新型コロナウイルス感染症の急速な蔓延に対して、感染指定医療機関以外の医療機関でも診療が行われた。とくに在宅診療、一次・二次救急医療機関を支援する、三次救急医療機関側において迅速な体制整備が必要とされた。
当院の受け入れ態勢はいわゆる災害医療対応時のCSCA-TTTに即した形で、救命救急科と感染制御部を中心とした管理体制を構築した。まずCommand and Control(指揮命令系統)を確立し、医療者の個人防護具(PPE)装脱着訓練を繰り返し、診療上の安全を確立した(Safety)。さらには院内連絡体制を確立(Communication)、そして患者を的確にアセスメント(Assessment)することにより、被疑例を感染症の疑い病床に集約した(Triage)。
非COVID-19救急患者の受け入れを最大限確保するため、新型コロナウイルスの感染ステージに応じた、柔軟な病棟ゾーニングを行った。これらの原則を守った対応で、現在まで新型コロナウイルスによる院内感染・水平感染はみられておらず、COVID-19診療と一般救急診療の両者を滞りなく応需することができている。
地域包括医療の最後の砦として、救命救急センターが機能を持続させるためにも、災害医療で得られた知識を応用することも有用であると思われた。
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