目的:ホップ腺(ルプリン)は長年にわたりビールの原料として使用されてきた.一方西欧では,古くから生薬として,鎮静薬,苦味健胃薬に利用されてきた.そしてかつて 1800 年代後半~1900 年代初めにかけて,JPをはじめ USP,BP,DAB など各国薬局方に本品が収載された.それから約 100 年後の 21 世紀直前になって,EP では,EP3.0(1998)~今日の EP10.0(2020),BP では,BP2000~今日の BP2022 まで,約 20 年間,継続
収載されている.今回は 21 世紀になって,EP および BP に収載されたホップ腺の規格・試験法に関して,今日の 2022 年までの 20 年間の変遷について調査を行った.そして EP,BP に規定されたホップ腺の成分の規格・試験に関して,近年の学術文献に見られたホップ腺の成分などの学術情報と対比させて考察を行った.さらにホップ腺の成分の薬理学的,生物学的活性効果に関する学術情報を科学的根拠とした場合,ホップ腺の今後の
治療薬,医薬資源としての展開についても考察を行った.
方法:1)EP3.0(1998)~EP10.0(2020),および BP2000~BP2022 に収載されたホップ腺の規格・試験に関して,検索を行った.2)ホップ腺の成分に関する学術文献を抽出した.そこに掲載された EP,BP に規定されたホップ腺の成分のフムロン,イソフムロン(フムロンの異性体),ルプロン,キサントフモールの薬理学的,生物学的活性効果の調査を行った.
結果:1)最初にホップ腺が収載された EP3.0(1998)および BP2000 に規定されたホップ腺の規格・試験法は今日の EP10.0(2020)および BP2022 まで継続,維持されている.2)文献調査から,EP,BP に規定されたホップ腺の成分に関して,多彩な薬理学的,生物学的活性効果があることがわかった.
結論:21 世紀直前になって,ホップ腺は EP では,EP3.0(1998)より,また BP では,BP2000 より収載された.この当時,規定されたホップ腺の規格・試験法は今日まで,約 20 年以上,そのまま維持,継続されている.ホップ腺含有成分の定性試験として,フムロン,ルプロン,キサントフモールの 3 成分について,薄層クロマトグラフィーによる検出が規定された.近年の薬学水準の向上,化学技術の進歩により,この 3 成分の化学構造が解明され,また多くの研究によって,その薬理的,生物学的活性効果についても,解明された.このことを科学的根拠として,ホップ腺は癌,白血病,アルツハイマー型認知症などの多岐にわたる疾患の治療に効果が期待される.この中で,著者はアルツハイマー型認知症に対して,ホップ腺がその治療薬(認知症の進行抑制)の新たな開拓につながると期待する.そして今後,貴重な薬用資源となり得るものと考えた.
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