この論文は,アメリカにおいて,学校を基盤とする薬物防止対策のうち,もっとも人気が高い,薬物乱用抵抗教育(D.A.R.E.)プログラムの歴史について述べたものである.プログラムの概要について説明した後,D.A.R.E.に関するエビデンスに着目しつつ,1983年以降21世紀に至る,D.A.R.Eの歴史を振り返る.まず,否定的な研究結果が出ているにもかかわらず,D.A.R.E.の勢いが衰えずむしろ拡大した1990年代半ばから後半に着目し,この矛盾を説明する5つの理由を提出する.ついで,1990年代後半には,研究(とりわけ,政府による大規模なレビューや最善の実務〔ベスト・プラクティス〕のリスト)が大きな影響を与え,D.A,R.E.の勢いは衰え始めた.D.A.R.E.の指導者と評価研究者がプログラムをどのように改善したらよいかを検討するための会合を持ち,現在は,より適切な年齢層をターゲットとする,新しいD.A.R.E.のカリキュラムが導入され,全米100校を超える学校における無作為統制実験によって評価が進められている.
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