会誌食文化研究
Online ISSN : 2436-0015
Print ISSN : 1880-4403
18 巻
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研究論文
  • 中田 吉英
    2022 年18 巻 p. 1-8
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    本稿では,近世後期から近代の都市部商家における仏事儀礼で供された食事を,京都の商家に残された仏事記録から分析した。商家の当主の死に際して,喪家,親類,奉公人,使用人,出入商人,近隣住民らの間で十数回におよぶ共同飲食がもたれること,その料理の内容に関して仕立てと食材の固定的な関係があること,現代の京料理のイメージと比較して異同があることを示した。また,供応食の担い手として,近世から近代の京都の料理屋のひとつである仕出し屋について検討し,得意先が変わるサイクルと料理の変容,互いの地理的条件,支払いの記録を検討することで,商家と仕出し屋との関係性や依存の度合いについても考察を加えた。

研究ノート
  • 平田 昌弘
    2022 年18 巻 p. 9-19
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    本論文では、乳製品が日常の食生活に豊富に利用されている現在において、日本に普及する乳食文化の特徴を整理するために、日本乳食文化の型を再考し、日本乳食文化に普及する乳製品の形態(採用・変容・融合)を分析することを目的とした。インターネット検索と大学生への食生活調査により事例を収集し、乳製品の利用と調理の仕方、食材と乳製品を合わせる際の主な意図に着目して、日本乳食文化の型を解析した。現在の日本乳食文化の型を検討し結果、既に提起してきた嗜好品、栄養補助食、西洋型の食文化、コメとの融合、発酵食品の他、調味料、楽しみ、そして、揚げ物の8類型が明らかとなった。乳製品は、それぞれの型に応じて、採用、変容、融合して日本の食文化に取り入れられていた。乳製品の利用は、食材の素朴な味わいを邪魔することなく、日本食にはない濃厚さや甘みを足し加え、円みやなめらかな食感にするという付加価値をつけていた。今後も引き続き、乳製品が多くの食品に用いられ、新たなる日本乳食文化が展開していくものと考えられた。本論文で提示した類型分類モデルは、日本乳食文化の特徴分析のツールとして、今後の活用が期待される。

資料
  • 荒尾 美代
    2022 年18 巻 p. 20-26
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、二條城行幸時の饗応献立記録のある新史料を紹介し、寛永時代の京都における南蛮菓子の受容の一端を明らかにすることである。

    新史料に記されている献立は、饗応を受ける対象者別になっており、人数が明記されていることに特色がある。「あるへいとう」は最低1,803名分、「かすてら」は最低1,367名分が用意されたと考えられた。

    特に京都の多数の公家と地下役人へ振る舞われたことは、京都の人々に「あるへいとう」や「かすてら」を知らせるきっかけになったのではないかと思量する。また、全国から参集した国大名や諸大名へも振る舞われた可能性もあり、南蛮菓子が地方へ伝播するのに一役買ったのではないかとも考えられた。

  • 渡壁 奈央, 河野 知歩, 石橋 ちなみ, 岡田 玄也, 杉山 寿美
    2022 年18 巻 p. 27-38
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、『元就公山口御下向之節饗応次第』に記された饗応献立の再現の過程と、再現した饗応献立の活用事例を報告するものである。『元就公山口御下向之節饗応次第』には、1549年に毛利元就が大内義隆を訪問した際の6回分の饗応献立が、用いた食器具とともに記されている。

    6回の饗応献立の料理は類似しており、料理の提供順序に規則性が認められた。料理の再現は、毛利氏の家臣、玉木吉保が記した『身自鏡』や、同時期の史料の調理法に従った。調味料は、醤油、砂糖は用いず、味噌、塩、酢、酒、蜂蜜、水飴を用いた。獺(かわうそ)、白鳥等の入手が不可能な食材は、類似した食材で代用した。

    再現した饗応献立は“サムライゴゼン~毛利食~”として商品化され、また、COVID-19感染症拡大により中止となったが、学校給食での提供が予定されていた。今後、観光面、教育面での活用が期待される。

  • 宇都宮 由佳, 伊尾木 将之, 瀬尾 弘子, 江原 絢子, 大久保 洋子, 中澤 弥子
    2022 年18 巻 p. 39-47
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    本調査は、年末年始の行事と食について2017年(1665名)と2020年(1605名)のアンケート調査結果を比較したものである。年末については、約7割の人が大掃除をし、年越しそばを食べていた。2017年と同様の傾向であった。しかし、おせちや雑煮などの正月料理の準備をする人は減少していた。摂取されているおせち料理は、上位がかまぼこ、煮豆、煮物、下位が魚料理で、2017年と比べて変化はなかったが、摂取率はいずれも減少していた。おせちを作る理由は、伝統的習慣だからか最も高く、次いで縁起物だからであった。子どもいる世帯は他の世帯に比べて伝統文化を継承したい傾向がある。おせちを作らない理由は、作るのに手間がかかる、おせち販売の普及、家族構成の減少があげられた。正月の過ごし方は、家族と一緒に過ごすことを大切にしている人が多く2017年と2020年で同じ傾向であった。正月3日間に雑煮やおせち料理を食べる期間が短くなっている。正月は、正月の意味や精神と伝える貴重な時間であり、ワークライフバランスを含めて考える必要がある。

  • 藤本 勇二, 玉城 恵子, 小笠原 有沙
    2022 年18 巻 p. 48-60
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、小学校において伝統的な和食文化への理解を深めることである。昆布を教材として取り上げ、二人の栄養教諭が北海道と沖縄県の2つの小学校の交流を学校給食とICTを活用して支援した。オンラインと食べる体験を重ねる交流学習の形の有効性とともに昆布や地域にある食べ物、昔から食べられている食べ物を大切だと思う気持ちの高まりが確認でき、伝統的な和食文化への理解を深めることができた。

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