症例は85歳女性.既往歴として平成16年に狭心症で経皮的冠動脈インターベンションを施行.今回,平成23年3月22日突然呼吸困難が生じ当院に救急搬送,急性心不全の診断で入院した.心不全軽快後に冠動脈造影検査を施行し,左前下行枝seg. 6の75%狭窄病変にステントを留置した.血管内超音波検査でステント近位部にプラークシフトを認めたが,内腔は広いため終了とした.しかし終了直後にショック状態となった.再び冠動脈造影検査を施行したところ,seg. 6が血栓により閉塞していた.急性ステント血栓症と診断しステントの再留置にて治療した.術直後血小板数が45×10
3/μlまで低下していたため,ヘパリンを中止,アルガトロバンを使用したところ血小板数は回復した.術後採血で抗ヘパリン・血小板第4因子複合体抗体が陽性であり,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断した.急性ステント血栓症を生じた症例に対しては,その一つの原因としてHITを疑い治療するべきである.
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