日本経営診断学会全国大会予稿集
日本経営診断学会第43回全国大会
選択された号の論文の43件中1~43を表示しています
共同プロジェクト報告
  • 企業のサスティナビリティを考える
    井上 善博
    p. 14-17
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    創業100 年を超えると、長寿企業と呼ばれることが多い。日本は、創業100 年を超える長寿企業が世界一多い国である。さて、なぜ日本にはこのように長寿企業が多いのだろうか。そこには、欧米企業は違う経営理念がある。その継続性は、欧米の株主市場主義対するお客様第一主義である。「暖簾の上にあぐらをかいて」お客様に対する商道徳を犯すような企業は、近年の企業不祥事によって明らかになっている。このような視点から、お客様に求められ、ゴーインクコンサーンとして存在し続ける日本企業の秘訣について考察する。
統一論題報告
  • 英国プロサッカークラブ経営を例として
    西崎 信男
    p. 27-31
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    21世紀の企業経営では、単にステークホルダーを意識するだけではなく、社会に顕在・潜在する問題に取り組み、社会の力であるソーシャル・キャピタルを活用しながら、解決を図っていくことが重要である。サッカーが正式に誕生してから150年余、ソーシャル・キャピタルといえる「クラブ」形式で運営されている。売上高が急増する一方で企業倒産も増加している。英国プロサッカークラブの経営、特にファンの経営参加のシステムである英国サポータートラストを例に、財務運営とチーム成績の二律背反の企業運営を乗り切るための仕組みを紹介することによって、21世紀の中小企業企業経営に示唆を得たい。
  • 小松崎 雅晴
    p. 32-35
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    人口減少、消費低迷により、拡大再生産型のチェーンストアは成長条件を失いつつある。競争力と生産性を高めるために大型化、多店舗化した既存店はオーバーストアによる商圏縮小、インターネット通販へのチャネルシフトなどで設備生産性が著しく低下した。このような環境下では、損益分岐点が高く、経費が固定費的に発生する小売業は、規模が大きくなるほど固定費負担が高まり、経営の自由度を失う。成長に伴う構造的矛盾をCGP(Chain store growing paradox)と名付け、人口減少時代に適した新たな流通理論を提唱する。インターネットの普及は、小売を特定事業者が行う「業」から誰もが行うことができる「機能」へと変えた。一部の大型企業、生産性の低い既存店に集中し、停滞した流通、小売を、地域産業を活かしたロジスティックス型に置き替えることで、流通、小売と同時に地域の活性化も可能になる。
  • 高橋 昭夫, パトリック H. バックリー
    p. 36-39
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    本研究は、個人レベルや国レベルに比べて、研究が遅れているといわれるコミュニティ・レベルのQOLを扱ったものである。姉妹都市関係にある2つのコミュニティを対象に、姉妹都市交流者をデルファイ法における"専門家"と規定し、4 ラウンドの分析を行った。これまでのデルファイ法による研究では、収斂された結果にのみ着目することが多かったが、本研究では、ラウンド間の変化プロセスに関する分析も実施した点に特徴がある。
  • 原田 保
    p. 40-43
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    本稿は、地域ブランドをコンテクストベースで捉えることに他の理論との最大の差異がある。また、著者は、地域ブランドを構成する要素はゾーン、エピソード、アクターズネットワークの三つである、と定義する。それゆえ、地域ブランディングを戦略的に推進するには、ゾーンデザイン、エピソードメイク、アクターズネットワーキングの的確な実現と、これらの組み合わせの戦略的適合性が不可欠になる、と結論付けられる。
診断事例報告
自由論題報告
  • 日沖 健
    p. 56-59
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    コンサルティングの成果は、コンサルタントとクライアントの信頼関係の有無に大きく左右すると推測される。本論文は、近年コンサルティングを実施したクライアント4社へのインタビュー調査を元に、信頼関係の形成要因について考察した。調査から以下の3つの仮説が得られた。①クライアントは、コンサルティングの成果実現に信頼関係が重要な役割を果たすと認識している、②信頼は、大きくコンサルタントを起用する導入段階とプロジェクトを進める実施段階に分けて、段階的に形成される、③導入段階では、「コンサルタントの人間性」や「コンサルタントの実績」が、実施段階では、「コンサルタントの取り組み姿勢」や「短期の成果」が形成要因として重要である。
  • 経営理念浸透活動の現実と未来
    堀尾 嘉裕, 舘岡 康雄
    p. 60-63
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    一般に、複雑性が高まり不確実な時代においては、大きな戦略に基づく実践(企画部が計画を立て、オーソライズされた案を現場が整斉と実践する)が功を奏しにくくなっている。絶え間なく起こる現場の変化や多様性に効果的に対処するには、構成するメンバーの対応が企業全体のミッションやビジョンと整合性を持ちながら顧客への価値提供という自律的な活動が必須となる。ここに理念を基軸にしたマネジメントの水平が開かれるのである。しかし、その理念の浸透は必ずしもうまくいかない。また、理念浸透と業績の関係も必ずしも明らかになっていない。本稿では、これらの課題に光を当てながら、成功している企業における将来課題についても詳述する。
  • 技術革新を生み出す要因の実証研究からの示唆
    櫻井 敬三
    p. 65-68
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    本稿は技術革新を伴う新製品を誕生させたプロジェクト活動に関するアンケート調査とインタビュー調査に基づく実証研究成果を経営診断の立場で再検証し、革新性や創造性の観点での診断のあり方について考察する。具体的には、モノづくりを行う中小企業に焦点をあて、規模拡大による利益誘導(拡大型路線)ではない革新性や創造性を引き出し、結果として革新技術製品を生み出すことによる利益誘導(深化型路線)を可能とする企業再生のための診断のあり方について具体例をもとに考察する。その結果、従来多用された市場分析から開始する方法よりも、本方法で提案する自社の保有技術をもとに自らの感性を信じ用途開発先を洞察しその後確認のために市場調査を行うことが有効であるとわかった。
  • コミュニティ・カフェ"のら"の支援事例をもとに
    佐藤 茂幸
    p. 69-72
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    社会に革新をもたらす手法として、ソーシャルビジネスが注目されている。しかし、ソーシャルビジネスを展開し、革新性・社会性・事業性を追及する社会起業家にとって、多くの克服すべき課題が存在する。本報告書では、そうした社会起業家をサポートする事業プロデューサーの有効性を示す。ソーシャルビジネスの構築メカニズムを明らかにし、そこに対応するプロデューサーの融合・転換・調整の行動項目を提示する。そして、筆者がプロデューサーとして関わった「コミュニティ・カフェ"のら"の支援事例」をもって、具体的な支援のイメージを示していく。
  • 自己組織の観点から
    野本 千秋
    p. 73-76
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    本論は、従来のローバラエティー企業に代わる高度の複雑性をマネージし得るハイバライエティー企業を構想し、それを、ビアーのVSM(Viable System Model)に求めている。このモデルは、組織研究自体に大きな影響を及ぼしているように思えないが、自己組織の原理を十分に活かしている。このモデルを現実世界の企業に適用することは容易なことではないけれども、本論はこれに挑戦している。
  • 田川 元也, 山本 勝, 横山 淳一
    p. 78-81
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    介護保険制度は,開始から10 年が経ち,日本の高齢者福祉を担う制度として定着してきているといえよう。しかし,民間企業やNPOなど多様な事業者によるサービス提供により成り立つとされた制度創設時の理念とは裏腹に,安定したサービスが継続して提供されているとは言いがたい状況にある。そこで,まず,サービス提供者の立場から現行制度の問題点の整理を行う。その上で,民間のサービス提供者が顧客ニーズを的確に把握し,利用者本位のサービスを提供しながら,なおかつ事業として採算性を保つために必要なマーケティング的視点についての提言を行う。
  • 永井 昌寛, 山本 勝, 横山 淳一
    p. 82-85
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    :保健・医療・福祉包括ケアシステムを構築・運用し,保健・医療・福祉サービスを住民に適切に提供するには,都道府県ならびに市町村による運用計画の策定・実施・評価・見直し,関連施設の調整・支援,住民の参加への啓発活動など多くの重要な課題がある。とくに,市町村は現場の状況を踏まえて保健・医療・福祉包括ケアシステムが適切に推進されるように住民および関係者(関係施設)の調整・啓発・支援等を実施していく必要がある。そこで,本研究では,市町村を対象に実施した保健・医療・福祉包括ケアシステムに関する意識実態調査結果をもとに,保健・医療・福祉包括ケアシステムに関する意識と現状について市町村規模別に考察を行っている。
  • 横山 淳一, 山本 勝, 永井 昌寛
    p. 86-89
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    パソコンやインターネットの普及に伴い,医師会事務局の情報化は着実に進展している。しかしながら,情報化の効果として期待されている,医師会事務局における情報発信業務の効率化,省力化,紙メディアによる情報発信の減少等の効果が不明瞭である。本研究では,医師会事務局における情報化の効果を評価・診断するために,「ペーパーレス」をキーワードに分析を試みる。特に対象業務を,全国のどの医師会でも実施している「理事会開催」業務として,情報化およびペーパーレス化の進展状況を分析する。
  • 永岡 幸祐
    p. 90-93
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    本稿の目的は種々の老人福祉サービスの提供を主たる業務とする若干の企業の経営実態を分析することにより、それらの企業の抱える経営上の問題点を探るとともに、今後の展開のためのいくつかの経営政策的提言をするところにある。よって本稿では、ミクロ経済の立場から老人向けの養護・介護サービス提供を業務とする7企業を対象に、その収益性、財務安定性、労働生産性などを中心に分析を行い、これをベースに、これら企業の今後の経営政策的展開の方向を探るとともに、国の今後の老人福祉政策改革へのいくつかの提言を行うこととしたい。
  • 中部トラック総合研修センターの活性化
    吉成 亮, 山本 勝, 川崎 綾子
    p. 94-97
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    日本におけるトラック業界において、運送事業者の人材開発に関する問題は深刻である。そこで、長期的なビジョンとそれにともなうコストという条件を踏まえて、各社が人材開発を行うことにより、その都度時流のあった人材を育成するのではなく、業界全体と個別企業の将来像を踏まえた、理想する人材を一貫して育成することが望ましい。しかしながら、現状では運送事業者の利益を確保するだけでも困難な状態であり、各企業の本研究はそのための一歩にしたいと考えている。日本におけるトラック業界の現状を把握し、今後の望ましい業界像を検討する。その上で、トラック業界における人材開発に関して考察する。
  • 日本シリコンウェハー企業の競合力の考察
    芳賀 知
    p. 100-103
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    半導体関連の産業について、日本企業の競争力は川上(半導体材料)の産業ほど高く、川下(半導体デバイス、セット機器)になるほど、競争力が低い傾向にある。ところが、川上側の産業は、市場規模が小さいことから余り注目されていなかった。本研究では、川上側のシリコンウェハーメーカーに焦点を当て、川下側の日本企業が行った技術・経営の戦略と対比させ、川上側の日本企業が競争力を確立した要因を考察した。この結果、早期からのグローバル市場対応、長期レンジの経営計画、巨額な投資の断行という川下側企業とほぼ正反対の戦略によることがわかった。
  • 後藤 時政, 井上 博進, 樋口 武尚
    p. 104-107
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    一般的に中小企業の特許マインドは低いとされている。そのため,多くの中小企業が特許を取得した後,権利範囲の狭い,価値の無い特許に高額な維持費を支払っているのが現状である。本研究では,知財戦略が重要になりつつある中,中小企業が良質な特許を得る際に目安となるような,標準的な特許出願書類をその頁数から算定する。この試みは,前回報告した研究の内容と同様であるが,今回の報告ではその解析範囲を産業(技術)分野別にまで広げた。さらに2004 年から2008 年までのトレンドについても分析を行った。
  • 石塚 隆男
    p. 108-111
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    近年、イノベーションの重要性とともに価値の創造が盛んに喧伝されている。ひとつの業界でブレークスルーやイノベーションがそうそう興らないことも事実であり、ホームラン狙いだけでは企業はやっていけない。また、多くの文献に登場する"価値の創造"は漠然とした抽象的な概念であり、個別の事例はいくつか存在するが、普遍的な方法論にはなっていない。製品やサービスの価値にはいくつかの概念があるが、最近、意味的価値の重要性が指摘されている。そこで、本研究では成熟し、コモディティ化の進んだ市場において、企業が意味的価値を持続的に生み出す(=プロデュース)ための要因について検討し、経営診断に資することを目的とする。製品レビューサイトにおけるクチコミデータから意味的価値を抽出する方法を提案するとともに、イノベーションに関する多くの主要な文献をもとに、意味的価値をプロデュースする力に影響を与える諸要因のチェックリストを作成し、考察を行った。
  • サービス・ドミナント・ロジックに基づく価値共創診断
    田口 尚史
    p. 114-117
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    本論文の目的は,マーケティング診断の枠組みを開発することにある。従来型の機能別診断や4P’s に基づいたマーケティングのモデルに当てはめた診断枠組みは,貸借対照表上の資産や企業のアウトプットとしての製品に焦点を当てていた。これに代えて,本論文では,貸借対照表外の資源や製品が販売された後の顧客の使用段階も含めた価値創造プロセスにも焦点を当てる。顧客が価値を知覚するまでの価値共創プロセスを診断する枠組みを提案する。この枠組みを開発するに当たっては,サービス・ドミナント・ロジックを基盤とする。価値共創プロセスを,設計,価値共創,フィードバックといった3つのフェーズに分け,各段階の診断焦点が議論される。
  • 庄司 真人
    p. 118-121
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    近年、企業と消費者の役割の捉え方を見直す必要性が提示されてきている。価値共創もしくはサービスドミナントロジックでは、消費者もしくは顧客を価値の創造者として拡張することによって、価値の新しい視点を提示しているものである。本稿では、経営診断というコンテクストの中で、消費者の価値創造の役割について概念的に捉えるものである。生み出される価値の問題、価値への関わりが価値創造の中で中心となることが提示される。
  • 消費者推論に関する研究枠組みの特徴と課題
    福田 康典
    p. 122-125
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    本研究では、多くの消費者推論研究が依拠している主要な研究枠組みの特徴を整理し、そこから見えてくる課題とそれに対する将来の研究方向を検討した。この枠組みには、考察対象となる属性の次元が制限されているといった特徴や、2 つの主要な情報処理プロセス(推論対象の選択プロセスと属性間関係図式の形成プロセス)が所与の条件とみなされているといった特徴があり、そのため、これまでの消費者推論は過度に統制された推論として研究されてきた。消費者推論が本来持つクリエイティブな側面を考察するためには、概念や研究領域の拡張とともに、定性的な分析手法も含めた方法論上の拡張も必要であると考えられる。
  • 田村 隆善, 小島 貢利
    p. 127-130
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    生産管理システムが旨く機能していないと感じている製造企業が多い。生産管理は、効率的製造の実現だけでなく、販売と設計と調達と製造といった各部門の利害を調整し、会社全体の利益を確保・向上させる活動であり、そのためのシステムが生産管理システムと考えることができる。本研究では、各部門の利害の調整と調整のためのツール、生産管理に強く関連した各部門の活動ルールづくり、生産計画立案の手順、納期や負荷の見える化とそれによる納期遵守の活動の仕組みづくり等、生産管理システムの改善方法について考察する。生産管理システムの診断は古くからのテーマであろうが、改善のために必要な活動の一部として再考する。
  • 村橋 剛史
    p. 131-134
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    中小企業の再生における経営診断の進め方は、一般の経営診断と基本的には同じである。しかし、窮境にある中小企業は、事業を継続しないという選択肢があり、資金的な制約がある中、関係者の協力を得ながら、抜本的な対応策が必要である。そのため、経営診断においても、(1)徹底的な現状分析を行い、(2)集中と選択による縮小均衡型の計画による、(3)抜本的な経営再建策と具体的な経営改善策を策定し、(4)関係者の納得や協力を得て、(5)資金不足が生じないようスピーディーな対応が必要である、という特色がある。
  • 田中 史人
    p. 135-138
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    企業家活動と地域社会の特性(=地域性)には、強い関連性があると言われている。本報告では、企業家活動に関連の強い地域の特性を導き出すことで、地域において事業活動を営む企業の今後の戦略展開などに資する成果を検討する。特に、北海道の成長企業に注目し、地域社会の特質と成長企業の成功要因を主に企業家活動の観点から考察する。
  • 小売業のマーケティング・マネジメントの体系化を中心として
    前田 進
    p. 140-144
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    本稿は,初期のマーケティング研究の先駆的な研究者,そして小売業経営の嚆矢とされるP・H・ナイストロムの代表的な著作に焦点を当て,考察し,そこから小売業の独自のマーケティング・マネジメントの体系化と小売業診断のフレームワークの構築を試みる。はじめに,小売業のマーケティングに関する現状を確認し,次にナイストロムの代表的な4 つの著作を取りあげ,研究内容とその評価をレビューする。そしてナイストロムが示唆する小売業経営への考え方,あり方,進め方を考察する。最後に,その中から現代小売業独自のマーケティング・マネジメントの体系化,および小売経営診断のためのフレームワーク構築へのアプローチを試みる。
  • 鈴木 英之, 関本 義秀
    p. 145-148
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    本研究は,小地域における滞留人口と商業性との関係について基礎的な諸事実を明らかにし,商圏分析モデルを検討する際の礎となることを意図するものである。分析に使用するデータは,パーソントリップ調査から推計された滞留人口である。まず分析の枠組みとして駅周辺環境類型と商圏機能類型の二つを用意した。次に,全滞留者の中から買物者と徒歩移動者とを抽出し,これら相互の関係について,商圏類型別に検討した。また午前と夕方のそれぞれの買物者と小売販売額との関係について,地理的加重回帰モデルを用いて検討した。
  • 小島 貢利, 田村 隆善
    p. 149-152
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    近年の温暖化,都市化の影響により,ヒートアイランド現象は,都市生活者にとってより過酷なものとなっている。特に,都市中心部においては,自動車の大量流入とそれに伴う渋滞が,排気ガス放出やエアコン稼働による温度上昇などを招き,街を歩く人々にとって,極めて不快な環境を作り出している。本研究では,バスに代表される交通機関に,微粒子のミストの散布機能を備えさせ,歩行者の多い,市内中心部や市内の大通りを中心に,選択集中的に散霧を行い,快適な都市生活環境を提供することを提案する。このシステムを導入することにより,比較的容易な方法で都市中心部の温度上昇を軽減することが期待される。
  • 白 珍尚
    p. 154-157
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、『「経済人」の終わり』から『イノベーションと企業家精神』に至るまでPeter F.Drucker が展開してきた、保守主義が根源となっているイノベーションについての考察を行う。
  • 長江 庸泰
    p. 158-161
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    本論は、スマートグリッド分析から「再生可能エネルギー大量導入型」に類型化される我が国のグリーン・イノベーションの展開を「省エネ・リサイクル」と「再生可能エネルギー」を両輪とする「エコ・エネルギー産業におけるオープンイノベーション」と捉え、その戦略的展開を①世界の環境ビジネス市場とその37%を占める米国環境ビジネス市場へのオープンイノベーションの現状分析、②我が国の「省エネ・リサイクル」と「再生可能エネルギー」を両輪とするエコ・エネルギー産業における次世代要素技術分析、③スマートグリッド戦略と次世代要素技術のロードマップの提示と検証の3 点から論究する。
  • 株式会社サプリコの事例を中心にして
    菊池 一夫
    p. 162-165
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    本報告は中小卸売業の組織化について,株式会社サプリコの事例研究を通じて検討を行っていく。そして同社を構成する、複数の卸売業者の連携による戦略的な行動について,ネットワーク研究の知見を用いて,中小卸売業者の組織化に接近する有用性を主張する。
  • 日本・中国・ベトナム3 国の大学生の意識に違いはあるのか
    加藤 里美
    p. 167-170
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    本稿の目的は,日本,中国,ベトナムにおける大学生の企業の社会的責任(CSR)の意識を明らかにすることにある。具体的には,中国,ベトナムの大学生への質問紙調査をもとに,加藤(2008)が行った日本の大学生との比較を行うことで,大学生の企業選択の意思決定やCSR への重要度について,3 国の大学生の意識に違いがあるかどうかをみていく。中国とベトナムへは多くの日系企業が進出しており,将来日系企業のコア人材になると考えられる大学生の意識の違いや企業選択への影響を示しておくことは,日系企業の今後のCSR への取り組みや,従業員教育をはじめとした企業活動に様々な示唆を与えることができる。本大会論集では,日本とベトナムの結果を示した。全国大会のときには中国を含めた3 国の結果を示す予定である。
  • 富田 茂, 後藤 時政, 近藤 高司, 鈴木 達夫
    p. 171-174
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    企業が持続可能な発展をするためには,自社の内部統制や顧客との良い関係の構築,取引先との生産活動の連携,企業活動が及ぼす環境への配慮,株主や社会への情報公開など配慮し続けなければならない活動が多くある。21 世紀になり企業のCSR 活動が盛んに提唱され,株式公開企業においては企業活動の一環として重視されることが定着してきた。一方で企業に入社する最近の学生の知識低下が問題となってきている。これはゆとりのある教育という政策(2002 年頃)の悪い結果と考えられる。2010 年になり文部科学省は教科書の大幅改訂を行い,義務教育で数千頁も教育課程を増やすことになった。そこで本研究では,企業が継続的に成長してゆくために,入社してくる若者の学力向上が必須と考え,企業内教育の在り方,学校との教育における産学連携に焦点を当てた。入社してくる若者の学力に準じた企業内教育制度を準備確立しなければ,技術技能の伝承に手間取り,熟練技術者の生産活動に支障が出るからである。発表者は自社で行った入社時学力テストの結果を総括し,乾電池の電圧も知らない若者の現状と対策について報告する。また,前年愛知工業大学の協力で行った企業に就職した新卒への学力低下に関する意識調査の結果について報告をする。企業が行うCSR 活動は自社だけで完結するものではない。CSR 活動は,お得意先や,仕入取引先と連携して行わなければ効果を十分に発揮できない。関連法規や国際的な慣習,環境への配慮理解など自社を取り巻く経営環境情報を十分に分析し問題が起こる前に対応を検討しておかなければならない。本報告では社会的な悪い現象である教育レベルの低下が企業へ悪影響を起こしうるであろうと仮定し,特に教育社会と連携したCSR 活動の推進を提唱するものである。
大学院生報告
  • 山本 聡
    p. 177-181
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    鋳造、金型など国内基盤技術産業は特定受注先に売上を強く依存しているとされている。一方、幾つかの企業は積極的に新規受注を獲得し、特定受注先に依存する取引関係を変化させている。なぜ、当該企業は新規受注を獲得できるのだろうか。本研究では「各企業がどのように営業人材を育成・活用しているのか」といった視点からこの問いに回答する。既存研究を踏まえた事例分析から、新規受注獲得のプロセスの変化を背景として、基盤技術企業でも営業人材が育成・活用され、提案営業を目的とした営業機能が構築されていることがわかった。また、そうした人材の育成を媒介にして、当該企業における営業部門の地位も変化していることがわかった。
  • 親族内承継の中小企業におけるケーススタディ
    久保田 典男
    p. 182-185
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    本稿は、業歴の長い親族内承継の中小企業10 社の企業事例を考察したものである。本稿の意義は、第一に、承継者が事業承継を契機に経営革新を成し遂げる過程で、ビジョンの明確化や指揮命令系統の見直し等といった組織面の改革を行っていることを具体的に示した点である。第二に、親族内承継では経営者の交代が内外の関係者から受け入れられやすいにもかかわらず、承継者が組織面の改革を行う理由として、トップダウン型のワンマンなリーダーシップを発揮する先代経営者とは異なった承継者特有のリーダーシップを発揮している点を指摘した点である。承継者特有のリーダーシップの特徴は、①開かれた経営、②自立型社員の育成・活用に整理される。
  • CSR/社会貢献活動の2つの分析フレームワークに基づく診断
    角 和宏
    p. 186-189
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    2008 年の世界同時不況以降,企業の本業と関連が小さな地域貢献活動は存続が危ぶまれている。本論文では,先行研究に基づいて定義した2 つの分析フレームワークを用いて,地方企業の地域貢献活動の持続・成長可能性を,3 つの視点から診断した結果を論じる。パイロットスタディで分析した全国規模で活動するベンチマーク(BM)企業13 社と,新たに抽出した地方企業44 社の地域貢献活動を比較した結果,地方企業のほうが,BM 企業より,本業と関連が大きな地域貢献活動を,より積極的に行なっており,持続・成長可能性が高いことを確認できた。
  • 兵庫県北播磨釣針産地を中心として
    鴻 雅行
    p. 190-193
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    釣針生産は兵庫県北播磨地域の地場産業で,国内釣針メーカーの殆ど(約100社)がこの地域に集中している。この北播磨地域で生産される釣針(ブランド名「播州針」)の全国シェアは約9割を占め,またJAPANブランドとして世界の約100カ国に輸出をしている。こうした釣針に特化した産地は世界的にも類例がなく希有なものである。それでは,何故このような特異な集積地が形成されたのだろうか。本稿はこの北播磨釣針産地のブランド形成を明らかにする共に,当産地の競争優位を探る。
  • 栢木 健一, 横山 淳一, 山本 勝
    p. 194-197
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    2005 年6 月に介護保険制度の見直しが図られ,介護保険制度は「介護予防重視型システム」へと転換された。そして,その担い手として「地域包括支援センター」が創設された。地域包括支援センターは地域住民の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを期待され,地域における包括的・継続的なケア体制の構築を求められている。しかし,その取り組みに差があると指摘されている。本研究では,その要因がケアマネジメント業務が圧迫しているとの仮説から,ケアマネジメント業務の実施体制に着目し,ケアマネジメント業務の5 つの業務の業務時間・業務件数について分析・考察を行う。さらに,今後のケアマネジメント業務実施体制について提言する。
  • トルヒナ ヴェラ
    p. 199-202
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
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    グローバル化経済では、企業の間で、厳しい競争がある。この状況で、原価の削減対策を取る必要性が発生する。伝統的な原価計算では、間接費の配賦の問題がある。企業は、遂行されている活動を通して、目的を達成する。活動基準原価計算は、活動を通して、原価が生じている過程を明らかにする。これは、ターニー(P.B.B.Turney)のモデルでは明示されている。活動評価のため、コストドライバー・レートが用いられる。コスト・ドライバーとコストドライバー・レートは、将来の原価対象に対して意思決定を取るのに、大きい役割を果たす。活動基準原価計算は、正しい活動評価を可能にする。それは、相応し情報を提供して、正しい意思決定に役立つ。
  • 加納 寛之
    p. 203-206
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    環境負荷の削減、特に二酸化炭素の排出抑制が企業に強く求められているが、企業の取り組みの程度には大きな差ある。このような状況から脱し、多くの企業が効果的な環境対策を進めていくためには、取り組みの状況とその効果を把握し、計画的に取り組みを進めていく必要がある。そこで本研究では、取り組み状況や効果を把握するための情報源として環境報告書に着目し、環境報告書からグリーンロジスティクスに関係する情報の抽出と分析や、グリーンロジスティクスの取り組みを評価する手法について検討を行った。
  • 「再意味化」を鍵として
    小森谷 浩志
    p. 207-210
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    質の異なる変化が加速化、ますます社会・経済的状況の不確実性が増加している現在、企業にとっての拠りどころとしての経営理念の重要性が、一層増しているように見受けられる。筆者は2005 年から2009 年にかけ、4 社の経営理念に関する助言業務を行った。その中で特に主題となったのが、浸透に関することである。本稿では、経営理念の策定から浸透の取り組みにおいて何が要点になるのか検討した。結果、策定・現場での実践・節目における、各々3段階での問い掛けと振り返りによる、“再意味化”を組み込むことの重要性が確認できた。“再意味化”は問い掛けと振り返りにより促進され、“再意味化”することで、経営理念が磨かれ、エネルギーが吹き込まれた。経営理念自体が目的であるとともに、経営をより良くしていく有効な手段として生かされている状態になった。共有化に進み結果として浸透の道筋が見えた。
  • 日本自動車メーカの事例を中心として
    梶山 浩
    p. 211-214
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    自動車業界は,日本の高度経済成長を支え,経済の発展に大きく関わり,現在も基幹産業として日本経済を支えている。そして,日本自動車メーカは,高品質と低燃費を低コストで実現する強みを発揮し,世界的に優位な地位を築いてきた。しかし,近年においては欧米韓の自動車メーカが,品質・燃費・コスト面で著しい改善を行い,優位性は失われつつある。そのような状況下,日本自動車メーカは持続的競争優位の再構築が不可欠と考える。本報告では,価値創造と知識創造に対する先行研究と先行事例のレビュー結果,それぞれに対する限界を明らかにし,それを踏まえた「製品企画・開発における価値創造と知識創造の連環」フレームワークにより,事例研究を行い,得られた発見事実をもとに,製品企画・開発レベルの持続的競争優位診断の基準を提示することにしている。
  • 外部環境との連携
    川崎 綾子
    p. 215-218
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/11
    会議録・要旨集 フリー
    既存の競争戦略論では,自社や業界が重視され消費者は軽視される傾向にある。この理由は,消費者が製品から得る満足量が,消費者の嗜好とかかわる問題とみなされてきたことにある。従来の理論では嗜好は一定とされ,企業が増やせる消費者の満足もある一定量までとされてきた。本稿では,自社が競合他社といった外部環境の企業と協力し,消費者に豊富な製品経験や知識を与えれば,消費者が製品満足を得る過程を促進することができ,一定量以上の満足を創造できると考える。知識や経験が多い消費者ほど高い満足を認め,高い額を支払うためである。この満足を「価値」と呼び,価値創造が業界全体の売上増加や各企業の利益の増加をもたらすと考える。
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