本研究の目的は、ノートパソコンを用いた計算機統計の演習により、生物医療統計の基礎である多変量解析の概念を手計算に近い感じで体験できること、また、この演習により、手計算で単回帰分析までの計算を学習する場合と比較して、統計の理解が変容し、計算統計の価値が高まることを検証することであった。
方法 医療統計学を初めて学ぶ保健科学部の学部生を対象に、10年間の授業で評価した授業前後のアンケートを用いて分析を行った。使用した統計ソフトはRとRG(RのコマンドをGUIに変換するソフト)である。
結果 重回帰分析の印象として、「手計算」と「RとRG」のどちらが今後の統計解析に役立つと感じるかという質問に対して、98%の学生が「コンピュータ統計」と回答した。
考察 データを単純化することで計算の煩雑さは解消されるが、同時に臨場感も失われる。
コンピュータ統計の演習を通して、多角的な視点から統計学を理解するように努めれば、生徒の統計に対する意識は変わる。学生の統計に対する意識の変化」は、単に「統計学を理解させる」のではなく、「統計学を多面的に理解させる」ことによって達成できると考えられる。手計算のしやすさ」を優先した定義で統計学を理解させるのではなく、「多面的に統計学を理解させる」ことで達成できる。
簡単なデータを用いて計算統計量を計算させるプログラムは、初学者にとって効果的な教育方法であると考えられる。
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