要旨:糖尿病の罹患率の増加や高齢化に伴い,末梢循環障害(以下PAD,peripheral arterial disease)患者の症例も増加している.従って,重症下肢虚血(以下CLI, critical limb ischemia)に対する治療の戦略がこれからの重要課題である.Limb salvageを断念したCLI患者の外科的治療(primary amputation)は生命予後の改善と最大限の運動機能の再獲得を目指したものでなければならない.生命予後の側面から判断すると,最も好ましい切断レベルはminor amputationである.しかし,不幸にもmajor amputationを余儀なくされた場合においては,可能な限り下腿切断が選択されるべきである.機能予後の側面からは,運動機能(歩行能力)を最大限に生かすことを考えた場合,major amputationの中で好ましい切断レベルは下腿切断である.PAD起因の下肢切断者が歩く希望を持つためには膝関節の温存が必要である.CLI患者の外科的治療のdecision makingが下肢切断者のリハビリ転帰に与える影響は大きい.本稿では,生命予後と機能予後の両面から外科的治療のdecision makingについて文献的考察を加えて言及した.
抄録全体を表示