山梨県にある琴川ダム貯水池において2019 年6 月にコクチバスの定着が確認された.ダムの常時満水位は標高1,453.5m であり,国内で本種の定着が確認された水域としては,最も標高が高い.本研究では,コクチバスの生息状況を把握すると共に,駆除結果にもとづいた順応的な管理手法について検討した.2020 年の4 月から10 月にかけて,3 種の手法(刺網・水中銃等・釣り)でコクチバスを採捕した.コクチバスは640 個体採捕され,最も採捕数が多かった駆除手法は刺網で,CPUE も他の手法より有意に高かった.他水域と比較するとコクチバスの成長は遅く,雌は全長20cm より産卵可能と考えられた.産卵親魚,未成魚の出現状況を踏まえると,表層水温が12℃を超える5 月中旬から7 月中旬までは全長20cm を超える産卵親魚を対象とした目合の粗い刺網,7 月中旬からは未成魚を対象とした目合の細かい刺網を多く使用し,翌年の繁殖個体を減らすことが生息数を低減させる駆除手法として最も効果的と考えられた.また,琴川ダム貯水池においては,水位変動が大きく湖底に礫地が多いため,潜水目視調査で産卵床が非常に見つけにくいことが明らかとなった.他の効率的な産卵床の発見方法,または浮上仔稚魚の駆除手法が必要と考えられた.
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