日本下肢救済・足病学会誌
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11 巻, 1 号
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会告
巻頭言
総説
  • 若林 秀隆
    原稿種別: 総説
    2019 年11 巻1 号 p. 2-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル 認証あり
    末梢動脈疾患患者では,サルコペニアやフレイルを認めることが多く,下肢切断や死亡のリスク因子である.そのため,サルコペニアやフレイルの評価と治療が重要である.サルコペニアの原因は,加齢,活動,栄養,疾患に分類され,入院中の不適切な活動制限や栄養管理,医原性疾患が原因の場合,医原性サルコペニアと呼ぶ.フレイルには,身体的,精神・心理的,認知的,社会的がある.身体的フレイルのおもな原因は,サルコペニア,低栄養,ポリファーマシーであり,ポリファーマシーは医原性フレイルである.医原性のサルコペニアやフレイルを予防することが重要である.サルコペニアやフレイルに対しては,リハビリテーションと栄養の視点で生活機能やQOLを最大限高める,リハビリテーション栄養の考え方が有用である.末梢動脈疾患の治療と同時に,早期からサルコペニアやフレイルの存在を疑って診断し,リハビリテーション栄養の視点で介入してほしい.
特集:腎不全・透析患者のPAD~高齢腎不全・透析患者の足病診療
  • 丸山 啓輔, 平松 信
    原稿種別: 特集
    2019 年11 巻1 号 p. 10-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル 認証あり
    わが国の透析患者は高齢化の傾向が続いている.高齢者は加齢による種々の機能低下や複数の合併症を有することが多く,さらにはサルコペニア・フレイル・認知症などの問題もあり介護と支援が必要となることが多い.高齢者の透析医療においては,透析療法の導入が患者にとって医学的利益があるかを熟慮し,血液透析(HD)と腹膜透析(PD)の選択では,それぞれの利点と欠点を十分に検討するとともに,quality of life(QOL)の高さや満足度により重点をおき,介護者の負担軽減への考慮も必要となる.介護と支援を必要とする患者では,地域包括ケアシステムの構築を図るなかで,医療保険と介護保険の連携や,地域連携の強化により社会資源の活用を進めることが不可欠であり,assisted PDは高齢者の透析を支えていく重要な手段の1つと考えられる.
  • 大迫 希代美, 音部 雄平, 平木 幸治, 櫻田 勉, 柴垣 有吾
    原稿種別: 特集
    2019 年11 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル 認証あり
    日本は超高齢社会であり高齢慢性腎臓病患者の数は増加している.加齢により生理的機能が低下し,腎機能低下や多数の併存疾患などの影響により慢性腎臓病・透析患者はサルコペニア,フレイルになりやすい.高齢者の健康寿命を延ばすことが重要とされる近年,高齢慢性腎臓病患者の幸福のためには身体機能を維持するということは必須であると考える.慢性腎臓病患者の健康寿命を考慮するうえで医療的な介入は当然だが,身体機能や栄養的側面,社会的貢献からのアプローチが大変重要になる.基本的なサルコペニア・フレイルの概念・診断からCKD患者におけるサルコペニア・フレイルの頻度・予後・対策を論文的考察を加え検討した.
  • 上尾中央総合病院におけるフットケアチームの立ち上げと運用から
    緒方 信彦, 原口 信輔, 一色 高明, 藤原 英紀, 山本 有祐
    原稿種別: 特集
    2019 年11 巻1 号 p. 23-27
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル 認証あり
    高齢維持透析患者は徐々に増加しており,2016年現在で透析患者の3人に1人が後期高齢者となっている.糖尿病性腎症による末期腎不全患者が多いため,血管合併症による心血管イベントやCLIが増加している.高齢維持透析患者は,出血リスクも高いため,抗血栓療法にも注意が必要である.高齢腎不全CLI患者に対する切断回避ならびに生命予後を優先した治療は,治療の長期化によりかえってADLの低下を招く危険性もあり,注意が必要である.個々の症例によって,目標とすべき治療ゴールの設定は異なるので,理学療法士やソーシャルワーカーなど,多職種を巻き込んだアプローチが不可欠であると思われる.
  • ~高度腎機能障害患者指導加算の紹介も含めて
    上月 正博
    原稿種別: 特集
    2019 年11 巻1 号 p. 28-36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル 認証あり
    慢性腎臓病(CKD)患者は,高齢化や運動不足に加えて,尿毒症物質の蓄積,アシドーシス,炎症性サイトカインなどのためフレイル・PEWをきたしやすい.CKD患者ではPADの合併が高く,腎機能障害は新規PAD発症の危険因子である.CKD患者は,フレイルや糖尿病性神経障害のために間欠性破行などPADの症状が出にくいので,PADの診断が遅れないように留意する.CKD患者は,運動耐容能の低下やフレイル・PEWは生活の質や生命予後に大きな影響を与える.腎臓リハビリテーション(腎臓リハ)は,運動療法,食事療法と水分管理,薬物療法,教育,精神・心理的サポートなどを行う,長期にわたる包括的なプログラムであり,透析患者の筋量増加,栄養状態改善,QOL向上や生命予後改善をもたらす.また,CKD患者の腎機能を改善させ,保存期CKD患者の透析導入を先延ばしできる可能性が高い.高度腎機能障害患者指導加算として診療報酬にも収載され,腎臓リハのさらなる普及・発展が期待される.
下肢救済-私たちの取り組み(14)
  • 矢野 晶子, 寺部 雄太
    原稿種別: 下肢救済-私たちの取り組み
    2019 年11 巻1 号 p. 37-41
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル 認証あり
    当院では形成外科医がゲートキーパーとなり,フットケア外来を行っている.下肢救済は多職種での連携が重要であり,形成外科のほかに循環器科,血管外科,皮膚科,腎臓内科,看護師等の複数の診療科で取り組んでいる.外来では巻き爪,胼胝,鶏眼,足部変形,糖尿病性足潰瘍や重症下肢虚血等のさまざまな疾患の患者の診察を行っている.特に透析患者の重症下肢虚血は増加傾向にあり,当院でも近隣の透析施設からの紹介が多い.透析施設と基幹病院が連携をすることで,予防的ケアから専門的治療が可能となり,地域で透析患者の救肢に取り組むことが可能となる.一方で,創傷を有する患者の入院期間は長期となり,自宅へ戻れない症例も出てくる.現在,厚生労働省はできる限り住み慣れた地域で療養することができるよう,在宅医療を推進しており,治療の場が病院から在宅に移行してきている.患者が望む生活を送るには院内連携のみならず,地域連携が重要な課題となってくる.
難治性創傷の最新治療(7)
  • 古川 雅英, 佐藤 精一, 石川 敬喜, 松本 健吾, 石原 博史
    原稿種別: 難治性創傷の最新治療
    2019 年11 巻1 号 p. 42-48
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル 認証あり
    フィラピー®は2000年に台湾で開発製造された遠赤外線の照射器で,シャント血管開存の維持,シャント血流量の増加,シャント血管の発達などを目的に台湾,中国,ヨーロッパを中心に世界10数ヵ国で使用されている.フットケアにおける有用性についてはまだ報告が少ない.今回われわれは当院創傷ケアセンターで入院治療を行った患者のうちフィラピー®を使用した5例の結果を検討した.男性4名,女性1名の5例で全例CLIの確定診断後EVTを施行され,趾もしくは前足部の切断術を施行後創離開や治癒不全の保存治療に用いた.有効であったのは4例で,有効とはいえず大腿切断となった症例が1例あった.本機器は移動可能で場所を選ばす,細かい設定は不要で適切な距離で皮膚に直接照射をすればよく,取り扱いが簡便で安全に使用できた.ほかの補助療法との併用も可能であり,ある程度の血行がある症例では補助療法として有効であろうと思われた.
症例
  • 岡林 裕代, 大利 純世, 浜田 佐智子, 西村 哲也, 山崎 文靖, 岡村 高雄
    原稿種別: 症例
    2019 年11 巻1 号 p. 49-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル 認証あり
    重症下肢虚血(CLI)の予後は悪く,血管内治療後の再狭窄率も高い.下肢血流障害の結果生じる潰瘍はその疼痛とともにQOLを大きく低下させる.今回,血行再建後に繰り返す再狭窄および難治性潰瘍に免荷と近赤外線治療を行い,潰瘍および下肢血流に良好な効果が得られたCLI症例を経験したので報告する.症例は喫煙歴,高血圧のある人工透析中の70歳男性.血管造影で下腿3分枝病変を認め血管内治療を行ったが,悪化を繰り返し6回の血管内治療を行った.潰瘍の縮小は認めるも完治にいたらず,疼痛も寛解しなかったため,免荷サンダルの改変に加え近赤外線治療を行い5ヵ月目に潰瘍の完全な治癒が得られた.近赤外線治療中の下肢血流も保たれた.
地方会抄録
編集後記
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