経済学論集
Online ISSN : 2434-4192
Print ISSN : 0022-9768
77 巻, 2 号
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論文
  • 日本の経験からの教訓?(1)
    三輪 芳朗
    2011 年 77 巻 2 号 p. 2-60
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル フリー

    「バブル」崩壊後から今日に至る時期の日本経済の状況を「失われた20年」と呼ぶことが多い.この期間の日本経済論を一貫する代表的キーワードの1つが「不良債権」である.関連して,「不良債権の処理」,その「不足」と「遅れ」,「処理」を促進し「解消」させるための「政策」が広く話題となった.「処理の遅れ」は,「不良債権の累積」による「銀行バランスシートの毀損」やその隠蔽工作としての「飛ばし」や「貸し渋り」に連なり,さらに「金融システムの不安定性」「バランスシート不況」,その対応策としての「銀行救済」とその帰結としての「zombie banks」と続く.「処理の遅れ」は,さらに,「貸倒引当金の積み立て不足」「追い貸し」「zombie lending」へとつながり,「融資債権の切捨て」を通じる「不良債務者の援助」による「製品市場の資源配分の歪み」や「追い貸し」による「融資資金配分の歪み」につながる.これらのキーワード群を組み合わせた「不良債権処理の遅れ」が「不況からの回復」「デフレ経済からの脱出」を遅らせ,日本経済の「失われた20年」を生み出したとする見方が広く受容されている.

    本論文では,「不良債権」をキーワードとする「不良債権問題」と「失われた20年」に関わる「通説」「通念」が,曖昧かつ華美な用語を羅列する言説の集積物であり,事実誤認と誤解に満ちた,実態からはなはだしく乖離した「神話」であることを示す.

    詳細な検討に基づき,本論文では,「不良債権問題」や「失われた20年」問題に関する「通説」「通念」を,20年間にわたって大いに盛り上がった「不良債権」を象徴とする曖昧かつ華美な用語が乱舞する「宴」にたとえて,次の如き評価を示す.

     

    今日の通説・通念となっている「不良債権」やその「処理の遅れ」に注目する日本経済の「失われた10年(20年)」論議を構成する多くの文献は,壮大な規模で長期間にわたって繰り広げられた「宴」に供された「▼▼▼▼のような曖昧だが華美な事柄」を話題(素材)とする「△△△△のようなもの」である.Caballero, Hoshi, and Kashyap [2008]や池尾編[2009]所収の諸論文が集大成あるいは象徴的文献として最も著名である.「不良債権」「不良債権処理の遅れ」「追い貸し」「失われた10年」などが「▼▼▼▼」の代表である.「宴」の内容や雰囲気に無関心あるいは批判的な者は参加していない.一時期参加した後に離脱した者も少なくないかもしれない.

  • 森 建資
    2011 年 77 巻 2 号 p. 61-105
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル フリー
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