新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)は本邦でも2021年10月19日の時点で,国内でのCOVID-19感染者は1,710,644例,死亡者は18,113名を超えた。医療への影響は大きく,特に耳鼻咽喉科は気道を扱う手術や処置が多いため,診療時の院内感染リスクが懸念された。内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)をはじめとした鼻科手術は,ウイルス量が多いと考えられる鼻腔の操作を行うことや,各種操作がエアロゾルの発生を招く可能性が指摘され,特にハイリスクと見なされ,対応に苦慮した。
当科においても2020年4月から5月にかけ,緊急症例や,悪性腫瘍関連の症例以外は新規手術の予約の停止,予定の手術の延期等を行った。2020年6月以降は術前にPCR検査を施行することが可能になり,経鼻手術は術前に原則としてPCR施行の上で,再開した。
手術再開後,2020年8月から11月にかけ経鼻手術はほぼ例年同様の手術症例数となったが,流行の第3波の影響を受け2020年12月から2021年2月にかけ大きく手術数が減少した。年間の手術件数については過去3年間の平均と比較し,2020年は128例と約7割に減少した。幸い,周術期にCOVD-19が判明した症例はなかった。
安全な鼻科手術の継続は患者のQOLを維持するために大きな役割を果たしている。COVID-19の流行下における当科での鼻科手術の状況を総括し共有することは,今後の安全な手術の実施に有用と考えられる。
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