目的:オポパナックスの歴史は古代ギリシア・ローマ時代にさかのぼり,紀元前の古代ギリシアにて,オールヒールとも呼ばれ,ヘラクリオン(ヘラクレスのオールヒール「すべての癒し」)として評価された.オポパナックスの樹脂成分について,ferulic acid をはじめとして,近年,Phthalides,Coumarins などの多くの化合物が植物化学的成分として,抽出,単離され,その化学構造も解析された.さらにそれらの生物学的,薬理学的活性が解明された.これらのことをオポパナックスの植物化学的,薬理学的エビデンスと考えた場合,オポパナックスが精神・神経疾患,認知症などの疾患の治療薬として,アプリケーションの可能性について考えてみた.
方法:1)1800 年代後半~1900 年代前半の海外の学術文献を活用して,オポパナックスの成分組成の調査を行った.
2)近年の海外の学術文献を活用して,オポパナックスの植物化学的成分組成,およびその生物学的,薬理学的活性の調査を行った.
結果:1)1800 年代後半~1900 年代前半の海外の学術文献調査から,オポパナックスの成分には,樹脂アルコールとして,oporesinotannol C12H13O2OH,樹脂酸として,ferulic acid が含まれていることがわかった.
2)近年の海外の学術文献調査から,オポパナックスの植物化学的成分組成として,6 種の Phthalides,15 種の Coumarins,Polyacetylene Compounds などの化合物が含まれ,それらが抗炎症,抗癌,抗酸化,抗菌作用などの様々な生物学的,薬理学的特性を有していることがわかった.近年の本品の植物化学的成分に関する海外の研究文献の調査の結果,当帰,川芎,白芷,浜防風などのセリ科生薬に含まれている成分が本品にも多彩に含まれていることが確認できた.
結論:近年の海外の研究によって,オポパナックスからは,ferulic acid の他に,6 種の Phthalides,15 種のCoumarins,Polyacetylene Compounds などの化合物が抽出,単離され,それらの生物学的,薬理学的活性が解明された.そして当帰,川芎,白芷,浜防風などのセリ科生薬に含まれている成分が本品にも多彩に含まれていることが確認できた.したがって各々の成分に準じた当帰,川芎,白芷,浜防風などの効果を本品に求めることが期待できる.精神・神経疾患の鎮静,アルツハイマー型認知症の認知機能の改善に本品をアプリケーションすることが可能と考えられる.さらに本品に含まれるフラノクマリンなどの抗炎症成分を植物化学的,薬理学的エビデンスとした場合,本品を様々な炎症疾患にアプリケーションすることも期待できる.すなわち医療分野において,広範囲の疾病に対して,治療薬として,本品がアプリケーションできる可能性が考えられる.
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