1.本稿に述べんとするのはブナ天然林の更生方法、林型の變化と林型と共に樹種も變遷すると云ふ事であります。
2.ブナ天然林の更生方法は新生林分の形により二つに分ける事が出來ます。即ち新生林分が一齊林になる場合と一齊林にならぬ場合とであります。前者は火災其他特殊の事情によりて成立しまして普通に行はれるのは後者であります。これを更に分けて擇伐状、群状、縁條式の三つになします。同一林分に於きまして途中相にある場合は多く擇伐状に更生せられ、極盛相に達した時は群状に更生する例を多く見ます。林縁及び林内の疎開した場所では縁條式に後繼樹の發生を見ます。
3.基本型の林分で極盛相に達すればIIγ
bの林型となり、更生が短期間に行はれた場合に限りIα
1の林型に迄發達します。
基本型 IIγ
b→IIγ
a→IIδ→Iβ→IIδ→IIγ
n→IIγ
b 更生期間 更生を伴はず
第一變型 Iα→Iβ→Iα
更生期間 更生を伴はず
第二變型 Iα→Iβ→IIδ→IIγ;→Iα
更生期間 更生を伴はず
第二變型の更生期間の變遷を更に分ければ
Iα→IIγ;→IIδ→Iβ
でありますが、これは比較的短時日になされ、基本型の場合の時の様に明確に指示する事が出來ません。
4.ブナ天然林の構成樹種を基本型の場合に付いて云ひますれば別表の様に極盛相に達した時代には材積、占領面積こそブナが絶對優勢でありますが、本數歩合からはブナと其他樹種とはほゞ相半ばします。最も優勢な時代は途中相のIβであります。下木間にも林型と密接な關係がありまして、上木、下木の状態によりまして林分發達の如何なる相にあるかが判斷し得ると存じます。
5.ブナが最後の優勢木となるのはブナの耐蔭性とその生活形(幹形)によるのでありまして、ブナはその直徑階別平均樹高が他樹種より大であることがブナに有利な重大なる原因であります。
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