伊豆沼・内沼研究報告
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10 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 森 晃, 田村 将剛, 藤本 泰文
    2016 年 10 巻 p. 1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー

    伊豆沼・内沼では,沈水植物の復元を目的とした土壌シードバンクからの発芽試験を2011年から実施してきた.発芽試験で発芽した個体を精査したところ,伊豆沼で採取した底質から1個体のムサシモNajas ancistrocarpa を確認した.ムサシモは,国や各県で絶滅危惧種に指定されている沈水植物である.今後は,ムサシモの系統保存のため,土壌シードバンクが寿命を迎える前により多くのムサシモを確保することや,復元に向け,沼の水質や底質の改善が重要となるだろう.

  • 丸野 慎也, 浜端 悦治
    2016 年 10 巻 p. 9-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー

    浅い湖沼では,沈水植物群落(以下,水草群落と呼ぶ)が植物プランクトン量の増加を抑えることで水質が改善される.1994年に大渇水が起こり,琵琶湖南湖の水深が大きく低下した.この水位低下が湖底付近の光環境を改善し,水草の生長を促した.水草が増えたことで透明度が上昇し,さらに水草の生長を促し,過剰繁茂を引き起こした.過剰に繁茂した水草は水面を漂い,湖岸に漂着して腐敗し悪臭を放ったことや,船が航行障害を起こすなどの問題が発生した.滋賀県は2011年から水草刈り取り事業を本格的に開始した.我々はこの事業が水草群落に及ぼす影響を明らかにするために魚群探知機を用いて航行調査を行なった.調査は2010年(水草刈り取り事業前)と2012年,2013年に行なった.南湖に10本の測線を1,600 m間隔で東西方向に設定し,魚群探知機を搭載した船で測線上を航行した.魚群探知機で得られた映像に基づいて,水草群落を40 mごとにクロモHydrilla verticillata 群落,センニンモPotamogeton maackianus 群落,2種の混合群落の3タイプに分けた.同時に群落高と水深も記録した.群落タイプと群落高に基づいて,それぞれの地点における現存量の推定値を算出した後,800 mごとに平均値を求めた.そして得られた800 mごとの平均値から,南湖の現存量およびPVI(%)(水草が水塊に占める割合を100分率で表したもの)の分布図をGISを用いて作成した.南湖の現存量とPVI(%)は,2010年が12,757 ± 1,513 tおよび32.8%,2012年が4,236 ± 1,255 tおよび17.1%,2013年が7,836 ± 1,553 tおよび25.7%であった.これらの結果から,現存量とPVI(%)は2010年から2012年にかけて大きく低下したが,2013年には回復したことがわかった.この結果には,刈り取り面積と南湖の水質が関係していると考えられる.2012年の南湖の水質を調べたところ,透明度は2010年,2013年と比較して有意に低く,植物プランクトン量の指標であるChl-aは2013年,2010年と比較して有意に高かった.今回の調査では水質が根こそぎ除去の効果を決める要因とは結論付けられなかった.しかし,水草の現存量の変動には除去面積と植物プランクトン量が関わっていることが示唆された.

  • 上田 紘司, 芦澤 淳, 藤本 泰文, 嶋田 哲郎
    2016 年 10 巻 p. 21-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー

    宮城県北部の伊豆沼・内沼およびその周辺地域において2014年にトンボ目の成虫を対象とした定性調査を行なった.本調査では,10科37種のトンボ目成虫の生息が確認され,このうち3種は新たに確認された.過去の調査では合計10科44種のトンボ目成虫が確認されている.過去の調査で確認され,今回の調査で確認されなかった10種のうち7種は,宮城県レッドリスト又は環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されている種であった.これらの結果から伊豆沼・内沼およびその周辺地域には,30種以上のトンボ目が生息可能な環境が現在も残ってはいるものの,環境変化に弱い絶滅危惧種からトンボ目が姿を消しつつある状況にあると言える.

  • 青山 茂, 土井 敏男
    2016 年 10 巻 p. 39-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー

    飼育下でナガレホトケドジョウを産卵させるためのより簡便な管理方法を検討するため,前年5月から照明時間を1日12時間とし,前年12月から水温約8℃で飼育されていた雌雄を3月1日に6個の水槽に1ペアずつ入れ,水温だけが自然上昇する条件下で産卵するか調べた.その結果,水温が上昇する中で3月中に6ペアすべてが産卵を開始した.各ペアは2~20日間隔で3~13日産卵し,産卵期間は9~72日間であった.各ペアの初産卵日の水温については15.1~16.5℃,最終産卵日の水温については15.5~22.1℃であった.1産卵日の産卵数は2~184個,1産卵期間の総産卵数は147~683個であった.これらの産卵結果では上限水温を約15℃に固定して産卵させた既報と大きな差は見られなかった.

  • 斉藤 憲治, 藤本 泰文, 森 晃
    2016 年 10 巻 p. 49-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー

    2015年7月から12月にかけて,伊豆沼・内沼とその集水域において採捕されたゼニタナゴ32個体のミトコンドリアDNAの配列を解析した.伊豆沼・内沼では少なくとも2000年以降に本種の記録はなかった.解析した個体は伊豆沼・内沼周辺に特有の遺伝子型のみを持ち,東北地方に広くみられる遺伝子型を持たないという特徴を示した.このような遺伝的特徴を持つ集団は伊豆沼・内沼周辺にはみられないので,その由来が人為的なものでなければ,Hap2とHap3を持ち,Hap1などが稀か全くみられないような,伊豆沼・内沼周辺水域に特徴的で,なおかつハプロタイプ構成が未調査の集水域集団が流下したものであろう.

  • 長谷川 政智, 森 晃, 藤本 泰文
    2016 年 10 巻 p. 59-66
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー

    宮城県北部の河川・水路ならびにため池で2014~2015年に淡水エビ類の分布調査を実施した.調査の結果,在来種のスジエビPalaemon paucidens に酷似したエビを確認し,同定したところ,その形態的特徴から,外来種のPalaemonetes sinensis であることを確認した.今回,2箇所の調査地でP.sinensis の生息を確認し,再生産して定着していることも確認した.宮城県においてP.sinensis の発見とその定着を確認した報告は初めてである.

  • 星 雅俊, 藤本 泰文, 嶋田 哲郎, 森 晃, 芦澤 淳
    2016 年 10 巻 p. 67-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー

    伊豆沼・内沼の湖岸で確認された特定外来生物に指定されているオオハンゴンソウ Rudbeckia iaciniata の2つの群落に対する駆除活動を実施した.本研究では,オオハンゴンソウの駆除活動で使われる刈払いと抜取りの2つの駆除手法に着目し,両者の特長を組み合わせた駆除活動を2013年から2015年にかけて実施した.その結果,2013年の駆除開始前にはそれぞれ689本と421本あった2つの群落の株数は,2015年にはそれぞれ42本(6.1%)と13本(3.1%)に減少した.また,駆除活動に必要な作業努力量も3年間で約4分の1に減少した.この駆除活動を継続して実施することで,オオハンゴンソウ群落の株を効果的に抑制できる可能性が示された.

  • 平藪 直樹
    2016 年 10 巻 p. 77-80
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/07
    ジャーナル フリー

    今回,琵琶湖南湖で捕獲されたオオクチバスの胃内容物からミシシッピアカミミガメが確認されたことを報告する.オオクチバスは,滋賀県による電気ショッカーボートを用いた外来魚駆除活動中に琵琶湖南湖の赤野井湾において捕獲されたものである.このオオクチバスは標準体長が388 mmの雄であった.胃内容物からはミシシッピアカミミガメのみが見つかり,その背甲長は45 mm,体重は21 gであった.

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