内観研究
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最新号
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巻頭言
大会長講演
奨励賞受賞論文
  • − 身体感覚と病状の改善に関する研究 −
    河合 啓介
    2023 年 29 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー

     内観は自己啓発、矯正医療での運用に始まり、その後、内観療法としてアルコール依存症、不安症、うつ状態、摂食障害などの治療に導入された。筆者は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎など心理的要因が症状に影響を与える内科疾患や肥満・糖尿病などの生活習慣病、摂食障害へ内観療法を適応してきた。内観療法により、患者は家族を含めた周囲が懸命に自分を支えていた事実に気付き、過去の自分の行動や否認・回避してきた感情に向き合う。その過程で、病気の受け入れが促進され、病気のコントロールが可能となる。その際、重要な記憶の回想時に、皮膚感覚などの身体感覚の想起を伴うと、洞察が進む事例がある。さらに、プレリミナリー研究として、愛情や信頼関係と関連しているオキシトシン濃度を集中内観時に経時的に測定し、その値の内観による重要な他者との身体感覚の上昇を確認した。オキシトシンは母子間でのスキンシップ等で分泌が刺激される。内観による身体感覚の想起と“癒し”との関連が示唆された。

日本内観学会賞
特集「IT時代の『新しい内観』を考える」
論点
  • 「治りたいのか、治りたくないのか分からない」症状が教えてくれること
    橋本 章子
    2023 年 29 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー

     神経性無食欲症など難治性の難しい症状を抱えて「食べたいのか食べたくないのか分からない」「出かけたいのか出かけたくないのか分からない」と訴え、身動きできない苦痛に縛られる状況がある。日々のことや人生を話題にすると「子ども時代に父の強い言葉で母が泣くのを見るのが辛かった」「母には離婚を勧めたが聴いてはもらえなかった」など、継続的に目にした幼い日の母の姿が鮮明に脳裏に刻まれ、拭い去ることを困難にしていた。母を泣かした父への不満や、父に言われ放題で受け入れている母に対する無力感が、幼い日の残像のように重いしこりとなっていた。日々のこと、心の痛みなどを一つずつ吐き出す作業が続いた。一進一退する症状に安定した改善が訪れたのは、配偶者の転勤でクリニック受診が困難になった時や、体調不良が悪化して入院治療を勧められた時だった。内観という精神療法を自分で受けると決断できた感動や、自分の代わりに親が内観に行ってくれた喜びが、囚われていた苦しさの解消と、自由な意志で行動できる力を回復させた。主体的に内観に臨むことや、愛着にまつわる情動体験の修正が身動き不能状態からの脱却と、症状改善を後押しする力となっていた。症状の改善に向き合うことは、家族関係の新たな一歩を踏み出す好機になったとも考えられた。

短報
  • 石合 洋子
    2023 年 29 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー

     思春期・青年期は強い風が吹き荒れ、大波がうねり逆巻く時代と言われ、激しい心の揺れと情熱を意味すると同時に、「疾風怒濤」の時代だと言われる。(大山康宏 2019)ものの考え方や価値観、そして社会そのものが大きく変化していくことも含んでいる。自立・自律といったテーマを抱えた少年にとっては、まさに疾風怒濤のなかで過ごしており、そんななか音楽は彼らの内面を表現させる優れたツールだと考え、思春期・青年期の時期に、内観音楽療法の定期的な実施をすることは自立・自律へ向けて有効であると考える。

事例研究
  • - 一事例を通しての検討 -
    原口 芳博, 塚﨑 稔, 谷口 大輔
    2023 年 29 巻 1 号 p. 63-79
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル 認証あり

     ギャンブル障害に対する内観療法の有効性の検討を目的として、断ギャンブルが継続している70代後半の男性の事例の治療経過を報告した。方法としては半構造化面接と心理検査(YG性格検査とTEG Ⅱ)を実施した。その結果は「内観療法の肯定的認知」(2019)と「日常内観の継続」(2019)という、我々が以前報告した知見と一致するものであった。かつ本事例においては「隔離された環境」と「迷惑をかけたことの項目」も有効性として抽出された。心理検査の結果から「自分勝手気ままな面があるものの、活動性が低く穏やかで大人しい」という性格特性が示唆され、この性格特性が断ギャンブルを支持する要因となっていることが考えられた。また本事例の主治医やスタッフ、仲間との肯定的な人間関係などの諸要因も断ギャンブル継続を支持する要因として寄与していることについても言及した。

研究助成金報告を兼ねた活動報告
各地だより
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