薬史学雑誌
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56 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 中辻 慎一, 村岡 修, 中川 好秋, 松本 和男
    2021 年 56 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
    ジャーナル フリー
    このシリーズその1の続編である本報においては,医薬や農薬開発の基礎となる 20 世紀の理工学分野での有機化学について,天然物化学,生物有機化学,超分子化学,有機合成,および有機反応の各専門分野に大別して概観するとともに,各分野で傑出した業績を挙げた化学者を紹介しながら述べる.なかでも,第二次世界大戦後の困難な時代を乗り越えて,日本の有機化学を再建するのに貢献した 5 名のノーベル賞受賞者を含む,著名な化学者たちのバックグラウンドと業績に焦点を当てる.
  • 野澤 直美, 福島 康仁, 高橋 孝, 村橋 毅, 高野 文英
    2021 年 56 巻 2 号 p. 84-96
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
    ジャーナル フリー
    目的:硝石は,火薬の主要な原料であり,戦国時代から江戸の終わりまでのわが国において「古土法」,「培養法」,および「硝石丘法」と呼ばれる 3 種の製造法で硝石を生産していた.先の報告において「培養法」は,土中の豊富なアンモニア態窒素を利用して効率的に質の高い硝石を製造できる方法であることを科学的に明らかにした.本研究では,これら 3 種類の土をメタゲノムから比較した. 方法:硝酸イオン NO3– の生成に関連する硝化細菌に着目し,3 種の硝石製造法で用いる土中のバクテリア分 布を 16S rRNA 遺伝子を対象としたメタゲノム解析法で分析した.併せて土中の NO3– の濃度も測定し,これ らの結果を一般的な耕作地の畑土と比較した. 結果・考察:畑土では NO3– が検出されないが,それぞれの硝石製造に用いる 3 種類の土からは高濃度の NO3 –が検出された.これらの土について 16S rRNA メタゲノム解析を行った結果,「培養法」で用いる土(江戸期 の遺構土)は,「硝石丘法(牛糞堆肥で代用)」や畑土で見出される細菌叢と同じパターンが示された.対照的に,「古土法」で用いる土の菌叢は,他の 3 種類の土とは異なり Actinobacteria 門の細菌が菌叢全体の 97%を占めていた.Proteobacteria 門の細菌は,畑土で 30%,牛糞堆肥で 46%,合掌造り床下遺構土で 13%を占めるが,寺の床下土では 2%に過ぎなかった.硝化に関わる菌について菌叢同定を行ったところ,Nitrospira,Nitrobacter,JG37-AG-70 および Nitrosovibrio 属が畑土,合掌造り床下遺構土および牛糞堆肥で見出された.しかし,寺の床下土ではこれらの菌は全く検出できなかった.脱窒に関わる菌としては Rhodobacter 属,Pseudomonas属,Paracoccus属およびBacillus属の菌が見つかった.Nitrospiraに帰属されるOTUs(operational taxonomic units)のリード数は,合掌造り床下遺構土において最も高かった.以上の結果から,硝石製造法は,土中の細菌を巧みに利用して NO3– 濃度を高め硝石を作り出すための高度なバイオテクノロジーであることがわかった.
  • 五位野 政彦
    2021 年 56 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
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    序論:明治時代初期に東京府立の精神科病院が開設され,精神科疾患患者に対する治療が行われた.本稿では,現在の東京都立松沢病院の前身である 3 病院,東京府癲狂院(1879?1889),東京府立巣鴨病院(1889-1919),東京府立松沢病院(1919-)の薬局長の経歴と院内での業務を文献調査した. 方法:次の資料の調査を行った.国立国会図書館デジタルコレクション,東京薬科大学図書館収蔵資料,東京都公文書館収蔵資料,国立公文書館収蔵資料,著者個人所有資料. 結果・考察:東京府癲狂院の初代薬局長佐藤啓政は医師であった.同時に感染症の医療機関である避病院も兼務していたが.1874 年公布の「医制」で命名された,薬剤師の前身である薬舗主としての勤務は見られなかった.東京府立巣鴨病院薬局では,板垣懋が最初の薬剤師として薬局長を務めた.彼は感染症病院である駒込病院勤務の後に巣鴨病院に勤務している.1895 年から 1911 年まで東京府立巣鴨病院薬局長となった二宮昌平は,模範薬局(現東京大学医学部附属病院薬剤部)で勤務した後に巣鴨病院に異動した.巣鴨病院の退職後はロシュ社に入社し,日本最初の MR として活躍した.東京府立松沢病院では 3 人の薬学士(東京帝国大学卒業)が薬局長に就任した.順に谷克己,加藤静雄,馬場治郎で,いずれも医学 / 薬学専門学校の教授という前歴を持ち,加藤は後に東京女子薬学専門学校校長を務めた.精神科医療は偏見を持たれる分野であったが,東京府立病院には優秀な人物が必要であり府立病院薬局長は薬学の社会では高いステータスであったことが,その時代背景からわかった.当時の東京府立巣鴨病院,東京府立松沢病院薬局長は精神科医療における専門性を有していなかったが,薬学という専門性(調剤,製錬,試験をはじめ飲料水検査などの衛生薬学や医薬品情報の収集提供など幅広い知識と経験)をもって精神科医療に貢献していた.
  • 柳沢 清久
    2021 年 56 巻 2 号 p. 108-117
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
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    目的:オポパナックスの歴史は古代ギリシア・ローマ時代にさかのぼり,紀元前の古代ギリシアにて,オールヒールとも呼ばれ,ヘラクリオン(ヘラクレスのオールヒール「すべての癒し」)として評価された.オポパナックスの樹脂成分について,ferulic acid をはじめとして,近年,Phthalides,Coumarins などの多くの化合物が植物化学的成分として,抽出,単離され,その化学構造も解析された.さらにそれらの生物学的,薬理学的活性が解明された.これらのことをオポパナックスの植物化学的,薬理学的エビデンスと考えた場合,オポパナックスが精神・神経疾患,認知症などの疾患の治療薬として,アプリケーションの可能性について考えてみた. 方法:1)1800 年代後半~1900 年代前半の海外の学術文献を活用して,オポパナックスの成分組成の調査を行った. 2)近年の海外の学術文献を活用して,オポパナックスの植物化学的成分組成,およびその生物学的,薬理学的活性の調査を行った. 結果:1)1800 年代後半~1900 年代前半の海外の学術文献調査から,オポパナックスの成分には,樹脂アルコールとして,oporesinotannol C12H13O2OH,樹脂酸として,ferulic acid が含まれていることがわかった. 2)近年の海外の学術文献調査から,オポパナックスの植物化学的成分組成として,6 種の Phthalides,15 種の Coumarins,Polyacetylene Compounds などの化合物が含まれ,それらが抗炎症,抗癌,抗酸化,抗菌作用などの様々な生物学的,薬理学的特性を有していることがわかった.近年の本品の植物化学的成分に関する海外の研究文献の調査の結果,当帰,川芎,白芷,浜防風などのセリ科生薬に含まれている成分が本品にも多彩に含まれていることが確認できた. 結論:近年の海外の研究によって,オポパナックスからは,ferulic acid の他に,6 種の Phthalides,15 種のCoumarins,Polyacetylene Compounds などの化合物が抽出,単離され,それらの生物学的,薬理学的活性が解明された.そして当帰,川芎,白芷,浜防風などのセリ科生薬に含まれている成分が本品にも多彩に含まれていることが確認できた.したがって各々の成分に準じた当帰,川芎,白芷,浜防風などの効果を本品に求めることが期待できる.精神・神経疾患の鎮静,アルツハイマー型認知症の認知機能の改善に本品をアプリケーションすることが可能と考えられる.さらに本品に含まれるフラノクマリンなどの抗炎症成分を植物化学的,薬理学的エビデンスとした場合,本品を様々な炎症疾患にアプリケーションすることも期待できる.すなわち医療分野において,広範囲の疾病に対して,治療薬として,本品がアプリケーションできる可能性が考えられる.
  • 飯野 洋一
    2021 年 56 巻 2 号 p. 118-128
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
    ジャーナル フリー
    目的:東京大学薬学図書館は薬史学文庫を所蔵している.本稿では薬史学文庫の「北支関係・満洲関係」綴の復刻出版の意義を明らかにする. 方法:復刻出版の経緯,刈米達夫の漢薬調査,岸修の阿片資料について述べる. 結果・結論:復刻出版を契機として日中戦争期の興亜院による薬草調査と阿片政策研究が促進されることが期待される.
  • 五位野 政彦
    2021 年 56 巻 2 号 p. 129-131
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
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  • 儀我 久美子
    2021 年 56 巻 2 号 p. 132-133
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
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  • 2021 年 56 巻 2 号 p. 135
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/24
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