日本フットケア学会雑誌
Online ISSN : 2424-1350
Print ISSN : 2187-7505
ISSN-L : 2187-7505
16 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集:歩行維持を目指したフットケア~運動と栄養・薬物療法の融合
  • 若林 秀隆
    2018 年 16 巻 4 号 p. 171-176
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    【要旨】フットケアを要する足病患者では,低栄養やサルコペニアを認めることが少なくない.そのため,足病患者にはリハビリテーション(以下,リハ)栄養の考え方が重要である.リハ栄養とは,国際生活機能分類による全人的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養摂取の過不足の有無と原因の評価,診断,ゴール設定を行ったうえで,障害者やフレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・栄養素摂取・フレイルを改善し,機能・活動・参加,QOL を最大限高める「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」である.質の高いリハ栄養の実践には,リハ栄養ケアプロセスが有用である.特に従来からの栄養ケアマネジメントに存在しない,リハ栄養診断とリハ栄養ゴール設定のステップが重要である.リハ栄養介入では,レジスタンストレーニングと BCAA(分岐鎖アミノ酸)を近いタイミングで摂取することが望ましい.一方,リハ薬剤とは,フレイル高齢者や障害者の機能・活動・参加,QOL を最大限高める「リハからみた薬剤」や「薬剤からみたリハ」である.すべての足病患者に低栄養,サルコペニア,ポリファーマシーの存在を疑って,必要な場合にはリハ栄養とリハ薬剤を実践してほしい.

  • 加藤 明彦
    2018 年 16 巻 4 号 p. 177-181
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    【要旨】サルコペニア・フレイルは末梢動脈疾患(peripheral artery disease, PAD)の発症・進展因子である.特に,慢性腎臓病(chronic kidney disease, CKD)患者は保存期からサルコペニア・フレイルを高率に合併するため,歩行機能を維持・向上するためにはこれら老年症候群を早く見つけて介入することが重要となる.食事・栄養面からは,ロイシンを中心とした分岐鎖アミノ酸とビタミンDの摂取が有用である.一方で,CKD 患者は標準的なたんぱく質制限(0.6~0.9g/kg標準体重/日)が推奨されている.しかし日本人高齢者において,eGFR が 45~59 ml/min/1.73m²で蛋白尿<0.15 g/g Cr(ステージG3aA1)の場合には,腎不全の進行および心血管病の合併リスクはそれほど高くない.したがって,特に本ステージの高齢者では一律なたんぱく質制限は指導せず,サルコペニア・フレイルのリスクと低たんぱく食のアドヒアランスを考慮した上で,個別に対応する必要がある.現在,本邦ではサルコペニア治療薬は承認されていない.しかし,骨粗鬆症治療薬であるビタミンD製剤は,特に血清 25(OH)D 濃度が低下(<25 nmol/l)している女性において,歩行速度や運動機能を改善させることが報告されている.

  • 伊藤 友一
    2018 年 16 巻 4 号 p. 182-187
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    【要旨】高齢者の歩行維持を目指したフットケアには,運動療法や物理療法,装具療法,手術療法,薬物療法,バランスのとれた栄養指導,生活環境改善指導などが挙げられる.今回,リハビリテーションおよびフットケアにおける漢方薬の役割について概説する.漢方医学は,患者さんの訴えをよく聞き,実際に体に触れて診断することを重視している.これは,フットケア治療に共通しており,比較的馴染みやすい診断学と思われる.漢方を使用していると主な症状と別の症状も良くなって,長く使用を希望するといった副産物もみられるのも特徴である.高齢者の歩行維持を目指したフットケアには,医療経済的にも安価な漢方薬の果たす役割は大きいと思われる.

  • 池田 清子
    2018 年 16 巻 4 号 p. 188-192
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    【要旨】フットケアの第一の目的は,足のハイリスク疾患をもつ患者の切断を回避し,より快適な日常生活を送れるように援助することである1).この目的を達成するために,医療職,介護職,家族,ケアスタッフ等が連携し,患者の歩行を守る実践を続けている.フットケアには,アセスメント,検査・治療,角質コントロール(爪切りを含む),清潔ケア,履物の調整,セルフケア指導,心理的ケア,社会資源の活用などがある.フットケアにより期待される効果の1つとして,バランス機能の維持があげられる.足底に胼胝が形成されたり角質が肥厚したりすると,地面の状態を感知する足底の触覚細胞のセンサーを鈍らせ,バランス機能が低下することが示唆されている.したがって,定期的な足底の角質除去やマッサージ,足趾や足部の筋肉を使った運動,インソールや靴の変更などにより足底のセンサーの働きを回復させることが期待できる2).また足のハイリスク疾患やハイリスク群には,糖尿病,動脈硬化性疾患,骨関節系疾患等と高齢者があげられる.これらのハイリスク群を対象にしたフットケアの効果として,糖尿病の患者では足白癬症と胼胝が減少すること,高リスク群の糖尿病患者では胼胝の影響による足潰瘍の発生がみられなかったこと3),高齢者では転倒予防のリスクの低減4),長期療養施設で生活している高齢者では皮膚の状態および足部と足趾の清潔状態が改善し,フットケアに関する認識も一部改善したとの報告5)がある.このように看護師が行うフットケアにはさまざまな効果が明らかにされているが,本稿では,歩行維持を目指したフットケアに焦点をあて,その意義やフットケアについて概観する.

総説
  • 出口 尚寿
    2018 年 16 巻 4 号 p. 193-199
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    【要旨】糖尿病性神経障害は糖尿病発症後早期より高頻度にみられる合併症であり,その重症化は糖尿病足病変のリスクとなる.発症には,高血糖に起因する種々の代謝異常が関与するが,最近の研究では,高血糖以外にも,1 型,2 型糖尿病により異なる機序も想定されている.糖尿病性神経障害では,両足のしびれや痛み(陽性症状)が問題となるが,患者も主治医も気づかないうちに感覚低下(陰性症状)や自律神経障害が悪化し不幸な転帰をとる症例も少なくない.このため,早期診断と成因に対する治療介入が重要となる.わが国では,問診,アキレス腱反射,振動覚検査による「糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準」が提唱されているものの,広く一般的に行われていない現状がある.国際的には,簡易診断基準の項目に加え,温痛覚検査とモノフィラメント検査の実施も推奨されているが,まずは,すべての糖尿病患者で簡易診断を実施することが糖尿病患者を診る医療者に求められる.

  • 青木 文彦
    2018 年 16 巻 4 号 p. 200-207
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    【要旨】陥入爪と巻き爪は一般診療所においても診察の機会の多い疾患であり,それを扱う診療科も多岐にわたる.しかしながら,これらの疾患が異なる病態であることは,充分に理解されているとはいえない.陥入爪は男女ともに若年者に多く,陥入爪準備状態の爪に対して様々な外因によって引き起こされる一過性の病態といえる.一方,巻き爪は中・高年齢の女性に多く,爪そのものが様々な原因により変形していく継続的な病態と考えられる.

実践報告
  • 堀口 真弓, 大澤 葉子, 山浦 小百合, 野溝 明弘
    2018 年 16 巻 4 号 p. 208-212
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    【要旨】当施設の通院透析患者 172 人中,巻き爪のある患者は 32 人であり,その内,糖尿病または 70 歳以上である患者は 65.6% であった.糖尿病及び高齢者は足趾潰瘍のハイリスク群であり,巻き爪による足趾の損傷はできるだけ回避する必要がある.早期に適切な介入をすることにより巻き爪による足趾の創傷を防止することを目的に,看護師でも扱える巻き爪矯正具,巻き爪ロボと巻き爪ブロックを導入した.巻き爪ロボによる矯正では殆どの症例が処置開始初回で爪の皮膚への陥入は解除できた.多くの巻き爪症例は爪の根元から変形しており,矯正後 1 週間前後で元の形状に戻る傾向がみられたが,処置を繰り返し継続することで爪甲の弯曲は徐々に矯正され,皮膚への陥入を解除することが可能であった.透析時間を利用した今回の巻き爪矯正方法は合理的で有効な方法である.

シリーズ:元気に歩けるための足と歩行を守る靴
フットケア指導士による実践報告リレー
学会報告
feedback
Top