視覚障害者の視覚代行性情報の取得にセンサと通電信号(ES)を組み合わせたデバイスを、視覚障害者の衝突防止情報機器として活用することを提案する。先天性視覚障害者と後天性視覚障害者の違いにより、人が近づいたり離れたりする際の微分判定の成功確率に違いがあるが、その判断に影響を与える通電信号の誤読を引き起こす緊張性発汗現象に伴う皮膚インピーダンスの変化に違いがある。このインピーダンスは交流波の周波数特性を持っている。本研究の目的は、発汗現象に最も関連する周波数とインピーダンスを明らかにすることである。今後、新たな周波数やインピーダンスの考案、吸湿性電極の使用などにより、成功確率の向上が期待される。
対象と方法、研究デザインは実験的介入研究であり、ランダム化比較試験である。研究期間は2021年8月から2022年12月までであった。フィールド実験は、地域の公民館のような公共スペースで行われた。参加者は、先天盲5名、後天盲2名、健常者2名であった。 神経疾患の治療を受けている場合は除外した。介入方法は、超音波センサーで検出した距離データと、iPadにBPIOで接続した低周波通電器を自作のMESHプログラムで利用し、人が近づいたときだけ通電器の信号間隔を変えるというものであった。この条件を介入とした。プラセボ条件(常に微弱電流で、センサーの反応を反映しない通電のみ)を無作為に選択し、盲検下で割り付けた。
結果 ESによる人の近さの判断が80%以上成功した条件における平均インピーダンスは、先天盲被験者と後天盲被験者とで、最小感知電位出力にp<.05の有意差が認められた。
結論 先天盲・後天盲の通電信号により外部環境を認識・判断する感覚入力装置や情報処理では、正答率が高いほど主観的な通電周波数が低くなる傾向があり、その場合、参加者全員が10Hz以上で自覚できた。このことは、通電信号による外部環境情報の判断を支援する装置を実現する上で考慮すべき条件のひとつであると考えられた。
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