させる方法と,何らかの細胞を体外から投与・移植する方法に大別される.前者に関しては,薬剤投与による活性化の研究が行われているが,さまざまな細胞の投与・移植によっても引き起こされることが判明している.後者に関しては,非神経系細胞の移植(間葉系幹細胞や血液単核球等)と,神経幹細胞の移植に分類される.非神経系細胞移植においては抗炎症効果や神経保護効果,内在性の神経新生促進効果が期待され,従来から使用・研究されている炎症修飾薬や脳保護薬に近い位置づけで使用されると考えられる.現在ヒトにおける臨床研究が進行中である.一方神経幹細胞移植は,前述の非神経系細胞移植と同様の機序も持っているが,それに加えneural replacement効果(移植細胞による損傷神経組織の置換)も期待でき,既存の治療とは一線を画す再生医療という側面が非常に強い.しかしながら,その実用化にはまだまだ解決すべき課題が残されている.今後は,既存の治療とさまざまな細胞療法を融合させ,各々の治療が適応となる症例を的確に選択することが必要になると考えられる.

  • 金澤 雅人, 高橋 哲哉, 小野寺 理, 下畑 享良
    2017 年 28 巻 2 号 p. 315-320
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    脳梗塞後遺症の機能を回復させる治療法の確立が望まれている.ミクログリアを保護的ミクログリア(M2)に変化させる低酸素低糖刺激(OGD)の条件を決定し,M2-likeミクログリアを亜急性期に投与することで,脳虚血後の機能予後を改善させることが可能かを検証した.初代ミクログリアの培養上清を試料として,血管内皮増殖因子(VEGF),トランスフォーミング増殖因子(TGF-β),およびマトリックス・メタロプロテナーゼ(MMP)-9活性を測定したところ,18時間のOGD後,M2極性となっていることがわかった.さらに,ラット一過性局所脳虚血モデルに対し,虚血7日後,M2-likeミクログリアを投与したところ,虚血中心の辺縁部におけるVEGF,TGF-β,MMP-9の発現は増加し,さらに同部位の血管新生,ペナンブラにおける軸索伸展は,非投与群と比べて促進され,虚血4週間後の機能を回復させた.OGDによりM2化したミクログリアを用いた細胞療法は,従来にない治療戦略になるものと考えられる.

  • 高橋 里史
    2017 年 28 巻 2 号 p. 321-325
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    脳血行再建術に際しては,どのような患者に対しどのような外科的治療が有用であるのか十分に評価することが重要である.この文脈において,急性期血行再建に際しては,どのような脳循環の状態の患者に対し,アルテプラーゼ静注のうえの血栓回収療法が有用であるのか,慢性期血行再建に際しては,どのような脳循環の状態の患者に対し,どのような血行再建術が有用であるのかを比較的簡便かつ定量的に理解できる評価法の確立は有用であると考える.これまでこの命題に対する答えを得るべくCT灌流画像を用いた脳血管障害患者における脳循環の解析を行って来たのでこれを報告する.

  • 寺尾 聰
    2017 年 28 巻 2 号 p. 327-331
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    ケモカインは白血球などの遊走を促して炎症形成に関与するサイトカイン群で,その一つRANTES(別名CCL5)は一般的にはT細胞・血小板・マクロファージ・内皮細胞などから分泌され,受容体CCR1, CCR3, CCR5を介してT細胞・単球などの遊走を促す.脳梗塞巣内では炎症性メディエーターの刺激でastrocyteやmicrogliaからもRANTESが産生され,炎症細胞の活性化や遊走に寄与する.また血管内では放出されたRANTESは血管内皮上のグリコサミノグリカンに沈着し,組織内へ炎症細胞を動員する「道しるべ」として機能する.一方で梗塞巣辺縁ではCCR3, CCR5を介してRANTESが神経保護的に作用するとの報告もあり,RANTESには神経障害的にも神経保護的にも働く多面性があると考えられる.その機能の解明が脳梗塞の新たな治療へつながると期待される.

  • 藤原 俊朗
    2017 年 28 巻 2 号 p. 333-336
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    脳循環代謝測定は,主に急性および慢性脳虚血における病態を把握するうえで重要な役割を果たしており,多くの研究が報告されている.一酸化炭素(carbon monoxide: CO)中毒においても慢性脳虚血でみられる貧困灌流と同様の状態であることが15O-PETを用いた研究で明らかにされていることから,これまで慢性脳虚血の病態解明および臨床応用に向けて開発されてきたMRIの撮像法や解析法がCO中毒へも応用できる可能性がある.当施設では,これまで3 Tesla MRI(3TMRI)のproton magnetic resonance spectroscopy(1H-MRS)から算出可能な脳温が脳循環代謝状態を反映することを明らかにしている.本稿では,この脳温をCO中毒患者において計測した結果について,脳循環代謝異常という観点から,その病態について述べる.

  • 丸山 博文
    2017 年 28 巻 2 号 p. 337-339
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    神経変性疾患における脳血流の評価は,その病態をさぐる意味で重要である.変性疾患のうち,脊髄小脳失調症6型とアルツハイマー病をとりあげて脳血流との関係を呈示する.脊髄小脳失調症6型と遺伝子診断で確定した患者において,小脳虫部・半球で脳血流は低下し,その程度は罹病期間と負の相関を示した.中大脳動脈虚血再灌流モデルにおいて3-repeat, 4-repeat両方のタウがリン酸化・切断による修飾を受け,アルツハイマー病での変化と類似していた.

  • 宮脇 哲, 今井 英明, 斉藤 延人
    2017 年 28 巻 2 号 p. 341-345
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    虚血性脳卒中(脳梗塞)の主要な原因の一つである頭蓋内主幹動脈狭窄はアジア人種に多い発症が知られており,遺伝的要因の関与が示唆されてきた.近年,もやもや病の疾患感受性遺伝子としてring finger protein 213RNF213)が同定された.我々はRNF213上の単一のミスセンス変異(c.14576G>A, p. R4859K, rs112735431)がもやもや病のみならず,様々な程度の頭蓋内主幹動脈狭窄に関連することを明らかにしてきた.この結果は,従来の画像所見や既往歴といった表現型を主体としたもやもや病や頭蓋内主幹動脈狭窄の診断基準・疾患概念のパラダイムに一石を投じる可能性がある.また,RNF213 c.14576G>A変異は一般の日本人の2%程度と比較的高頻度に存在する.日本の脳卒中の領域においては重要な遺伝的要因(リスクアレル)であると言える.RNF213 c.14576G>Aの遺伝子診断は,新たな脳卒中のリスク評価,より適切な診断・予防的加療につながる可能性がある.

  • 百田 義弘
    2017 年 28 巻 2 号 p. 347-351
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/25
    ジャーナル フリー

    我々は,マウス大脳皮質永久閉塞モデルを用い,梗塞巣に神経幹細胞〔傷害誘導性神経幹細胞(injury-induced neural stem cells: iNSCs)〕が誘導されることを発見し,これまでに報告してきた.さらに,最近,我々は一過性脳虚血/再灌流モデルを用い,致死的虚血負荷閾値を明確にすることで神経産生メカニズム,新生神経細胞の起源の解明を試みた.その結果,30分間以上の致死的虚血傷害下において神経産生能をもつiNSCSが誘導されることが明らかとなり,15分間の非致死的虚血傷害下においても細胞数は少ないもののiNSCsの誘導を認め,その起源は虚血負荷にて刺激を受けた脳ペリサイトであると考えられた.以上の所見は,iNSCsが一過性脳虚血病態下においても神経再生機転のターゲットとなり得ることを示しており,本稿では一過性脳虚血病態下におけるiNSCsに焦点をあてて概説する.

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