日本公衆衛生理学療法雑誌
Online ISSN : 2189-5899
ISSN-L : 2189-5899
5 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 木村 朗
    2017 年 5 巻 2 号 p. 10-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    長寿地域の沖縄県大宜味村住民において身体活動特性が、いつ頃形成されたものか、その生成歴に注目し、ナラティブなデータを収集し、その活動歴の中の特徴と血管機能の関連性を調べることを目指した。本研究の研究疑問は長寿地域として知られる、「大宜味村の高齢者において子どもの頃から青年期、中年期、初期高齢期にいたる、身体活動の経験(語りテキストデータ)から導かれた身体活動嗜好性因子は血管硬度に影響を与えるか」であった。目的は松崎の提唱したR90の仮説に基づいて、経年的、累積的身体活動の語りデータに存在する単語の頻度が血管機能の良否との関連性を示すか否かを明らかにすることであった。対象と方法は、研究デザインはレトロスペクティブ調査研究および横断研究であった。エンドポイントは、血管機能の異常(baPWV>1800)および肥満(BMI>25)と関連するナラティブデータ収集の可否とした。アウトカムは住居エリア・年齢・身長・体重・生活習慣病の有無、bawd、ABI、半構造インタビューによるボイスレコーディングのテキストデータであった。結果、baPWVのリスクのない集団における、身体活動歴に関するテキストデータの特徴は運動という単語の頻出が最多であり、次に回答という言葉を述べた頻度が多く、baPWVのリスクのある集団における、身体活動歴に関するテキストデータの特徴は運動という単語の頻出が最多であり、次に子供という言葉を述べた頻度が多かった。本研究の結論として、大宜味村で生活する高齢女性の身体活動歴に関する語りにおける、運動に対する意識は血管機能のリスクの有無に対して、共通して高く、有意な影響力を示した。語りデータにおいて、運動以外の単語の影響は認められなかった。
  • 木村 朗
    2017 年 5 巻 2 号 p. 18-23
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    はじめに:日本の20歳代の若者では、血糖スパイクの発生率はそれほど高くないと報告されているが、1995年以降に生まれた20歳代の血糖スパイクの発生率は増加している。 目的20代の青年の血糖スパイクを予測する発達上の複雑な要因を探った。 方法:20歳代の血糖スパイクを予測する発達因子の影響を、後ろ向きコホート研究によって分析した。予測因子は、出生体重、3歳の体重(BW)、12歳のBW、15歳のBWであった。高校時代の運動習慣の有無、20代の物理的な不活動の存在、20代の食事中の野菜や果物の摂取、20代の朝食摂取習慣の存在、20代の血糖スパイク(GS)の存在。我々は、肥満の存在を従属変数とするロジスティック回帰モデルを用いて分析した。 結果:67名(平均年齢21±0.4歳、女性51%)が分析に含まれた。血糖スパイクの頻度は13.4%(1.079〜78.219)であった。血糖スパイクへの影響の個々の因子を調整した後、最良の予測モデルは、12歳の性別、性別、定数(誤差)で構成される。唯一有意な予測因子は、12歳の1.222(1.038〜1.438)のBWであった。性別0.05(0.003~0.831)、定数0.0098。性別による効果の差異が示された。興味深いことに、野菜と果物の摂取量、出生時体重、3歳と15歳のBW、高校時代の運動習慣、20代の身体活動、20代の朝食摂取習慣、20代のGSが血糖スパイクの予測に関連する。 2008年頃の日本の経済不況の影響は、伝統的な日本料理から輸入された安価なブドウ糖食品の普及にも影響を及ぼしている可能性がある。 結論:我々の所見は、おそらく2008年頃の12歳の青年の体重を、20歳の青年期の血糖スパイクを予測する発達上の複雑な要因として示している可能性が示唆された。
  • 野口 雅弘
    2017 年 5 巻 2 号 p. 8-9
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    第3回日本公衆衛生理学療法学術大会が品川から上野に移転した京都大学東京オフィスにおいて、平成29年9月13日(土)に開催されました。参加者の方々は、医療機関、行政機関、教育機関などの様々な分野の理学療法士が集まっており、さらに年代もベテラン、中堅から大学を卒業したばかりの若手まで参加されておりました。  学術大会では、木村朗先生から2015年度の研究会活動の報告がなされ、研究会誌のデータベース収載の経過、研究会の今後の展望、2018年国際環境複合要因学会との合同開催についての説明があり、公衆衛生と理学療法、リハビリテーションのつながりと重要性が確認されました。研修講座としてヘルスリテラシーと理学療法、という公衆衛生と英国連邦の理学療法の新たな行動目標の関係について木村先生がご提示されました。  研究発表では、まず鳥毛正弘先生による、「要介護高齢者における 血圧の日内変動の差が及ぼす PWV異常性の探索的検討」、発表がありました。さらに、田辺将也先生からは高齢者の「楽しみ」の構造の分析から公衆衛生理学療法への展望として「施設利用高齢者における脈波伝搬速度(PWV)の悪化を発見する動作パフォーマンスの検討」の発表がありました。最後に、木村朗先生から、「沖縄県大宜味村における血管機能良好者の身体動作における人間特性の傾向」という研究の報告がありました。全ての発表が、今後の公衆衛生理学療法学という分野を考えていく上で興味深い内容であったと思います。発表には、参加者からも様々な質問や意見がなされ、大変有意義な意見交換ができたと思います。  さらに「利用者利益の視点に基づく公衆衛生における理学療法、理学療法サービスはいくらなのか?世界最大の理学療法クリニックセンターができたバンコクのフィールド調査から」というテーマでの木村朗先生の特別講演がありました。内容は、世界最大の規模である、タイの国立大学付属理学療法センターにおける理学療法の値段という、コストベネフィットの視点から、医療経済学的視点の重要性を教えていただきまいた。今後の地域包括ケアの導入において公衆衛生学的視点でコスト意識を持つことの意味を考えるきっかけになりました。  最後には、参加者同士で名刺交換を通した交流も行われました。今後の理学療法を担っていく将来有望な先生方と交流が図れた事は大変有意義な機会となりました。
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