【要旨】サルコペニア・フレイルは末梢動脈疾患(peripheral artery disease, PAD)の発症・進展因子である.特に,慢性腎臓病(chronic kidney disease, CKD)患者は保存期からサルコペニア・フレイルを高率に合併するため,歩行機能を維持・向上するためにはこれら老年症候群を早く見つけて介入することが重要となる.食事・栄養面からは,ロイシンを中心とした分岐鎖アミノ酸とビタミンDの摂取が有用である.一方で,CKD 患者は標準的なたんぱく質制限(0.6~0.9g/kg標準体重/日)が推奨されている.しかし日本人高齢者において,eGFR が 45~59 ml/min/1.73m²で蛋白尿<0.15 g/g Cr(ステージG3aA1)の場合には,腎不全の進行および心血管病の合併リスクはそれほど高くない.したがって,特に本ステージの高齢者では一律なたんぱく質制限は指導せず,サルコペニア・フレイルのリスクと低たんぱく食のアドヒアランスを考慮した上で,個別に対応する必要がある.現在,本邦ではサルコペニア治療薬は承認されていない.しかし,骨粗鬆症治療薬であるビタミンD製剤は,特に血清 25(OH)D 濃度が低下(<25 nmol/l)している女性において,歩行速度や運動機能を改善させることが報告されている.
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