内観研究
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最新号
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巻頭言
大会長講演
  • 河合 啓介
    2025 年31 巻1 号 p. 3-10
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2026/07/16
    ジャーナル フリー

     トラウマ体験を持つ内観者は少なくない。フラッシュバック、回避、否定的な自己像などの症状を抱える場合、集中内観の実施には特別な配慮が必要である。内観が創始された1940年代には、Post-Traumatic Stress Disorder(PTSD)の概念は日本ではまだ明確ではなかった。しかし、終戦直後の刑務所や少年院には、貧困、家族との離別、虐待など、さまざまなトラウマを経験した人々が多く収容されていたと推察される。そのような過去の状況下でも、受け入れられた内観は、現在社会でPTSDに苦しむ人々にとっても有効であろう。内観による、自分が大切にされていた感覚や他者を信じる力の回復は、傷ついた心の癒しにつながり、他者視点の導入は、トラウマ体験によって閉ざされた心に、人生の新たな喜びへの気づきを促す。演者はトラウマ治療の専門家ではないが、Trauma-informed Care(TIC)などのPTSDへの基本的な対応を理解することで、PTSD患者への内観療法への導入が可能になり易いと考える。本稿では、PTSDを抱えた内観者への内観療法について、TICの概念との親和性、導入時の注意点、回復過程、およびそのメカニズムを中心に紹介する。

特集1「内観とトラウマ」
特集2 内観研修所を支えるもの
論点
  • 毛 富強, 王 書哲, 江 珊, 王 宇暄, 李 静, 姜 孜依
    2025 年31 巻1 号 p. 39-50
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2026/07/16
    ジャーナル フリー

     目的:医療従事者の抑うつ症状及び血清IL-6とIL-1βに対する内観認知療法(NCT)の介入効果を検討する。方法:ランダム対照研究を用いて、対象基準と除外基準を満たす亜臨床うつ病の医療従事者29名をランダムに介入群(NCT、n=15)と対照群(GST、n=14)に分け、両群の介入前後のIL-6とIL-1βレベルの変化を比較した。結果:NCT群は介入前後にIL-6とIL-1βレベルが顕著に低下し、それぞれ70.5%(z=-3.408、調整後P=0.002)と73.8%(z=3.148、p=0.002)低下した。また、GST群と比べ、NCT群のIL-6とIL-1βレベルの低下は有意差があり、それぞれ40.51%(t=-2.27、P=0.037)と62.74%(t=-2.21、p=0.037)であった。さらに、NCT群はGST群よりBDIスコアが有意に低下した(z=-2.09、p=0.037)。考察:NCTは医療従事者の抑うつ症状と血清IL-6、IL-1βレベルを顕著に低下させることを明らかにした。

原著論文
  • 土ヶ内 一貴
    2025 年31 巻1 号 p. 51-64
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2026/07/16
    ジャーナル フリー

     内観法は海外の刑務所でも矯正処遇手法として正式採用されており、ドイツ語圏と中国の行刑で実績が積み上げられている。しかし、その詳細を日本語で紹介した文献の数は極めて限定的で、内観関係者にもほとんど知られていない。本論文は内観の海外行刑利用の概要と内観法理論の理解を紹介した上で、内観法の運用課題について問題提起する。

  • ―複数の研修所における内観体験者の語りを元にした考察―
    前田 起代栄, 李 晟, 真栄城 輝明
    2025 年31 巻1 号 p. 65-76
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2026/07/16
    ジャーナル フリー

     集中内観中の食事に関する先行研究は未だに少なく、これらは同一の研修所で10名以下の研究協力者を対象に行われている。本研究では、より一般化した集中内観中の食事の意義について考察をするため、複数の研修所の協力の元、16名の集中内観経験者にインタビューを行い、KJ法を用いて分析・考察を行った。6のユニット、19のカテゴリー、78の概念が生成されている。結果として、食事の配膳から下膳に至るまでの食事の構造は被愛感を喚起しやすいものがあること、食事を介してこれまでのエピソードを想起し、そのことで食事を通して関わりのあった人々の視点で振り返るきっかけになっていることが確認された。また場や気持ちの切り替えも食事の持つより一般的な意義になり得ると考える。さらに食事を通して様々な人の支えを感じ、内観が深まると共に食事への感謝の念も深くなる可能性があり、人によっては弁当を作る人や食材の製造に携わる人の支えを感じるケースも確認されている。

  • ―集中内観前後における関連変数の変化とその予測因子に関する検討―
    鳥羽 翔太, 高橋 美保
    2025 年31 巻1 号 p. 77-88
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2026/07/16
    ジャーナル フリー

     本研究では、内観についてアタッチメントとメンタライジングの観点から効果を明らかにするために、内観者119名に質問紙調査を行い、母親および父親との関係におけるアタッチメント機能、アタッチメント・スタイル、メンタライジング能力の変化を検討した。対応のある検定の結果、内観前後でアタッチメント機能およびメンタライジング能力が向上し、アタッチメント・スタイルは安定型方向へ変化することが示された。また、内観前後でのメンタライジング能力の変化量を効果の指標として重回帰分析を行ったところ、母親・父親どちらにおいても、内観前時点でアタッチメント機能が安定しているほど効果が高いこと、母親においてのみアタッチメント・スタイルの回避傾向が高いほど効果が抑制されることが示された。以上から、内観の深まりはメンタライジングが精緻化するプロセスとしてとらえられること、内観者のアタッチメント機能やアタッチメント・スタイルに配慮した介入が有効であることが示唆された。

  • 真栄城 輝明, 鈴木 康広
    2025 年31 巻1 号 p. 89-101
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2026/07/16
    ジャーナル 認証あり

     ゲーテに「外国語を知らぬものは自国語も知らぬ」という言葉があるが、それをもじって「無意識を知らぬものは意識も知らぬ」と言ってもよいだろう。「夢は無意識を知るための王道である」というフロイトの言葉を持ち出すまでもなく、筆者は自身が受けた教育分析とこれまでの心理臨床の経験を通して「夢」を知ることは顕在意識だけでなく、潜在意識(無意識)を知るために有意義であると考える。ところが、これまでに本学会で「内観中の夢」を論じた報告は少ない。筆者は2002年以降、内観中に内観者が見た夢に耳を傾けてきた。

     そこで、そろそろ自験例を報告してもよい時期がきたと考えてまとめることにした。

短報
  • 茅野 分, 真栄城 輝明
    2025 年31 巻1 号 p. 113-118
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2026/07/16
    ジャーナル 認証あり

     「加害者臨床」における「内観療法」の「効果と限界」について論じた。故・吉本伊信は1950年代より刑務所や少年院へ赴き、「教誨師」として、「内観」により受刑者の更生を行い、顕著な効果をもたらした。受刑者は「内観三項目;お世話になったこと・して返したこと・ご迷惑をかけたこと」を振り返り、他者からの愛情を思い出し「報恩感謝」を覚える。そして、被害者はじめ迷惑をかけた人々へ懺悔の心を生じ「気づき」に至る。ただし、全ての受刑者が更生したとは考え難い。ある程度、隔離された環境において、自己を「内省」する力が必要である。「病態水準」として神経症まで。境界例・精神病者は被害念慮・妄想にとらわれる。精神疾患に罹患しているならば軽症までが限界である。とは言え、「臨床」に携わる者は、病者・弱者へ常に寄り添い、援助しようとする「心性」が不可欠である。

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