老化に伴う疾患を克服することは人類の有史以来の願望であり、多くの試みが積み重ねられてきた。とりわけ、最近の進展はめざましく、その突破口が開かれようとしている。我々は挿入突然変異によって多彩な老化症状を呈する Klotho マウスを樹立し、原因遺伝子 Klotho を同定した。遺伝子は、腎臓、中枢神経系で発現しているが、骨、皮膚、胃などの強い変異症状が観察される臓器で Klotho 遺伝子の発現が観測されず、Klotho 蛋白の機能を伝える液性因子の存在が示唆された。ヒト相同遺伝子は同様のI型膜蛋白質と分泌型蛋白質をコードしている。Klotho がターゲット組織、分子に結合し、機能していることが推定されるが、Klotho が β-Glucosidase に相同性が高いことから、活性酸素によって不活性分子の活性化に関わる可能性も残されており、検討中である。ヒトKlotho遺伝子座(13q12)に変異を持つ遺伝性疾患の存在や遺伝子多型については特筆すべき変異を見いだしてはいない。しかし、Klothoマウスの変異表現型と類似の症状をもつ腎透析患者においてKlotho遺伝子の発現が顕著に低下している。この事実はヒトにおけるKlotho遺伝子産物の重要性を示唆していると思われ、今後の発展が期待される。
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