経済学論集
Online ISSN : 2434-4192
Print ISSN : 0022-9768
82 巻, 1 号
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論文
  • 福井 貴也, 高橋 明彦
    2017 年 82 巻 1 号 p. 2-40
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2019/04/22
    ジャーナル フリー

    本稿では,ニューラルネットワークを用いた深層学習に基づく投資手法を考察する.特に,損失関数の特定化により様々な投資手法を構築できることに着目し,その例として,資産リターン(収益率)の時系列を入力し,教師付き深層学習(Supervised Deep Learning, SL)によるアノマリー検出を投資判断に活用する手法と,収益最大化に基づく投資判断を深層強化学習(Deep Reinforcement Learning, RL)により求める方法を示す.また,各資産のリターンに関する学習結果を,複数資産を対象とするポートフォリオ運用についても活用する.

    さらに,現実の市場データを用いた検証を行い,対象資産が同じであっても,月次/日次リターン等の入力データの種類,学習手法の選択,投資期間中の再学習の有無,ネットワークの層数,中間層のユニット数等の外生的に設定する項目により投資パフォーマンスが大きく異なることを例示する.なかでも,RLに基づく投資判断が,ポートフォリオ運用において相対的には安定して良好なパフォーマンスを示すことが明らかとなる.

  • 江原 慶
    2017 年 82 巻 1 号 p. 41-63
    発行日: 2017/07/01
    公開日: 2019/04/22
    ジャーナル フリー

    価値形態論は,日本のマルクス経済学が世界に誇るべき研究蓄積を持つとともに,マルクス経済学原理論の体系において根幹に位置する領域である.戦後日本において大きな影響力を持った宇野弘蔵の価値形態論は,不確定な市場を理論化するための重要な起点となっていたが,現代的な資産市場の動態を前に,その説明力を失いつつある.本稿ではその不十分さを直視し,価値形態論の現代的意義を再構築すべく,宇野が批判対象としていた『資本論』のテキストに戻り,再批判を試みる.その際,戦後日本の最大級の論争であった宇野と久留間鮫造の間の価値形態論争を振り返り,価値形態の量的側面を取り去り質的側面に焦点を絞る質量二分法的方法の限界を確認する.その上で,宇野の価値形態論のロジックから,ある商品の価値を別の商品と比較する表現を,価値形態の基礎として取り出す.商品所有者は,ある商品を欲しいと思ったその瞬間に,その商品を手に入れるのに対して自らの手許の資産が足りるかどうかという,価値に関する量的比較を初源的に遂行している.市場とは,単なる商品交換ではなく,こうした比較表現を等置表現へと固めていく量的関係が結ばれていく場なのである.

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