日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
2 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 廣瀬 由紀, 田渕 経司
    2022 年 2 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    Candida aurisは2009年に我が国において患者の外耳道から分離・報告された新しいカンジダの一種である。多くの菌株で高い環境生残性・抗真菌薬耐性傾向を示し,商業ベースの検査方法では診断できないという特徴がある。そのため,真菌では初めてとなる汎世界的流行を引き起こし,世界40か国,6つの地域で検出報告がある。すでに500近い論文が発表され,そのうちいくつかではout breakも報告されている1)。急速な世界的拡大,多剤耐性による高い死亡率を持つことから,2016年Centers for Disease control and Prevention(CDC)はC. aurisを「薬剤耐性脅威レポート」においてurgent threats(もっとも優先度の高い脅威)に位置付け,警告をしている。ここ10年で世界的脅威となりつつある,C. aurisについて概説する。

原著論文
  • 中村 千紘, 高畑 淳子, 清水目 奈美, 工藤 玲子, 三橋 友里, 野村 彩美, 松原 篤
    2022 年 2 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    黄色ブドウ球菌エンテロトキシン(Staphylococcus aureus enterotoxin:SE)は,自然リンパ球などを介して,好酸球性副鼻腔炎などのいわゆる2型炎症に関与する可能性が以前より指摘されている。今回,2018年3月から2021年1月に当科を受診し,血清SE特異的IgE(以下,血清SE-IgE)を検査した副鼻腔炎症例計78例を対象として,血清SE-IgE陽性率,血清SE-IgE陽性群・陰性群における末梢血好酸球,総IgE,各種抗原のImmuno CAP,ならびにJESRECスコアなどの臨床像を比較検討した。

    その結果,血清SE-IgEは全体で14.1%(78例中11例)の陽性率を示し,そのうち好酸球性副鼻腔炎の血清SE-IgE陽性率は26.8%(9/41例)であり,非好酸球性副鼻腔炎の血清SE-IgE陽性率5.4%(2/37例)より有意に高値であった。また,血清SE-IgE陽性群では,JESRECスコアが有意に高値を示し,末梢血好酸球,総IgEも高値の傾向にあった。さらに血清SE-IgE陽性群では好酸球性中耳炎の合併が多い傾向もみられた。

    以上より,副鼻腔炎症例において血清SE-IgEが好酸球性副鼻腔炎における2型炎症の病勢を反映し,その病態に関与するという考えに矛盾しない結果となった。

  • 檜垣 貴哉, 村井 綾, 清水 藍子, 假谷 伸, 安藤 瑞生
    2022 年 2 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)は本邦でも2021年10月19日の時点で,国内でのCOVID-19感染者は1,710,644例,死亡者は18,113名を超えた。医療への影響は大きく,特に耳鼻咽喉科は気道を扱う手術や処置が多いため,診療時の院内感染リスクが懸念された。内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)をはじめとした鼻科手術は,ウイルス量が多いと考えられる鼻腔の操作を行うことや,各種操作がエアロゾルの発生を招く可能性が指摘され,特にハイリスクと見なされ,対応に苦慮した。

    当科においても2020年4月から5月にかけ,緊急症例や,悪性腫瘍関連の症例以外は新規手術の予約の停止,予定の手術の延期等を行った。2020年6月以降は術前にPCR検査を施行することが可能になり,経鼻手術は術前に原則としてPCR施行の上で,再開した。

    手術再開後,2020年8月から11月にかけ経鼻手術はほぼ例年同様の手術症例数となったが,流行の第3波の影響を受け2020年12月から2021年2月にかけ大きく手術数が減少した。年間の手術件数については過去3年間の平均と比較し,2020年は128例と約7割に減少した。幸い,周術期にCOVD-19が判明した症例はなかった。

    安全な鼻科手術の継続は患者のQOLを維持するために大きな役割を果たしている。COVID-19の流行下における当科での鼻科手術の状況を総括し共有することは,今後の安全な手術の実施に有用と考えられる。

  • 中村 真浩, 井出 拓磨, 井下 綾子, 池田 勝久, 松本 文彦
    2022 年 2 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】アレルギー性鼻炎は鼻腔抵抗の上昇を来すだけでなく,血清中のヒスタミン,IL-4,CysLTsの高値がREM潜時の延長を引き起こすことから,睡眠障害に関与することが報告されている。睡眠障害を訴えるアレルギー性鼻炎患者に対し,舌下免疫療法による介入が睡眠に与える影響について検討した。

    【方法】通年性アレルギー性鼻炎患者23名に対し,舌下免疫療法開始前にピッツバーグ睡眠質問診票(PSQI)を用いて睡眠障害の有無を層別化した。舌下免疫療法6ヵ月後に鼻症状スコアと同時に再びPSQIを評価し,それぞれの群で治療介入前後のスコアの比較を行った。

    【結果】舌下免疫療法開始前PSQI6未満の群ではくしゃみ,鼻汁,合計鼻症状スコアにおいて治療前後で有意に改善を認めた。一方で舌下免疫療法開始前PSQI6以上の群ではこれら3項目に加えて鼻閉とPSQIスコアにおいて治療前後で有意に改善を認めた。PSQIのコンポーネントで解析を行うと,睡眠時間や入眠に対する服薬行動などに統計学的差異はない上で「睡眠の質」,「入眠時間」の項目で有意に改善を認めた。

    【結論】睡眠障害の自覚のある通年性アレルギー性鼻炎患者に対しダニ舌下免疫療法による介入を行うことによって,睡眠障害を改善できる可能性が示唆された。

臨床ノート
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