日本フットケア学会雑誌
Online ISSN : 2424-1350
Print ISSN : 2187-7505
ISSN-L : 2187-7505
17 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 松本 琴美, 上口 茂徳, 大平 吉夫, 佐藤 智也
    原稿種別: 原著
    2019 年 17 巻 3 号 p. 115-120
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    【要旨】〈背景〉シャルコー関節は,重度な変形により潰瘍発症リスクが高く,保存療法を選択する場合,装具が検討されることも多い.今回,装具療法が選択された潰瘍治癒後のシャルコー関節に対して,装着状況と再発の有無について調査した.〈対象と方法〉2011年1月~2018年3月に装具療法を開始した潰瘍治癒後のシャルコー関節罹患者26名.基本的情報(年齢・性別・身長・体重・BMI),人工透析の有無,装具介入時の病期,罹患部位,装着装具の種類,装着徹底の有無,再発(潰瘍の再発もしくは炎症の再燃)の有無について後方視的に抽出した.〈結果〉提案された装具の受け入れが得られた群(17名)に対し,受け入れが得られず他の種類の装具を装着した群(9名)は,装着徹底の有無・再発の有無において有意差を認めた.〈考察〉提案された装具への受け入れが得られない場合,装着の徹底も得られないことが多く,再発のリスクが高まることが予想されることから,装具療法に対するアドヒアランスを高めることが重要であると考える.

  • 平尾 由美子, 小笠原 祐子
    原稿種別: 原著
    2019 年 17 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    【要旨】訪問看護師による在宅療養者のフットケアの阻害要因と推進要因を明確化することを目的とした実態調査を2016年9月~10月に行った.全国750か所の訪問看護事業所に対して郵送法により245施設(32.7%)から回答が得られた.実施している高齢者へのフットケア内容の最多は「足の状態の観察」で,約96%の看護師が実施していた.爪切り,足浴,マッサージ等はいずれも80%以上である一方,「専門医との連携」は42%にとどまった.フットケアを行う対象は「リスクの高い対象者には必ず行う」と「全員について必ず行う」を合わせて85%にのぼった.困難と感じていることは,「ケア内容の選択」が最多で約45%,「かかりつけ医との連携」,「家族・介護職種へのケア内容の伝達」等がそれぞれ30%を超えた.課題と感じていることは,「療養者本人や家族のフットケアへの関心向上」,「ケア時間の確保」は50%台,「主治医のフットケアへの関心向上」は30%台であった.以上より,足の観察の実施率の高さがフットケアの推進要因と捉えられる.一方,ケア内容の選択困難,医師や関係職種との連携困難,関心の低さ,時間的制約等が阻害要因となっていることが明らかとなった.

研究報告
  • 斎藤 正子, 高草木 由里, 神宮 彩子, 山賀 理恵, 綿貫 基子, 秋山 滋男, 宮崎 宏貴, 青木 智之, 荻原 貴之
    原稿種別: 研究報告
    2019 年 17 巻 3 号 p. 128-132
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    【要旨】当院の内分泌・糖尿病内科では,2009年3月より本格的にフットケアを開始し2018年6月までにのべ2,000件のフットケアを実施している.その対象患者のなかには,身体機能の低下,足白癬治療の自己中断,内服薬の飲み忘れ等,認知症が疑われる患者が見受けられるようになったことから,当院内分泌・糖尿病内科外来,循環器内科外来に通院中の患者のうち同意を得られた50名に対し服薬状況のアンケートと65歳以上の患者に認知機能検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)を実施した.今回の検討では,年齢,認知機能に関係なく内服・注射治療の遵守率は高い傾向であったのに対し足の観察および足白癬治療の遵守率は不十分な傾向であることが示された.また,認知機能の低下の有無にかかわらず「内服,注射を忘れない」,「足白癬治療を忘れる」と回答した患者が有意に多かった.内服・注射を忘れることが少ない背景として長期治療による習慣化,家族の協力,訪問看護による内服・注射の支援といった要素があり,足白癬治療を忘れることは認知機能の低下によるものではなく,疾患治療に対しての教育不足の可能性が示唆された.

症例・実践報告
  • 江尻 加奈子, 森田 真麻
    原稿種別: 症例・実践報告
    2019 年 17 巻 3 号 p. 133-139
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    【要旨】A病院のフットケア外来は,足のセルフケア自立に難渋した継続患者が多いことで新規患者の受け入れが困難であった.そこで,フットケア外来で足のセルフケア自立支援を重視した「初回足評価,2回目セルフケア指導,3回目総合評価の3回プログラム制」を導入した.導入前後の患者受診状況を診療録より後方視的に調査し,新規患者の受け入れと受診状況,プログラム導入後の足のセルフケア自立支援状況を明らかにした.フットケア外来を受診した新規患者数は,導入前6年間が70人,導入後2年間が62人であった.導入前後で患者属性(年齢,性別,足病変リスク分類)に有意差はなかったが,受診状況は平均受診回数(導入前12.0±12.0,導入後3.0±2.0)と転帰:中断と終了の比率(中断,導入前27人38.6%,導入後3人4.8%)に有意差があり,プログラム制導入後は同一患者の受診回数が少なく,中断率も低下していた.導入後のセルフケア自立支援では全体の3割に患者だけでなくサポート者等への指導や活用の提案をしていた.フットケア外来の「3回プログラム制」は,同一患者の受診回数,継続率を減少させ,患者の足のセルフケア自立に効果的であった.

  • 中山 広譜, 坂元 博, 寺部 雄太, 安藤 弘
    原稿種別: 症例・実践報告
    2019 年 17 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    【要旨】重症下肢虚血(critical limb ischemia : CLI)の治療には血行再建が必須である.しかし微小循環が改善しない症例や疼痛が軽減しない症例を経験することがある.過剰で慢性的な痛みはその部位の血管収縮を起こし,さらなる血流不全を起こすと報告されている1).そのため当院では疼痛のコントロールを目的に2015年1月から脊髄刺激療法(spinal cord stimulation : SCS)を開始した.評価の内容はNRS(numerical rating scale),鎮痛剤の頓服回数,創部の状態をそれぞれSCS挿入前後で比較検討した.また,血流の改善の評価として皮膚灌流圧(skin perfusion pressure : SPP)も同様にSCS挿入前後で比較検討した.統計学解析は,Wilcoxonの符号付順位和検定で有意水準は5%未満とした.SCS挿入前後でNRSは平均70±16%の軽減を認め,有意差を示した(p=0.018).また,鎮痛剤の頓服回数は平均55±12%の軽減を認めた.全症例で疼痛改善を認めており,CLIにSCSの疼痛コントロールの効果がある可能性が示唆された.SPPに関しては有意差を示す所見は認めなかったが創部の状態に悪化は認めなかった.血流に関しては数カ月の長期留置で効果があるといわれており2),今後は長期継続型の症例でさらに効果を検討していく必要がある.

  • 濵野 初恵, 伊東 克晃, 中曽根 泰人, 岩本 隆, 小橋 親晃, 浦風 雅春
    原稿種別: 症例・実践報告
    2019 年 17 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    【要旨】70代,男性,維持透析患者.20XX年4月,左中足骨胼胝下潰瘍と皮膚科で診断・治療介入されるも改善が認められず,10月,糖尿病看護認定看護師に介入依頼.足関節上腕血圧比は右1.02左1.00,皮膚灌流圧は右足背130mmHg,左足背78mmHg,知覚神経障害や運動神経障害による足変形が出現していた.フットウェアの見直しが必要と考え,理学療法士とともに足の再評価を行った.歩行観察より,左胼胝部への荷重ストレスが増大していると考えられた.そこで左立脚期における安定性を確保しつつ,歩行時の左足底圧軌跡が足底内側を通過,さらに蹴りだしを促通させ,左胼胝部への除圧を目的に,パッドを用いた簡易型フットウェアを作製した.介入から1年後,胼胝下潰瘍は治癒へと至った.フットケアの重要性が認識されつつある一方,理学療法士のかかわりが希薄であることが指摘されている.しかし,中規模病院かつ設備が不十分な環境においても,認定看護師と理学療法士との連携によって効果的な治療へとつながった.足の治療・ケアは,より多職種による介入や知恵の集合が必要となる医療分野であり,患者の足を観察する機会の多い看護師には,“つなぐ”といった各職種の専門性を意識し,実践する役割が求められる.

シリーズ:スキンケアと外用薬
フットケア指導士による実践報告リレー
学会報告
feedback
Top