発達支援学研究
Online ISSN : 2435-7626
4 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 杉山 文乃, 澤江 幸則
    2024 年4 巻2 号 p. 41-59
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、成人期自閉スペクトラム症者(以下、成人期ASD者とする)の余暇としての運動・スポーツ実践における支援方法を検討するための知見を得るために、当事者の視点から、運動・スポーツに対する意識とそれに関連する要因を明らかにすることを目的とした。本目的を達成するために、ASDの診断を有する10名に半構造化面接を行い、M-GTAによる分析を行った。その結果、本研究の対象者の多くは、学校体育でのネガティブな経験から、特に球技スポーツに対する苦手意識を有していたが、必ずしも運動・スポーツが嫌いというわけではなく、全ての対象者において卒後に知人からの誘いをきっかけとした運動・スポーツ経験があり、運動・スポーツ習慣をつけたいという思いを持っていた。その中で、初めてのことやコミュニケーションに対する不安といったASDの障害特性から、自分のペースで運動・スポーツを楽しむことができず葛藤しているのではないかと考えられた。その一方で、継続的な運動・スポーツを楽しむことができている人は、自分のペースで運動・スポーツを実施できており、自分を理解してくれる重要な他者の存在によって、運動・スポーツを継続して楽しむことができることが明らかとなった。すなわち、ASD者が継続的に余暇としての運動・スポーツを楽しむためには、本人の特性を理解している重要な他者を作ることと、自分のペースで楽しめる運動・スポーツ習慣を作れるような手立てが必要であると考えた。
  • 相馬 大祐
    2024 年4 巻2 号 p. 60-66
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー
    多職種による協働についてはその必要性が指摘されている一方で、その手法の議論の一般化は困難であることが予想される。そこで、障害福祉領域における地域の支援体制づくりとして、多職種協働の視点及び方法を考え、最終的に多職種協働における重要な視点を考えることを本稿の目的とする。まず、先行研究から多職種協働の視点を3つ提示し、それぞれが多職種協働に関する調査研究にてどのように取り組まれているか確認した。結果として、具体的なツール等の戦術的な視点と基本的なコンセプト等の戦略的な視点の双方を持つことの重要性が確認された。また、戦略的な視点を持つためには、価値の共有化の営みの必要性を考察した。
  • 早期からの継続的なアセスメントを通して
    亀田 良一
    2024 年4 巻2 号 p. 67-71
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー
    アセスメントは、心理検査等のフォーマル・アセスメントだけでなく、セミフォーマル、インフォーマルな情報も加味し、包括的に進めることが大切である。特に、時間軸に沿って発達的な観点を踏まえた「線」でのアセスメントや、生活の様々な場面での関係性に関する「面」でのアセスメントが求められる。これらのアセスメントを一人ですべて担うことは難しく、多職種連携による包括的・継続的なアセスメントが必須である。みなかみ町では、保健師が中心に運営する早期支援の事業に通級指導教室の担当が参画したり、教育委員会の事業に保健師が積極的に関わったりし、町全体として早期からの相談や支援に当たっている。これらの事業を通して、通級指導教室担当と保健師とが“顔の見える存在”として、日常的に連携しながら相談活動が効果的に行われている。
  • 鍋島 志穂
    2024 年4 巻2 号 p. 72-78
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー
    本稿では、日本ではまだ広く認知されていないと思われる「家庭医療学」の理念、その理念の根幹を担う考え方を紹介する。さらにその家庭医療学を基盤とした包括性や継続性を担保して提供される「質の高いプライマリ・ケア」について述べる。家庭医療学の理念は人を全人的に診るという視点や、コミュニティにアプローチするという視点を持っており、心理学と共通する部分が多い。発達特性を持つ方のケア、小児科からのトランジションなど、今後、発達心理学の分野とのますますの連携が期待されると考えている。
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