日本冠疾患学会雑誌
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18 巻, 1 号
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原著
  • 山﨑 元成, 小池 裕之, 廣瀬 仁, 山本 平, 丹原 圭一, 稲葉 博隆, 桑木 賢次, 新浪 博, 田端 美弥子, 菊地 慶太, 岩村 ...
    2012 年 18 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    pedicle法,skeletonize法の採取法が左内胸動脈-左前下行枝の吻合に与える影響に関し,グラフト流量,術後造影から吻合部形態,吻合部狭窄率の比較検討を行った.pedicle法216例(P群),skeletonize法(S群)118例を比較検討した.術後造影ではFitzGibbon grading systemによる吻合部形態,およびグラフトの中腹径,吻合部径,吻合部冠動脈近位側径,遠位側冠動脈径,heel部径,heel側狭窄率を測定した.グラフト流量ではP群で有意に高かった.グラフトの中腹径はP群で有意に大きかったが,吻合部径はS群で有意に大きかった.Heel側狭窄率には有意差を認めなかった.FitzGibbon grading systemによる吻合部形態の比較では両群間に差を認めなかった.閉塞率はP群に比較してS群で有意に高かったが,術者を1人に限定すると,閉塞率,吻合の質に差はなかった.pedicle法,skeletonize法による左内胸動脈-左前下行技の吻合の遠隔期成績はともに良好であった.skeletonize法による吻合では閉塞率が,pedicle法にくらべて高かったが,習熟により改善するものと考えられた.
  • 山口 聖次郎, 山本 宜孝, 牛島 輝明, 渡邊 剛
    2012 年 18 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    【目的】当施設において施行した,ロボット支援下手術の経験に関して報告する.【方法】2006年7月~2009年9月までに16例(男性13例:女性3例)に施行した.平均年齢58±11歳.平均冠動脈病変枝数2.1±0.8枝であった.手術手技は内胸動脈剥離,症例によっては,コンポジットグラフト作成までをロボットで行い,小切開バイパス手術を行った症例12例,ロボット支援完全内視鏡下バイパス術2例,ITA剥離のみに使用した症例2例であった.【結果】平均バイパス枝数2.4±1.5枝であった.術後ICU滞在時間2.7±0.4日,平均在院日数は9.8±2.4日であった.ロボット支援下完全内視鏡下バイパス術施行例は,術後ICU滞在時間1.0±0日,術後在院日数3.5±0.7日であった.【結論】ロボット支援下冠動脈バイパス術は,ICU滞在時間,術後在院日数も短く,有意義な術式と考えられた.
  • 髙森 達也, 折目 由紀彦, 中田 金一, 塩野 元美, 古場 隼人
    2012 年 18 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    【目的】CABGのグラフト流量波形上の逆流成分(R)の全流量波形成分(T)に対する割合R/Tがグラフト機能を反映しうるかを検討した.【対象と方法】豚(7頭)を用い,LAD#7にLITAを端側吻合した.TTFMをLAD#6,LAD#8,LITAに装着しLAD#6とLITA吻合部に血管狭窄器を装着した.LAD#6の狭窄率を変化させ,各流量波形を分析した.LAD#6の血流量減少率を75%に固定し,吻合部の狭窄率を変化させ,流量波形を分析した.【結果および考案】LADの血流量減少率が0%でバイパス吻合した場合,LITAのR/Tの大きさはLADとLITAの間の血流競合の程度を反映し,吻合部末梢への流量は低下し,グラフト機能障害が示唆された.LAD中枢の血流減少率が75%以上で,R/Tは減少し,充分なグラフト流量が得られた.つまり血流減少率75%以上であれば,CABGにて,冠動脈の血流改善を期待できると考えられた.LITAの吻合部狭窄の程度が増加すると,LITAのR/Tは増加し,冠動脈末梢の血流量は減少し,吻合部狭窄によるグラフト機能障害を示唆した.【結語】CABG術中グラフト血流評価において,LITAのR/Tは血液供給管としてのグラフト機能を推定する信頼できる定量的な指標の一つとして有用であると考えられた.
  • 佐々木 修, 西岡 利彦, 塚田 俊一, 吉本 信雄
    2012 年 18 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    【目的】冠動脈プラークの増加は心血管イベント発症のリスクとされている.本研究の目的は経皮的冠動脈インターベンションを必要とする虚血性心疾患患者において血管内超音波法で計測された冠動脈責任病変プラーク面積を規定する因子を明らかにすることである.【方法】当院にて経皮的冠動脈インターベンションを施行した虚血性心疾患患者連続304名(急性冠症候群206名)を対象とした.責任冠動脈病変の最も内腔面積が小さな最小血管内腔部位におけるプラーク面積を従属変数として,年齢,性別,急性冠症候群,高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬内服,スタチン内服,HbA1c,LDLコレステロール(low density lipoprotein cholesterol; LDL-C),HDLコレステロール(high density lipoprotein cholesterol; HDL-C),LDL-C/HDL-C比,病変の偏心性(エクセントリシティ・インデックス; EI),カルシウム角度,リモデリング・インデックス(RI)を独立変数とした単回帰分析を実施したのち、多重共線性のある独立変数を除いて重回帰分析を行った.【結果】単回帰分析において高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬内服,スタチン内服,HbA1c,LDL-Cはプラーク面積と相関を示さなかったが,性別(p=0.006),急性冠症候群(p=0.005),LDL-C/HDL-C比(p=0.012),RI(p<0.001)が正の相関,年齢(p=0.025),HDL-C(p=0.001),EI(p=0.003)カルシウム角度(p=0.029)は有意な負の相関を示した.重回帰分析を行ったところ,HDL-C(p=0.025)とEI(p=0.020)がプラーク面積の独立した負の規定因子であった.【結論】経皮的冠動脈インターベンションを必要とする虚血性心疾患患者において,冠動脈責任部位におけるプラーク面積を規定したものはHDLコレステロールと病変の偏心性であった.
短報
  • 木村 玄, 瀬在 明, 中田 金一, 吉武 勇, 髙森 達也, 塩野 元美, 高山 忠輝, 平山 篤志
    2012 年 18 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    【背景】慢性腎臓病(CKD)は心臓手術後の重要なリスク因子の一つである.本研究は,術前に人工透析を導入されていないCKDでの冠動脈バイパス術症例を対象とし,hANP投与が腎機能に及ぼす効果を,短期および長期予後について検討した.【方法】303例がhANP群とプラセボ投与群に振り分けられた.一次エンドポイントは術後透析回避率,血清クレアチニン値,eGFRとした.二次エンドポイントは,早期予後,長期予後,レニン活性,アンギオテンシンII,アルドステロン,ナトリウム排泄率などとした.【結果】術後早期および遠隔期死亡は両群間で差はなかったが,術後心イベント発生例,透析が必要となった例は有意にhANP群で少なかった.術後透析回避率は,hANP群で1年99.3%,5年97.8%,10年97.8%,プラセボ群で1年91.6%,5年90.1%,10年90.1%と有意にhANP群が高かった(p=0.0014).【考察】CKD合併の冠動脈バイパス術患者において,hANPが術後急性期の腎保護を行うことで,遠隔期の心イベント,透析導入を予防すると考えられた.
症例報告
  • 石田 成吏洋, 島袋 勝也, 松野 幸博, 竹村 博文
    2012 年 18 巻 1 号 p. 36-38
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性.56歳時,経皮的冠動脈形成術を施行された際,左前下行枝が解離により閉塞したため緊急冠動脈バイパス術(Ao-SVG-#7,Ao-SVG-#9-#14,Ao-SVG-#4PD)を施行された.定期評価でAo-SVG-#7,Ao-SVG-#4PDのグラフト閉塞とAo-SVG-#9-#14グラフトの中枢側に狭窄を認め,再冠動脈バイパス術を施行した.手術は左第5肋間前側方開胸アプローチ,PCPS補助下でLITA-RA I-composite graftを#14に側々吻合し,引き続き#4PDに端側吻合した.Redo CABGにおいては,適切な到達経路,使用グラフトの選択,バイパスグラフトデザインを選択することが重要であり,左開胸アプローチ,composite graftを用いたグラフトデザインは有効な術式の一つと考えられた.
  • 笹生 正樹, 東 理人, 川尻 英長, 高 英成
    2012 年 18 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    初回の経皮的冠動脈形成術(PCI)後に再狭窄を起こし,複数回の薬剤溶出性ステント(DES)留置後に生じた多発冠動脈瘤の1例を経験した.症例は64歳,男性.急性心筋梗塞(左前下行枝領域)に対してPCI施行,以後同部位の再狭窄に対して複数回のPCIを施行されていた.初回DES留置後21カ月後の冠動脈造影にて巨大冠動脈瘤を認め,その後の冠動脈造影にて瘤の拡大,多発を認めたため手術適応であると判断された.手術は心拍動下にて瘤の遠位側へのバイパスおよび,瘤切除を行った.術後経過良好で退院となり,現在まで無症状にて経過している.
  • 横川 哲朗, 渡部 研一, 阪本 貴之, 大和田 尊之, 中里 和彦, 竹石 恭知
    2012 年 18 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/10/01
    ジャーナル フリー
    症例は85歳女性.既往歴として平成16年に狭心症で経皮的冠動脈インターベンションを施行.今回,平成23年3月22日突然呼吸困難が生じ当院に救急搬送,急性心不全の診断で入院した.心不全軽快後に冠動脈造影検査を施行し,左前下行枝seg. 6の75%狭窄病変にステントを留置した.血管内超音波検査でステント近位部にプラークシフトを認めたが,内腔は広いため終了とした.しかし終了直後にショック状態となった.再び冠動脈造影検査を施行したところ,seg. 6が血栓により閉塞していた.急性ステント血栓症と診断しステントの再留置にて治療した.術直後血小板数が45×103/μlまで低下していたため,ヘパリンを中止,アルガトロバンを使用したところ血小板数は回復した.術後採血で抗ヘパリン・血小板第4因子複合体抗体が陽性であり,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断した.急性ステント血栓症を生じた症例に対しては,その一つの原因としてHITを疑い治療するべきである.
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特集:循環器内科からの問題提起
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