日本在宅救急医学会誌
Online ISSN : 2436-4738
Print ISSN : 2436-066X
5 巻, 1 号
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目次
寄稿
総説
  • 横田 裕行
    原稿種別: 総説
    2021 年 5 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/08/12
    ジャーナル フリー

     日本医師会は2020年4月18日に新型コロナ感染症対策と予防のために有識者会議を立ち上げた。日本在宅救急医学会もそれにかかわり、タスクフォースを組織して在宅医療の視点から課題を明らかにし、新型コロナウイルス感染症対策や予防の課題、解決策の提案を行い、2020年7月初旬に「新型コロナウイルス感染拡大と在宅医療」報告書を公表した。この報告書は在宅医療に係る医師、看護師、介護関係者、その他の医療スタッフはもちろん、患者やその家族のために記載されたものである。報告書は感染防御具の確保とそのための行政や国の支援の重要性を強調している。そして、在宅医療体制と地域の医療機関の密接な連携が必要であり、在宅での治療の際には保健所と医師の密接な連携が必要であることが述べられている。

  • 小豆畑 丈夫
    原稿種別: 総説
    2021 年 5 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/08/12
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大がとまらない今、在宅医療の現場においても、その対応が求められている。新型コロナウイルスの検査・診療が、保健所から地域のかかりつけ医に委譲された現在(2020年10月以降)、在宅医療の現場でも、積極的にSARS-CoV-2のPolymerase Chain Reaction (PCR)検査を試行すべきと考える。在宅患者が、COVID-19が疑われるか、その濃厚接触者の疑いがある場合、在宅にて、PCR検査の検体採取を行うことを考慮すべきである。また、患者の住環境や検査の精度を鑑みて、咽頭拭い法と唾液法のどちらかを選択すべきと考える。

  • 山岸 暁美
    原稿種別: 総説
    2021 年 5 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/08/12
    ジャーナル フリー

     緊急事態宣言が発出された7都府県に所在する477の訪問看護事業所から得た調査結果から、2020年4月時点:第1波の状況、および現場の課題と工夫、そして、今なおも共通して存在する課題を整理した。さらに、Withコロナ時代、訪問看護に期待される機能について、1)在宅療養者(外来通院者・施設入居者含む)の感染予防、急性憎悪・救急搬送の予防、2)ACP、共同意思決定、3)急性期治療を終えた方が元の生活に戻るサポート、4)新型コロナウイルス感染者の在宅療養支援、5)地域における感染対策の推進をあげ、その具体について論考した。

     このウイルスへの感染を予防するために、高齢の方や基礎疾患を抱える方は生活を大きく制限され、人とのつながりのなかに存在する「居場所」や「役割」、そして「生きがい」をも大きく侵蝕されている。日々の生活のなかで確実にかつ生活を侵食しないことを重視した実践知をもつ訪問看護師の地域に根差した活動が期待される。

  • 武藤 真祐
    原稿種別: 総説
    2021 年 5 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/08/12
    ジャーナル フリー

     日本では新型コロナウイルス感染症の第一波においては感染爆発には至らなかった。その理由として高齢者施設での感染管理があげられる。高齢者のなかでも、介護施設などに集団で居住している人の感染リスクや死亡率は高い。実際に海外では介護施設での死亡者数は甚大であるが、わが国では圧倒的に少ない。そもそも介護施設での生活はクラスターを起こしやすく、結果として介護崩壊に容易につながる。わが国でも複数の介護施設内においてクラスターを起こしたが全国的な介護崩壊は起こらなかった。その理由の一つとして、介護現場が毎年インフルエンザの対応などで感染症に慣れていることがあげられる。また、厚生労働省主導で事務連絡を適宜発出され、それを介護現場がきちんと順守したことも有効であった。発熱患者に対しての診療体制が国全体で整いつつあり、介護現場も制度をよく理解して適切に医療資源を利用してクラスター対策に努めることが肝要である。

  • 新田 國夫
    原稿種別: 総説
    2021 年 5 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/08/12
    ジャーナル フリー

     ACPの本質である自己決定権の法的基礎について、すべての国民は個人として尊重される。

    「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする(憲法13条)」を自己決定権の根拠規定と考える。突然訪れた終末期状態において、果たして患者が本当に何を望んでいたかは不明が多い。医師などの医療従事者から適切な医療情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療ケアを受ける本人による意思決定を基本とすることが重要であるが、それ以前に、日常の医療のなかで、人生の最終段階における医療ケアに対しての思いを表現することが必要である。そのため、ACPは「生命を脅かす可能性がある疾病」がなくとも、「いつでも話し合いたいときに始め」、「何度も繰り返し行う」ことが求められる。

報告
  • 横堀 將司, 重田 健太, 溝渕 大騎, 平林 篤志, 五十嵐 豊, 中江 竜太, 恩田 秀賢, 増野 智彦, 布施 明, 横田 裕行
    原稿種別: 報告
    2021 年 5 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/08/12
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症の急速な蔓延に対して、感染指定医療機関以外の医療機関でも診療が行われた。とくに在宅診療、一次・二次救急医療機関を支援する、三次救急医療機関側において迅速な体制整備が必要とされた。

     当院の受け入れ態勢はいわゆる災害医療対応時のCSCA-TTTに即した形で、救命救急科と感染制御部を中心とした管理体制を構築した。まずCommand and Control(指揮命令系統)を確立し、医療者の個人防護具(PPE)装脱着訓練を繰り返し、診療上の安全を確立した(Safety)。さらには院内連絡体制を確立(Communication)、そして患者を的確にアセスメント(Assessment)することにより、被疑例を感染症の疑い病床に集約した(Triage)。

     非COVID-19救急患者の受け入れを最大限確保するため、新型コロナウイルスの感染ステージに応じた、柔軟な病棟ゾーニングを行った。これらの原則を守った対応で、現在まで新型コロナウイルスによる院内感染・水平感染はみられておらず、COVID-19診療と一般救急診療の両者を滞りなく応需することができている。

     地域包括医療の最後の砦として、救命救急センターが機能を持続させるためにも、災害医療で得られた知識を応用することも有用であると思われた。

編集後記
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