滝ノ上(葛根田)地熱地域の地質は大きく4つに区分でき,それらは中新統雫石層群,葛根田層群,玉川溶結凝灰岩類および新期火山噴出物である。この地域の地熱流体は雫石層群の断層や褶曲に伴う断裂に胚胎している。褶曲形態や付随する断裂の解析を行うと,背斜部分はbendingとflexural flowの組合せによる機構によって特徴づけられ,向斜部分はflexural slipを伴ったbucklingによって形成されたことが判明した。これら相反する褶曲形成機構は先第三系基盤の傾動運動と東西圧縮応力の組合せによって説明できる。このような地下構造の場合,どのような場所に断裂ができやすいかを,地表の構造解析によって推定し,地熱坑井における掘さく時の逸泥の検討,産出指数の計算およびトレーサー試験等によって確認した。その結果,葛根田断層や北西―南東あるいは北東―南西方向の断層のような大きな断層,向斜構造のtroughおよび背斜を除いた部分での泥質岩と他の岩石との境界地層面で浸透率が高いことが判明した。
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