本研究では, 中長距離選手におけるスパイクシューズ着用時とランニングシューズ着用時の走りの特徴を明らかにするため, 被験者に大学陸上競技部に所属する中長距離選手15名を用い, スパイクシューズ着用時およびランニングシューズ着用時において60mの全力疾走を行った. 高感度光学センサーを持つランニングデータ収集システムを用い, 30m~50m区間おける1ステップごとの滞空時間, 接地時間, ステップ長, ピッチ, 速度を測定し比較検討した. その結果は以下の通りである.
1. スパイクシューズ着用により, 60m走記録と接地時間は有意に低く, 滞空時間, ステップ長, 速度は有意に高かった.
2. 両シューズとも, 60m走記録と接地時間, そしてステップ長と滞空時間, ステップ長と速度の間に正の相関関係が認められた.
3. 両シューズとも, 60m走記録とステップ長, 60m記と速度, そして接地時間と速度の間に負の相関関係が認められた.
4. ランニングシューズ着用時に, ピッチと60m走記録の間に負の相関関係が認められ, ピッチと速度の間に正の相関関係が認められた.
5. スパイクシューズ着用時に, ピッチと滞空時間の間に負の相関関係が認められた.
以上のことから, ランニングシューズ着用時の疾走の特徴は, 疾走速度の増大には, ステップ長の増大に加え, スリップロスを補うためのピッチの影響があることが示唆された. すなわち後方へ脚を流さず, 素早く戻す意識を持つことが必要であると考えられる.
中長距離走者においてもスパイクシューズ着用時の疾走速度の増大には, ピッチの影響よりも, ステップ長の影響が大きいことが明らかとなった. 日頃のトレーニングにおいては, 滞空時間が長くなりすぎないよう, ピッチとステップ長のバランスを考慮した走りをする必要があると考えられる.
抄録全体を表示