日本下肢救済・足病学会誌
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1 巻, 1 号
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Ⅰ 創刊号に寄せて
  • 大浦 武彦
    2009 年 1 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:日本は超高齢化社会になりつつあり,糖尿病患者の増加と共に,閉塞性動脈硬化症(PAD)など下肢・足病が増加の一途をたどっている.欧米においては,100年も前から下肢・足の重要さを認識しており,これの対応として医師以外に足病医の資格をつくっているが,日本においては下肢・足病は全く無視され医療の谷間におかれている.しかし,下肢を救済し,立ち上がらせ,歩行させることは寝たきりを予防し,究極的には人間のQOLと尊厳維持につながるものと考えている.本論文では,欧米並びに日本における下肢・足病治療の現状と下肢切断の予後の悪さなどについて述べた.今回,日本下肢救済・足病学会を立ちあげ,全力をあげて下肢を救済し,足病を治すこととなった.この学会は 3 つのstreamsからなっている.集学的治療においては循環器内科,血管外科,形成外科の治療グループ,基本疾病を管理する糖尿病内科,腎臓内科,透析医など基礎疾患治療グループ,次いで看護師,リハビリテーション科,血管診療技師,義肢装具士などコメディカルグループの 3 つのストリームが連携をとって活動を行う.最後に今後本学会が活動していくための課題として,厚労省にお願いしたいことについて述べた.
  • 中村 正人
    2009 年 1 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:生活スタイル,食生活の欧米化によって疾病構造は大きく変わり,末梢動脈の閉塞性疾患の代表はバージャー病から動脈硬化症へ変わった.また,罹患患者の増加,啓蒙運動,治療の選択肢が増えたことなどによって本疾患に対する関心も急速に高まってきている.診療において,本疾患の中で最も重症の病態である重症虚血肢は他とは異なった視点が必要である.救肢が治療のゴールであり,そのためには集学的診療,地域密着かつ完結型の診療体系の確立が重要である点である.多くの診療科の病院間の横断的な連携が要求される点である.現況を見てみると,高齢化社会,血液透析例の増加によって本病態はさらに増加していくものと推測され,各診療科における関心は大いに高まっている.救肢は一つのトピックスにとどまらず大きな臨床テーマとして各診療科でとらえられるようになった.この背景を考えると横断的な診療科による本学会の設立は時宜を得た必然性のある流れとも考えられる.本学会は多くの横断的な診療科の集合であるため新たな進展につながる可能性を持っているが,逆に一方通行の議論に終始する危険性も秘めている.同じベクトルを向いていることを認識し,お互いの知識,経験を共有する会となることが重要である.新たな時代に向かって本学会は船出した.本稿では現況を総括し問題点について展望する.
Ⅱ 下肢救済・足病の現状と将来
  • 浦澤 一史
    2009 年 1 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:糖尿病罹患率の増加に伴い,閉塞性動脈硬化症を含む末梢血管疾患の発症頻度は増加傾向を示している.閉塞性動脈硬化症が進行し重症下肢虚血となった症例の生命予後は極めて不良であることが知られている.重症下肢虚血症例の生命予後を左右する下肢切断を回避するためには,血管内治療を含めた積極的な血行再建術が必須となる.ステントなどの医療器材の開発が進み,血管内治療の成績は以前と比較し著しく向上している.今後さらに,動脈硬化切除デバイスや薬物溶出ステントなどの新しい技術がこの分野に導入されることで,虚血肢救済において血管内治療が占める役割は今以上に大きくなるものと予想される.
  • 太田 敬
    2009 年 1 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:本疾患は若年の喫煙男性に好発し,下腿・足部動脈を病変の主座とする慢性動脈閉塞症であり,厚生省の特定疾患に認定されている.病因については未だ不明であるが,患者数は激減している.肢端の難治性潰瘍出現による長期入院は,働き盛りの患者のQOLを著しく低下させる.バイパス手術の適応となる症例は少ないが,腰部交感神経節切除術は短期・長期的な効果が期待できる.禁煙指導は治療の根幹をなすもので,虚血症状の重症化や再発を防止できる.臨床経過を完全に追跡できた118例142肢のうち下肢の大腿・下腿切断となるのは約12%と少なく,また虚血徴候の増悪は60歳以上になると稀となる.生命予後は閉塞性動脈硬化症に比し良好で一般人とほぼ同じである.
  • 小林 修三
    2009 年 1 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:透析患者の下肢末梢血管障害(peripheral artery disease: PAD)を理解する重要な理由は,その高い発症率と下肢切断を介し生命予後をも脅かす可能性が高いことにある.透析患者の下肢切断率は年々増加傾向にある.下肢切断率は,わが国では2000年末には透析患者全体の1.6%であったが2005年末には2.6%と増加し(24万人中4755人),その70%は糖尿病透析患者である.また,透析患者の死亡原因は,第 1 位心不全(25.8%),第 2 位感染症(19.2%),そして第 3 位脳血管障害(9.8%)であるが,PAD患者の死亡は,併存する心脳血管障害や低栄養,潰瘍壊死部からの感染症によるものが多く,上記第 1 位から第 3 位のいずれかに登録される場合がほとんどである.死亡の原疾患としてのPADは見逃されやすいが,透析患者の下肢切断術後の生命予後を検討すると,心筋梗塞に劣らずその予後が著しく不良である事が理解できる.前述のごとく,透析患者では下肢切断後の生命予後が著しく不良となるため,少しでも早期に疾患を診断し適切な治療を行なう事が重要である.
  • 市岡 滋
    2009 年 1 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
  • 両田 美智代
    2009 年 1 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:近年,糖尿病患者の増加に伴い,足病変も年々増加の一途を辿っている.糖尿病足病変は,予防やケアを怠ると潰瘍や壊疽の発病にも繋がり,ひいては下肢の切断にまで至るケースもある.2008年より厚生労働省の「糖尿病合併症管理料」加算が認められるようになったが,「糖尿病患者の足病変は重点的に指導すれば発症を予防できる」という評価があり,新設されたものである.現在,糖尿病看護認定看護師が中心となってフットケアの研修活動を行っているが,診療報酬改定において,2010年にその調査・評価の時期を迎える.関わるケアの数はどうか,質においてはどうか,また評価としてのツールや記録なども考案,修正が必要となるであろう.今後一層質の向上を目指し,様々な取り組みがされると思うが,多くの看護師が,予防的視点でフットケアに係わると共に,その役割を担えることを期待する.
  • 陳 隆明
    2009 年 1 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:糖尿病の罹患率の増加や高齢化に伴い,末梢循環障害(以下PAD,peripheral arterial disease)患者の症例も増加している.従って,重症下肢虚血(以下CLI, critical limb ischemia)に対する治療の戦略がこれからの重要課題である.Limb salvageを断念したCLI患者の外科的治療(primary amputation)は生命予後の改善と最大限の運動機能の再獲得を目指したものでなければならない.生命予後の側面から判断すると,最も好ましい切断レベルはminor amputationである.しかし,不幸にもmajor amputationを余儀なくされた場合においては,可能な限り下腿切断が選択されるべきである.機能予後の側面からは,運動機能(歩行能力)を最大限に生かすことを考えた場合,major amputationの中で好ましい切断レベルは下腿切断である.PAD起因の下肢切断者が歩く希望を持つためには膝関節の温存が必要である.CLI患者の外科的治療のdecision makingが下肢切断者のリハビリ転帰に与える影響は大きい.本稿では,生命予後と機能予後の両面から外科的治療のdecision makingについて文献的考察を加えて言及した.
Ⅲ 下肢潰瘍の基礎知識
  • 寺師 浩人
    2009 年 1 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:本邦では,下肢潰瘍患者の実態は把握されておらず,どれほどの患者が存在するのか不明であるが,食生活の欧米化などにより糖尿病罹患患者が増加していることなどから実際の下肢潰瘍に悩む患者の総数は増加傾向にあることが予想される.また,糖尿病性や動脈性のみならず,静脈性やその他の下肢潰瘍の実態も不明のままである.このような下肢潰瘍の患者に対して,欧米では足病医を中心とする創傷センターが実働し,科を超えた集学的治療が施行されているが,本邦においては創傷センターがほとんどないに等しい.たった一つの下肢潰瘍が一つの科のみで治癒へ導くことが困難であるのにもかかわらず,集学的治療がなかなか進んでいない現状にまず目を向けなければならない.潰瘍に陥っている原因を突き止め,多科が協力して治癒へ導き,フットケアとフットウェアを含めた予防に務めることが肝要である.
  • 加藤 理賀子
    2009 年 1 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:足潰瘍・足壊疽は動脈硬化が背景にあり,動脈硬化を促進する要因として高血糖がある.糖尿病患者の増加に伴い動脈硬化性疾患を持つ患者の増加は容易に推察できる.足潰瘍は疾患と加齢に伴う身体機能の低下や生活習慣・生活環境などの要因が加わり,足潰瘍を起こす.糖尿病患者の動向として,今後は高齢患者の増加が予測され,身体機能の低下や生活環境などの要因によって足潰瘍が形成されやすい条件が加わると考えられる.足潰瘍の予防として看護師によるフットケアが各施設で行われるようになってきたが,施設の集学的治療の取り組みの違いもあり,ケアの標準化まで至っていないのが現状である.フットケアが足潰瘍の予防につながっているという手ごたえを実感するなか,行っているケアを集積して,看護としてのケアの標準化につなげていくのが早急の課題と考える.
  • 大平 吉夫, 加藤 展宏, 山口 篤史, 佐藤 博信
    2009 年 1 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:フットウェアは整形外科疾患から内科的疾患までのあらゆる治療過程や再発防止・予防まであらゆる場面で使用されている.特に足部の骨折や足底部の潰瘍の治療に使用される,靴・足底装具は欠かすことのできないアイテムの一つである.しかし使用方法や目的が間違ってしまうと,かえって痛みの増加,潰瘍の増悪になることもあるので注意が必要である.目的に合わせた脚の検査,評価を行ない,フットウェアの製作,フォローアップにつなげていかなければならない.
Ⅳ 日本フットケア学会から
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