伊豆沼・内沼研究報告
Online ISSN : 2424-2101
Print ISSN : 1881-9559
ISSN-L : 1881-9559
16 巻
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 田和 康太, 槐 ちがや, 中村 圭吾
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 1-9
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,利根川水系小貝川支流の大谷川において季節的に形成された小規模な河道内湿地(たまり)に着目し,そこに生息する水生動物群集を8 月に調査した.調査の結果,たまりではホソセスジゲンゴロウ成虫やヒメガムシ成虫,ニホンアマガエル,トウキョウダルマガエルなどの在来の止水性水生動物が採集された一方で,採集個体数の大半は環境省により生態系被害防止外来種に指定されているカラドジョウとアメリカザリガニで占められた.大半のカラドジョウについては,その体長分布から2020 年の繁殖期に生まれた当年個体と推察された.カラドジョウやアメリカザリガニは湿地生態系への負の影響が指摘されていることから,本調査地のようなたまりは在来の湿地性水生動物群集の生息場所となる一方で,湿地性外来種の温床ともなりうることを認識する必要がある.

  • 加藤 将, 薄葉 満
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 11-19
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    主に湖沼やため池に生育する車軸藻類であるオオシャジクモChara corallina Klein ex Willd. var. corallina は,近年各地で減少,消滅している希少種であり,環境省レッドリストでは1997 年以降絶滅危惧I 類(CR+EN)に指定されている.伊豆沼では,多くの水生植物調査が報告されており,かつては30 種以上の水生植物が生育していたことが記録されているが,車軸藻類に関する記録はほとんどない.著者らは過去の伊豆沼で採集された標本より,これまで同湖沼で未報告だったオオシャジクモを発見した.標本は著者の一人が1992 年に行った水生植物調査で付随的に得られたものであり,本研究の形態観察により本種と同定された.現在の伊豆沼では,オオシャジクモを含め車軸藻類は消滅している可能性が極めて高いが,過去の伊豆沼における車軸藻類を知る上で貴重な発見であることからここに報告する.

  • 志田 嘉幸, 川井 唯史
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 21-32
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    新潟県阿賀町阿賀では外来ザリガニが報告されている.本研究では外部形態の観察から,この外来ザリガニをウチダザリガニ(学名 Pacifastacus leniusculus)と同定した.ザリガニに付着する随伴生物としてヒルミミズ類のシグナルヒルミミズSathodrilus attenuatus が見つかった.シグナルヒルミミズは,日本に定着しているウチダサリガニうち,北海道,福島県,新潟県,千葉県に分布する個体群で記録されている.これらのうち,今回,外来ザリガニが確認された新潟県に隣接する福島県では分布域が拡大している.ウチダザリガニの由来は,阿賀野川の上流域にあたる福島県に分布する個体の自然流下か不法放流の可能性が考えられる.

  • 速水 裕樹, 藤本 泰文
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 33-38
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    世界の侵略的外来種ワースト100 に指定されているホテイアオイが,伊豆沼の北岸で1,140 株確認され,定着を防ぐため駆除した.本種は繁殖力が強く,6 月上旬に1株が侵入しただけでもこの数に増加すると推測された.本種は低温に弱いことから,現在の伊豆沼の気候で定着する可能性は低いと考えられた.しかし,今後の温暖化シミュレーションを適用したところ,2076 年~2095 年には本種が定着可能な温度条件になると予測され,侵入監視および侵入が確認された際の初期防除の重要性が示された.

  • 田部田 勉, 穂刈 裕一, 齋藤 息吹, 本多 里奈, 高橋 雅雄
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 39-46
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    魚食性大型鳥類であるカワウは,繁殖分布と生息個体数が全国的に急増し,内水面漁業へ大きな被害を与えている.東北地方は近年急増中の地域で,各県で被害対策が実施されているが,カワウの生息状況に関する基礎的な情報は多くの県で明らかではない.2021 年に岩手県全域でカワウの繁殖分布と営巣数を調べた.その結果,6 ヶ所のコロニーで計412 巣の営巣を確認し,その90%以上は北上川水系にある2 ヶ所のコロニーに集中していた.いずれも数年以内に新設されており,県内の複数のコロニーが人為的攪乱によって近年消失したために成立したと推察された.

  • 山内 雄大 , 川井 唯史
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 47-62
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    北海道東部には外来種ウチダザリガニPacifastacus leniusculus が分布し,環形動物ではシグナルヒルミミズSathodrilus attenuatus だけが共生する.一般的にヒルミミズ類は塩分耐性が低く,釧路市街地の汽水湖である春採湖ではウチダザリガニに共生しているシグナルヒルミミズの個体数は極めて少ないことが知られている.そこで本研究では,春採湖周辺の淡水湖沼に定着したウチダザリガニについて,水域間でのシグナルヒルミミズの共生状況の調査および塩分耐性実験を行い,これらにもとづき分布拡散経路を推定し,さらに推定を補完するために史料収集および聞き取り調査も行った.釧路川茅沼地区で採集したウチダザリガニには,1 個体あたり平均で34.4 個体のシグナルヒルミミズが共生していたのに対し,春採湖の近くの鶴ヶ岱公園にある淡水環境のひょうたん池ではシグナルヒルミミズの共生は確認されなかった.塩分耐性実験では30‰と15‰の海水に入れたシグナルヒルミミズは1 時間以内に死亡し,10‰の海水に入れた個体は約4 時間後に死亡したが,5‰と0‰の海水に入れた個体は死亡しなかった.以上の結果と史料収集および聞き取り調査の結果を合わせ,次のとおりウチダザリガニの分布拡散経路を推定した.釧路市郊外からシグナルヒルミミズが共生した個体が釧路市街地の春採湖水系に最初に持ち込まれ,シグナルヒルミミズは汽水の塩分に耐えられず消失した後に,ひょうたん池に持ち込まれたと考えられる.

  • 堀江 真子, 伊藤 玄
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 63-72
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    2021 年11 月に岐阜県美濃市の用水路から74 個体のメダカ類が採集された.採集されたメダカ類の形態的特徴を観察したところ,このうち24 個体は,背側に虹色素胞が集まり光る形質(体外光)を有していた.この形態的特徴は,体外光メダカ(幹之メダカ)の特徴と一致したため,観賞魚メダカであると判断された.また,青体色のメダカ(青メダカ)や体側面に虹色素胞が集まり光る鱗を多数有するメダカ(ラメメダカ)などの観賞魚メダカも採集された.採集された個体は,市場価値の低い特徴も観察されたため,育種選抜時に不要となり,野外に遺棄された個体であると推測された.

  • 伊藤 寿茂, 崎山 直夫
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 73-78
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    2022 年4 月に本州中部(神奈川県)の相模川下流域で,ミナミアシハラガニPseudohelice subquadrata (Dana,1851)(イワガニ上科モクズガニ科)の亜成体の雄1個体を採集した.本種はインド太平洋の熱帯・亜熱帯域に分布することが知られているが,本州では稀である.本報は本種の相模川からの初記録であるとともに,本種の北限記録となる.

  • 谷沢 弘将, 大浜 秀規, 青柳 敏裕
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 79-95
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    山梨県にある琴川ダム貯水池において2019 年6 月にコクチバスの定着が確認された.ダムの常時満水位は標高1,453.5m であり,国内で本種の定着が確認された水域としては,最も標高が高い.本研究では,コクチバスの生息状況を把握すると共に,駆除結果にもとづいた順応的な管理手法について検討した.2020 年の4 月から10 月にかけて,3 種の手法(刺網・水中銃等・釣り)でコクチバスを採捕した.コクチバスは640 個体採捕され,最も採捕数が多かった駆除手法は刺網で,CPUE も他の手法より有意に高かった.他水域と比較するとコクチバスの成長は遅く,雌は全長20cm より産卵可能と考えられた.産卵親魚,未成魚の出現状況を踏まえると,表層水温が12℃を超える5 月中旬から7 月中旬までは全長20cm を超える産卵親魚を対象とした目合の粗い刺網,7 月中旬からは未成魚を対象とした目合の細かい刺網を多く使用し,翌年の繁殖個体を減らすことが生息数を低減させる駆除手法として最も効果的と考えられた.また,琴川ダム貯水池においては,水位変動が大きく湖底に礫地が多いため,潜水目視調査で産卵床が非常に見つけにくいことが明らかとなった.他の効率的な産卵床の発見方法,または浮上仔稚魚の駆除手法が必要と考えられた.

  • 福田 亘佑, 藤本 泰文
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 16 巻 p. 97-104
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

    2021 年5 月に伊豆沼・内沼でナマズの黄変個体が小型定置網により採捕された.採捕された個体は全長681mm と大型であり,魚体の大部分が黄変していた.その後,屋外暗所での飼育中に黒色部が増加,屋内明所に移した後は黄色部が増加した.黄変個体の体色は飼育環境に応じて変化し,飼育100日後には完全な黄変個体となった.伊豆沼・内沼では,オオクチバス駆除活動により,様々な魚類の個体数が回復し始めている.今回の採捕された黄変個体もナマズの個体数が回復した結果,出現したと考えられる.

  • 原稿種別: 訂正
    2022 年 16 巻 p. 105
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: その他
    2022 年 16 巻 p. 106
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー
feedback
Top